「1時間で終わらせなきゃ!」と思ってしまっていませんか? ~6年「水溶液の性質とはたらき」を例に~【理科の壺】

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理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~
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國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓
【理科の壺】
「1時間で終わらせなきゃ!」と思ってしまっていませんか? ~6年「水溶液の性質とはたらき」を例に~
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授業の進度は、毎回同じではありません。子どもたちがつまずいて時間がかかることもありますし、先生が「教えたい」と思っていることについて丁寧に教えるために時間がかかる場合もあります。学習指導案等を作り、あらかじめ授業を計画したとしても、実際にその通りになるとは限りません。つまり、もっと柔軟に授業づくりや実施を考えた方がよい、ということです。今回は、どのように授業づくりをしていけばよいか、考えてみましょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/神奈川県公立小学校教諭・森雄大
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

「1時間で終わらせなきゃ!」と思ってしまっていませんか?

理科の学習には、「学習問題」「予想」「仮説」「計画」「実験・観察」「結果」「考察」「まとめ」などのさまざまなプロセスがあります。皆さんは「どの単元」において「どのプロセス」を大切にしていますか? また、学習内容をきちんと終わらせるために「ここまでは1時間で終わらせなきゃ!」と思ってしまっていませんか?
今回は、6年「水溶液の性質とそのはたらき」の単元を例に、その「プロセスの重点の置き方」と「子供たちの思考へどう寄り添うか」について、皆さんと一緒に考えていけたらと思います。

1.1時間の学習内容を分割して捉えよう!

指導書を読んでいると、たまに「え!? 1時間の配当時間でこの内容をここまで進めるの!?」と感じることは、どの教科においてもあると思います。また、子供たちの実態や、「学びの何を大切にするか」で、「ここは、じっくりやりたいな…」と思うこともあるでしょう。

え!? 1時間の配当時間でこの内容をここまで進めるの!?

ここは、じっくりやりたいな…

そのためには「1時間の学習内容を分割して捉える」ようにしましょう。右の画像は、筆者が実際に提案した校内研究指導案の本時案(単元導入部分)です。

校内研究指導案

ある指導書では、「写真を見て、水溶液の違いについて問題を見いだす」「5種類の水溶液にはどのような違いがあるか予想し、違いを調べる方法を考える」の主に2つの学習活動を1時間で行う配当時間が設定されています。それに加え、本校では「対話(言葉を紡ぐ姿)」を主軸とした研究テーマを設定しており、とても1時間では足りないと考え、1時間を2分割(前時を1/2、本時を2/2と)しました。しかし、実際には筆者の見通しが甘く、この本時案の部分だけで3時間を費やす結果となりました。

2.1時間を分割するためにも、単元を構想しよう!

しかし、全てのプロセスを分割していると、時間が足りなくなるのは明白です。
そこで、本時だけではなく、「単元全体を構想する」ようにしましょう。右の画像は、先ほどの指導案の単元構想に関する部分です。

単元構想

「目の前にいる子供たち」がどのように思考していくかを想定しながら単元を構想することで、子供たちの実態に応じた「単元内における軽重」をつけるようにします。そのためには、「この子だったらこう考えるかな?」「あの子だったら、こうつぶやくかな?」と子供たちの姿を具体的に想像するようにしましょう。
さらに、教科専科や教科担任の場合、単元内だけではなく「教科内」で軽重をつけることも可能でしょう。学級担任の場合には、「教科を横断的に捉えた軽重のつけ方」まで可能になります。

3 大切なのは、じっくり時間をかけて取り組む価値のある場面であるかどうか

最後に、 どの場面(単元やプロセス)にも時間をかける価値はあります。しかし、大切なのはそれが「学びの主体者たる子供たちの思考に寄り添ったものになっているかどうか」「教師も本気で悩むことなく、子供たちと思考することを楽しめるような内容になっているかどうか」だと思います。時にはそれが「ズレて」しまうこともあるでしょう。そのようなズレも乗り越えながら、子供たちとともに「より善い」学びを追求していきたいですね。

授業の進め方を想像する先生

イラスト/難波孝

「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。

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<執筆者プロフィール>
森雄大●もり・ゆうだい 神奈川県公立小学校教諭。神奈川CST(コアサイエンスティーチャー)。理科教育を柱とし、担任として学級経営を行う。現職中に大学院修学休業制度を活用し、早稲田大学大学院教育学研究科にて修士号(教育学)を取得。令和5年度神奈川県小・中学校教育課程研究会・県提案者。近著に、「七転八起 次世代管理職<8>」(教職研修2023年11月号・教育開発研究所)


寺本貴啓教授

<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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