小5国語「やなせたかし—アンパンマンの勇気」京女式板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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今回の教材は「やなせたかし—アンパンマンの勇気」です。この単元では、「伝記を読む力を育て、これからの自分の生き方について考える」ことが目標です。本時では、「やなせたかし」の人物像を一人一人が考えることをめざします。そのため、「たかし」の生きた時代を大きく4つに分けて、たかしの言動などから人物像を考えるための手がかりになる板書の工夫を紹介します。

監修/元京都女子大学教授
 同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教頭・砂崎美由紀

 

教材名 「やなせたかし—アンパンマンの勇気」(光村図書出版)

単元の計画(全5時間)

  1. 「やなせたかし—アンパンマンの勇気」の全文を読み、「たかし」がしたことや考えたことを確かめる。
  2. 「たかし」の言動から、どのような人物かを考える。
  3. 「たかし」の行動や考え方で、共感したり、あこがれたりすることを見付ける。
  4. 自分で選んだ伝記を読み、心に響く言葉や出来事を見付け、自分と関わらせて文章に書く。
  5. 書いた文章を友達と交流し、どのような点に着目しているのかを話し合う。

板書の基本

〇本時では、全文を読み、「やなせたかし」の人物像を一人一人が考えることをめざします。その 手がかりにするのは、文章中の「たかしの言動」です。

〇「たかし」の生きた時代を大きく4つに分けて、それぞれがどんな時代、またはどんな背景かを考えます。ここでは、子供たちの前時に読んだ経験から、「少年時代」「戦争中」「戦後」「まんが家として」の4つに分けました。

板書のコツ(2/5時間目前半)

小5国語「やなせたかし—アンパンマンの勇気」京女式板書の技術 2/5時間目前半の板書
2/5時間目前半の板書

板書のコツ

〇「たかし」の時代を4つに分けたことが分かるように、板書では黒板に縦横の線を書き、4つに分けます。縦横の線が交わるところ(黒板の中心あたり)に、大きく円を書きます。

〇子供たちに、ノートに直線を引くときには定規を使うように指示します。教師も同様に板書で直線を引くときには定規を使います。マス目のノートでは何マス目に線を引くか、けい線のノートでは上から何㎝に横線を引くかなど、具体的に示します。

〇4つの時代に見付けた「たかしの言動」から考える「私が考えるたかしの人物像」を、その円の中に書くことを子供たちに伝えます。これからの学習活動の見通しをもたせます。

板書のコツ(2/5時間目中盤)

小5国語「やなせたかし—アンパンマンの勇気」京女式板書の技術 2/5時間目中盤の板書
2/5時間目中盤の板書

板書のコツ①

〇「少年時代」が書かれた部分を、たかしの言動や様子が分かる言葉に線を引きながら全員で音読します。

〇見付けた言葉を、隣同士(ペア)で話し合います。

〇見付けた言葉を、全体の場で発表します。

〇「たかしの言葉」として表しているものは、黄色のチョークで板書し、その他の言葉と区別します。色分けすることで、学習後半に板書全体を振り返るときに分かりやすくなります。

〇教師は、板書計画(教材研究)において、子供たちが見付ける言葉をいくつか選んでおきます。子供たちが発表した全てを板書に書くのではなく、いくつかの意見を発表させたのち、これは大切だと子供たちと再考した言葉を板書します。

板書のコツ②

〇「1人学習で言葉を見付ける」「ペアで確認する」「ノートに書く」という学習の手順を、「少年時代」を全員で学習しながら理解させます。

〇「戦争中」「戦後」「まんが家として」の時代を、一人一人が読み進め、ノートに書きます。

板書のコツ(2/5時間目後半)

小5国語「やなせたかし—アンパンマンの勇気」京女式板書の技術 2/5時間目後半の板書
2/5時間目後半の板書

板書のコツ①

〇授業の後半では、子供一人一人が「たかしの言動や様子が分かる言葉」を見付け、ノートに書いた言葉を発表します。

〇グループで発表、または一斉学習で発表など、いろいろな学習形態をとることができます。

〇グループの場合は、各グループを教師が机間指導し、グループで選んだ言葉を取り上げて板書します。その言葉について、一斉学習で考えを話し合ったり確かめたりします。

〇一斉学習の場合は、「少年時代」のように子供たちと一緒に板書する言葉を話し合って、黒板に書きます。

板書のコツ②

〇みんなの意見を黒板1枚にまとめることで、「たかし」がどの時代にも共通して考えていることに気付く子供が出てきます。例えば、どの時代にも「たかし」は「なぜだろう」と悩んでいることがうかがえます。板書の「なぜ」と書いたところに赤いチョークで線を引き強調します。また、父の死、弟の死を経験していることに気付きます。板書の命に関することには青いチョークで線を引き強調します。それらの意見を全体に広め、ほかにも気付くことがないかを考えさせます。このように、見付けた言葉から気付いたことをつなぐことにより、人物像を考える手がかりとします。

〇本時のめあては「たかしの言動から人物像を考える。」です。板書には、人物像を考えるために手がかりとなる内容と言動を書きます。子供たちにはそれを見ながら話し合うことで、自分の思う人物像を考えさせます。黒板中央の〇のなかには、考えた人物像を書くことを伝え、一人一人のノートにも、中央の〇に書き込ませます。ノートや黒板をよりどころに、どんな人物像を考えたかについて、ペアで話し合います。

〇この時間には、一人一人の読みを大切にして人物像を描くことをねらいとし、板書には人物像を表す言葉を書きませんでした。ペアと交流の中で、自分の考えが広がったときには、ノートに書き足すように指示しました。

〇人物像を考えると、「たかしの理想とする姿」が出てきました。それが「アンパンマン」だという意見が出ました。黒板の真ん中(たかしの人物像を書いたところ)に、「アンパンマンの絵(別の時間に使ったもの)を貼ってほしい」と子供たちからリクエストがありました。

板書のコツ③

〇学習の最後には、一人一人が「学習の振り返り」をノートに書く指導をします。本時では、見付けた言葉をよりどころに、「たかしの人物像」を考える学習をしましたから、振り返りを書くときに使うキーワードは「人物像、言動」としました。これらの言葉を入れて、自分の考える人物像を文で書くよう指示します。

〇次の時間には、 「たかしの行動や考え方で、共感したり、あこがれたりすることを見付ける」を学ぶことを予告し、本時の学びを生かして次時の学びへとつなぎます。

〇人物像を考えるために筆者が選んだ「たかしの言動」は、筆者の「たかし」への思いを感じることができます。筆者は「たかし」のどんなところに魅力を感じたのかが伝わってくるからです。高学年では、文章を俯瞰(ふかん)的に見ることにより筆者の思いに迫ることができるようになります。本文を読む視点を与えることで、子供は高学年らしい読みの力が付いたと考えています。

 

構成/浅原孝子

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