小4理科「雨水の行方と地面の様子」指導アイデア
執筆/福岡県北九州市立新道寺小学校教諭・山田和樹
福岡県北九州市立池田小学校教諭・有田奈央
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県北九州市立祝町小学校校長・平川信乃
福岡県北九州市戸畑中央小学校教頭・是澤真利
目次
単元目標
水の流れ方やしみ込み方に着目して、それらと地面の傾きや土の粒の大きさとを関係付けて雨水の行方と地面の様子を調べる活動や、気温や水の行方に着目して、それらと水の状態とを関係付けて、水の様子を調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に既習の内容や生活経験を基に、根拠ある予想や仮説を発想する力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
「地球」を柱とした本単元では、主として時間的・空間的な視点で捉えることが考えられます。時間的には、雨が降った直後と翌日の地面の様子を比較するなど、時間の経過を追って変化を記録し、雨水の行方を捉えることが大切です。また、空間的には、運動場などの様子を広く観察し、水たまりや溝などの細部に加えて、土地全体の傾きや、地面を構成する粒の違い、校庭の先の水の行方(河川への流れ込みなど)に目を向けていきます。その際、定点撮影した画像やタイムラプス動画、校庭やその周辺の地図などを効果的に活用することで、子どもが時間的、空間的な視点で捉えることを助けることができます。
評価規準
知識・技能
①水は、高い場所から低い場所へと流れて集まることを理解している。
②水のしみ込み方は、土の粒の大きさによって違いがあることを理解している。
③水は、水面や地面などから蒸発し、水蒸気になって空気中に含まれていくことを理解している。
④空気中の水蒸気は、結露して再び水になって現れることがあることを理解している。
⑤雨水の行方と地面の様子、自然界の水の様子について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。
思考・判断・表現
①雨水の行方と地面の様子、自然界の水の様子について、既習の内容や生活経験を基に、根拠ある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。
②雨水の行方と地面の様子、自然界の様子について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①雨水の行方と地面の様子、自然界の水の様子についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②雨水の行方と地面の様子、自然界の水の様子について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。(安全指導)
評価計画
総時数 10時間
第1次 流れる水の行方について調べる。(授業の詳細)
1 雨水がどこへいったのか、気付いたことや疑問に思ったことをもとに、問題をつくる。
思考・判断・表現①
雨水の行方と地面の様子について、既習の内容や生活経験を基に、根拠ある予想や仮説を発想し、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
2 地面の傾きと水の流れる方向を関係付けて調べる。
主体的に学習に取り組む態度①
雨水の行方と地面の様子、自然界の水の様子についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
知識・技能①
水は、高い場所から低い場所へと流れて集まることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能⑤
雨水の行方と地面の様子について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動分析・記述分析〉
第2次 土のつぶの大きさと水のしみこみ方を調べる。
3~4 土の粒の大きさとしみ込み方を関係づけて調べる。
知識・技能②
水のしみ込み方は、土の粒の大きさによって違いがあることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能⑤
雨水の行方と地面の様子について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動分析・記述分析〉
第3次 空気中に出ていく水について調べる。
5~6 水が空気中に出ていくか、水を入れた入れ物を使って比べながら調べる。
知識・技能③
水は、水面や地面などから蒸発し、水蒸気になって空気中に含まれていくことを理解している。〈発言分析・記述分析〉
知識・技能⑤
雨水の行方と地面の様子について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈行動分析・記述分析〉
思考・判断・表現②
雨水の行方と地面の様子、自然界の様子について、観察、実験などを行い, 得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈行動観察・記述分析〉
10 学んだことを振り返る。
主体的に学習に取り組む態度②
雨水の行方と地面の様子、自然界の水の様子について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細
第1次 流れる水の行方について調べる。
1 雨水がどこへいったのか、気付いたことや疑問に思ったことをもとに、問題を見いだす。
雨水の行方と地面の様子について、既習の内容や生活経験を基に、根拠ある予想や仮説を発想し、表現できる。
