1学期を振り返り、2学期・3学期の指導を考えよう【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】
1学期を振り返り、2学期・3学期の指導を考えよう
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テストやノートで子どもたちの学習状況を見取ることが多いと思いますが、その過程はどうなっていますか? 先生がたくさん支援してできたのか、それとも自分の力でできたのか。先生がたくさん支援しているにもかかわらず、「子ども自身でできた」と思っていないでしょうか。今回は、先生の支援と子どもの力についてです。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/大阪府公立小学校教諭・岩本哲也
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

1学期が終わり、様々な子どもの姿が見えてきたことと思います。指導の中でも、上手くいったこと、いかなかったことがあったことでしょう。そこで、今回は、1学期を振り返り、2学期以降の指導をどのように進めていけばよいかについて考えます。

1.はじめに

下の図は、1・2・3学期での子どもができたことの度合い、先生の支援の度合い、子どもの力を表しています。なお、各学期のグラフの高さが同じなので、左右の2人ともできたことの度合いは同じとします。
みなさんは、下の図を見て、左右の子どもの成長をどのようにとらえますか?

図表1

できたことが同じでも、右側の子どもの方が自力でできるようになった割合が多く、大きく成長したといえます。つまり、子どものノートの記述が同じでも、評価する際は、先生の支援の度合いを考慮する必要があります。
そこで、今回は、1学期の子どもの姿を基に、一人一人への支援を振り返り、2学期、3学期の支援計画を考えましょう。

2.年度末の子どもの姿を思い浮かべよう

1学期の子どもの姿(行動や記述など)を振り返り、学級の実態を考えて、年度末に「このような姿になってほしいな」と思うことを書き出してみましょう。例えば、「実験の結果を図や絵、表、言葉で分かりやすくノートに書けるようになってほしいな」「自然事象を比較して、自力で『~だろうか』という問題を書いてほしいな」「学んだことを学校以外の場所で見られる自然事象に当てはめようとしてほしいな」などが考えられます。3学期の単元で具体的に考えてみると、さらによいでしょう。

図表2

3.1学期の子どもの実態と、支援の度合いを振り返ろう

年度末に目指す子どもの姿が決まれば、その姿に関する子どもの実態と、支援の度合いを振り返りましょう。
例えば、年度末には「子どもが変える条件と変えない条件を意識して、実験計画を書けるようになること」を目標にした場合、1学期に、子どもがどのような実験計画を考えたかを振り返ります。「かなり『先生主導』で、変える条件や変えない条件を考えるように働きかけたことで、条件を意識して実験計画を書くことができた」や「あまり支援をしなかったところ、ほとんどの子どもが条件を意識して計画を書くことができなかった」など、子どもの実態や支援の度合いが見えてくると思います。

4.2学期、3学期の支援計画を考えよう

年度末に目指す子どもの姿に近づけるための2学期、3学期の支援計画を考えましょう。
例えば、1学期に、かなり『先生主導』で、変える条件や変えない条件を考えるように働きかけたことで、条件を意識して実験計画を書くことができた場合は、この図のように、2学期、3学期は、支援の度合いを下げましょう。具体的に2学期では、個人で計画を考える前に、班や学級全体で話し合う時間を設けて、その中で、変える条件や変えない条件を意識している子どもの表現を取り上げ、全体の場で称賛することに徹するとよいでしょう。そして、3学期は「個人→班→全体」の順で計画を考えてみましょう。

あるいは、1学期に、あまり支援をしなかったところ、ほとんどの子どもが条件を意識して計画を書くことができなかった場合は、この図のように、2学期は、変える条件や変えない条件を考えるように、支援の度合いを上げることが考えられます。そして、3学期は先生主導でなく、子どもの表現を価値付け、称賛することに徹するなどして、支援の度合いを下げましょう。

5.おわりに

「木を見て森を見ず」ということわざがあります。物事の細部に気を取られて全体を見失ってしまうことをいいます。そうならないように、年度末にめざす子どもの姿を決めて、継続的な指導を心がけましょう。行き当たりばったりの指導は避けましょう。
実際、支援の計画通りにならないことの方が多いと思います。諦めず、子ども一人一人の姿をよく見て、支援の度合いを上げたり下げたりする「かけ引き」を楽しもうという姿勢が大切です。先生次第で、子どもは変わります。努力した分、年度末には、子どもが大きく成長したことを実感することでしょう。

イラスト/イラストAC

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岩本哲也教諭

<執筆者プロフィール>
岩本哲也●いわもと・てつや 大阪市立味原小学校首席。大阪市小学校教育研究会理科部員。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、経験。理科を中心に日々実践研究を行う。共著に、『「深い学び」につながる授業アイデア64』(東洋館出版社)、『「問題を見いだす」理科授業 マンガでわかる導入場面』(東洋館出版社)、『TAKT授業のデザイン 批判的対話がつむぐ笑顔の教室』(福村出版)、『感じてひらく 子どもの「かがく」』(ミネルヴァ書房)等がある。


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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