子供たちといっしょに読みたい 今月の本#6 スポーツを楽しむ本
連載6回目のテーマは、「スポーツを楽しむ本」です。秋は運動会の季節。スポーツに関する様々なことを知って、運動が得意な子も苦手な子も楽しめるような本を紹介します。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
読み物
運動やスポーツの楽しさに触れて、前向きな気持ちになれるでしょう。
『こころの輪 パラリンピック編 パラアスリートが教える壁を乗りこえるための24のヒント』
著/池 透暢 道下美里 山本 篤
小学館刊
「一生役立つこどもメンタル本」シリーズ、第3弾2冊のうちの1冊。パラリンピックで活躍するトップアスリートたちの3人が、それぞれの方法で自身の障がいと向き合い、ときに苦しみながらも前向きなメンタルや姿勢をもってチャレンジしてきました。障がいの有無にかかわらず、悩みや葛藤をもちながら過ごす子供たちが一歩を踏み出すためのヒントが詰まっています。
『こころの輪 オリンピック編 世界で戦うアスリートのくじけないメンタルをつくる24のヒント』
著/阿部 詩 阿部一二三 池江璃花子 山縣亮太
小学館刊
「一生役立つこどもメンタル本」シリーズ、第3弾2冊のうちの1冊。オリンピックで活躍するトップアスリートの4人からスポーツ少年少女へのメッセージ。得意な競技も、育ってきた環境も、性格も異なる4人がそれぞれに語るエピソードには、夢をかなえるための考えかたや努力を続けるコツ、苦難や壁を乗り越えてくじけない心を育むためのヒントが満載です。
松岡司書のおすすめポイント
世界で活躍するトップアスリートの人は特別で、一般の私たちとは別世界だと考えがちですが、アスリートたちの子供時代や練習方法、気持ちの奮い立たせ方など、子供たちに寄り添ったヒントが山盛りです。日々のメンタルケアややる気の出し方など、子供たちが自分に寄せて読めるのではないかと思います。普段の勉強にも置き換えて考えることができそうです。
『空に向かって走れ!』
作/小手鞠るい 絵/大庭賢哉
講談社刊
運動会400Mリレーの予備選チームが決まりました! 俊足のみなみ、本の虫雄大、ピアノ少女愛理に、走るのが怖い晴樹の4人です。リレーはバトンパスが大事だと、4人でバトンパスの練習をします。さあ、この4人の運命は……。
松岡司書のおすすめポイント
登場人物は、走るのが得意な子だけではなく、不得意な子もいます。走るのが好きな子だけでなく、ちょっと苦手な子にも共感できるのではないかと思います。ストーリーを楽しみながら、リレーの知識も学べ、運動の面白さを教えてくれる内容です。
『みんなで楽しもう! UDスポーツ1』
監修/大熊廣明
文研出版刊
3巻セットシリーズの1冊。1の「障がい者スポーツ・バリアフリースポーツ・UDスポーツ」には、UD(ユニバーサルデザイン)スポーツに至るまでの障がい者スポーツの歴史とパラリンピックにおける取組について紹介されています。またUDスポーツの考え方の根底である、UDやバリアフリーの考え方についても分かりやすく解説されています。2は「UDスポーツの施設と用具」、3は「UDスポーツにチャレンジ!」です。
松岡司書のおすすめポイント
UDスポーツは、障がいがあるなしだけでなく、得意不得意、老若男女関係なくみんなが取り組めることを目指すスポーツです。すべての人が暮らしよくというスポーツの新しい視点なので、知識として学ぶのもよいし、クラスで試してみるのもよいと思います。UDスポーツ化するとどうなるかというヒントにもなり、クラス全体の雰囲気がやさしくなるのではないでしょうか。
『すごいグラウンドの育て方 阪神甲子園球場のひみつ』
著/金沢健児
Gakken刊
小学生が楽しく読めるノンフィクション。阪神甲子園球場の内野、外野の構造や、1年間の土と芝の整備が分かります。グラウンドの表情が毎日異なる阪神甲子園球場を最高の状態で保つ阪神園芸グラウンドキーパー・金沢健児が語る、甲子園球場の芝と土と雨のすごい話。
松岡司書のおすすめポイント
阪神甲子園球場のグラウンドキーパーという仕事にスポットを当てた内容で、スポーツの縁の下の力持ち的な役割が見られるところが面白いと思います。季節によって芝の種類が違ったり、土の盛り方に角度があったりなど、グラウンドの整備は様々な計算をされていることがよく分かります。子供たちの身近なグラウンドの整備のコツなども学べます。
絵本
スポーツや運動をテーマにした、読み聞かせにもおすすめの絵本です。低学年の子供たちにも親しみやすいでしょう。
『マラソンじいさん』
作/西本鶏介 絵/福田岩緒
鈴木出版刊
マラソン選手を夢見て公園でかけっこの練習をするこういちくん。そこへ乱暴な若者がバイクで乗り込んできました。バイクをとめて叱りつけたおじいさんに若者がなぐりかかろうとすると、おじいさんはマラソン勝負をもちかけます。
松岡司書のおすすめポイント
走ることをテーマにした絵本で、走る楽しさが分かります。本物の力をもつおじいさんに対するこういちくんの憧れが伝わってきます。読み聞かせにもおすすめです。
『そもそもオリンピック』
作/アーサー・ビナード 画/スズキ コージ
玉川大学出版部刊
広島・海田町に生まれた織田幹雄の生い立ち、陸上競技、三段跳びとの出合い、1928年のオリンピックまでの大活躍を描きます。
松岡司書のおすすめポイント
日本で初めてオリンピックで金メダルを取った人をモデルにした話です。スポーツの始まりからスタートして、詩のような文章が流れていきます。オリンピックイヤーの読み聞かせにぴったりの絵本です。
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松岡みどり司書からのメッセージ
スポーツの本というと、スポーツのやり方や練習方法などの本をイメージするかもしれませんが、今回は少し違った視点の本を紹介しました。スポーツそのものだけでなく、そのスポーツを支える仕事だったり、リレーのバトンパスを考えたりなど、スポーツ周辺の様々なことに触れると、スポーツに苦手意識がある子もスポーツに取り組むヒントになるのではないかと思います。運動会が苦手という子も運動会や運動が楽しめるようになるとよいですね。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。