本単元では雨水の行方について、①流れる水のゆくえ ②土のつぶの大きさと水のしみこみ方 ③空気中に出ていく水について学習します。単元の導入ではこの3点について学習問題をつくるにはどこを見せればよいか、校内で事前に探しておきましょう。その際安全面に問題がないかも確認しておきましょう。また、天候によって観察、実験が左右されやすい学習です。地域の天気に関する情報を集め、観察する日を決めておきましょう。単元導入の日と天候が合わない場合を考え、事前に雨の日の様子をビデオ撮影し、それを見ながら問題づくりをすることも考えられます。予想が難しい子どもには、予想を発想できている子どもの根拠を共有することが大切です。
①問題を見いだす
運動場の水が、川みたいになって、溝の方に流れていたね。水が流れる方向には、決まりがあるのかな。
砂場には水たまりがなかったよ。運動場の土と水のしみこみ方がちがうのかな。
水がしみこまないところにも、ずっと水がたまっているわけではないよね。水はどこに行くのかな。
たくさんの気付きがありましたね。順番に調べていきましょう。
前の時間、運動場を見て雨水は川のようになっていることに気付きましたね。
どんなところが川のようになって、どこに流れていくのかな。
水はどのような場所に流れていくのだろう。
②予想する
雨水は、高いところから低いところに流れていってたまるんじゃないかな。水たまりができていたよ。
ビー玉は高いところから低いところに転がるから、水も低いところに流れるのではないかな。
「どのような場所」を予想する際に、高低や傾きといったワードで整理し、これまでの生活経験と流れる水の行方を関係付けることができるようにします。
2 地面の傾きと水の流れる方向を関係付けて調べる。
水は高い場所から低い場所に流れて集まることを理解できることや、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録できる。また、他者と関わりながら問題解決しようとすることができる。
③解決方法を考える
地面が、どう傾いているかを調べたいけど、見ただけではわからないなあ。
傾きを調べる「水平器」というものがあります。
水平器は、しょう油を入れるボトルなどに色水を入れて作るとよいでしょう。地面は凸凹しているため、水平器は小さめの方が調べやすいです。
傾きを調べる際に、水平器の原理を理解していない子どもがいた場合には、レールにビー玉を転がすと視覚的に傾きを理解することができます。
④観察・実験をする
1 校庭の水たまりや川のようになっていた場所で、水を入れた小さな入れもの(自作の水平器)など で地面の傾きを調べる。
2 ①で調べた場所に、ラップフィルムを当てて、その上から水を流して水の流れる方向を調べる。
運動場で実験する際には、直接水を流してしまうとしみ込んでしまうため、ラップを使用するとよいでしょう。たるんだ状態で地面にあてると、水の流れが変わってくるため、端に竹ひごをつけるなどして、しっかりと伸ばした状態で当てると見やすくなります。
流す水の量が多いと流れがわかりにくいため、少しずつ流すように声掛けを行いましょう。また、アスファルトで実験を行うと、ラップを使用しなくても水が染み込みにくく、くぼみに水がたまる様子まで観察できる場合もあります。
「矢印」をラミネートしたものを2色作り、1つを地面の傾きに合わせて置き、もう1つを水が流れた方向に置きます。それをICT端末などで撮影すると、地面の高低と水が流れる方向が一致するのでわかりやすく、結果を共有しやすくなります。結果を共有する際には、動画も撮っておくと繰り返し再現しながら確認することができます。
⑤結果の処理
どちらが高く、どちらが低いか視覚的にわかるように結果の処理ができるようにします。「傾き」の赤い矢印と、「水の流れ」の青い矢印の向きを比べることによって、水が高いところから低いところへ流れるという結果を共有しやすくなります。
⑥結果をもとに考察する
傾きを調べると、低い方に向かって水が流れていって、最後はくぼみに水がたまっていたね。
平らに見える場所でも、調べると傾きがあって、低い方にゆっくり水が流れたよ。
⑥結論を出す
水は、高い場所から低い場所へと流れる。そして、最も低いくぼ地などに集まり、水がたまる。
考察やまとめの際には、運動場の中だけでなく、溝から大きな側溝、校区によっては川などへの流れを意識することで、空間的な視点をもって、水の流れを捉えることができます。また、防災学習や、5年生の「流れる水の働きと土地の変化」につながる視点を育むこともできます。運動場で水が流れてたまる様子から、川から海につながる様子と似ているといった発言を期待したいですね。
⑧振り返る
運動場で水たまりのある場所がその辺りで一番低い場所だということがわかったよ。
大きな川のようになっている先には排水溝があったよ。運動場に雨水がたまりにくくなっているんだね。
本時は、地面の傾きと関係付けて、水の流れを捉えました。次時は、水のしみこみ方と地面の様子(土の粒の大きさ)を関係付けて考えます。導入での気づきをふりかえることができるようにして、次の時間につなげましょう。粘土質の水たまりと砂場などを比較することで、地面の構成物や粒の大きさに着目しながら、水のしみこみ方を調べていきます。
鉄棒の下には水たまりができるけど、砂場には水たまりができないのはなぜだろう。
安全指導
●校庭での観察については、天気に関する情報を継続的に確認し、急な天候の変化や雷などに注意しましょう。
●側溝などに流れ込む水を観察する際は、側溝に手足や傘などを入れないように注意しましょう。
その他のポイント
雨水は、日常から子どもたちに関係する事象です。この単元では、水の流れやしみ込み方、行方について取り扱いますが、ここでの学習が治水に生かされていることなどに触れることで、自然災害との関連を図ることも考えられます。単元末にそのことに触れることで、防災の見方を日常生活に広げることができます。また、この学習が5年生「流れる水のはたらきと土地の変化」へとつながっていきます。
イラスト/難波孝