小6国語科「聞いて、考えを深めよう」板書例と全時間の指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」
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文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小6国語科「聞いて、考えを深めよう」(光村図書)の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:聞いて、考えを深めよう(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/福岡教育大学附属福岡小学校・大村拓也

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、「聞き手(インタビュアー)として聞こうとする意図」を基に、話し手(インタビューの相手)と聞き手(インタビュアーとしての自分)の考えを比較し、共通点や相違点を整理したり、共感した内容や納得した事例を取り上げて、自分の考えをまとめたりする、聞くことに関する力を育てていきます。
また、学校のよいところをまとめるという教材の特性を生かし、質問で聞き出した内容の中から、学校のよいところにつながる相手の思いや考えを図に表して整理したり、自分の考えと線でつないだりしながらまとめます。そうすることで、図などによる語句と語句との関係の表し方を理解して使うことができるようにしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、「自分の学校のよいところについて、学校に関わる大人にインタビューをし、必要な情報を集めたり、それらを発表したりする活動」を、言語活動として設定します。
学校に関わる大人にインタビューをして必要な情報を集めるためには、「学校に対する思いや考えまで詳しく聞き出す質問」や「自分も相手も気持ちよく考えを述べるための共感や相づち、アイコンタクト等」も含めた聞くことに関する資質・能力を発揮することが必要になります。

また、インタビューの活動の中で事実と思いや考えを整理しながら聞いたり、聞いたことを基に自分の考えを整理したりする際に、情報を図に表して関係付けることで、自分の考えを広げたり深めたりする必然性の高い言語活動になると考えます。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 インタビューする相手を自分で決める

主体的な学びを生み出す上で大切なのは、学ぶことに興味や関心をもって活動し、学ぶ見通しをもち粘り強く追究することです。そのために子供たちが自らインタビューの相手を決めることが大切だと考えました。
本単元では、「学校のよいところ」が話題ですので、例えば、先生(給食の先生や学校事務の先生、学校用務員の先生等)、保護者、地域の方、ゲストティーチャーの方等がインタビューの相手として想定されます。インタビューをする相手にメールをして都合を聞いたり、直接お会いする時間を設定したりというところから子供たちに任せ、教師はその支援に回ることで、一人一人の興味や関心に基づく学習を展開することができると考えます。
その際、インタビューの相手として設定する方の連絡先などについての個人情報に十分留意し、事前に教師が連絡を取り、学習の目的を伝えた上で連絡先を児童と共有することについての了解を得ておくことが必要です。
学習の内容として留意すべきことは、子供たちが自分でインタビュー相手を選ぶ際、資質・能力の発揮に有効であるかを子供とともに精査することです。
「なぜその人なのか」「その人だから引き出すことができる思いや考えをどのように想定しているのか」を子供たちに問うことを大切にしましょう。インタビューの相手を自分で決める目的は、あくまでも「自分が聞こうとする意図に応じて、話の内容を捉え、話し手の考えと比較しながら自分の考えをまとめること」または、「聞き手としての自分が、聞いた情報をどのように生かしたいのかなどという意図をもって、進んで話し手の話の目的を捉え、相手から情報を引き出そうとしている」というねらいの達成にあります。主体的な学びになり得ているかを子供と共有することが教師の大切な役目です。
地域のボランティア等へのインタビューが難しい場合もあると思います。そのときは、友達同士で学校のよいところをインタビューし合う等といった活動も考えられます。友達同士によるインタビューは、インタビューの機会を数多く経験することができる点で、聞くことに関する資質・能力の発揮のために有効な手立てになります。

〈深い学び〉 話し言葉を可視化(文字化)して話合い自体を振り返る

深い学びを実現するためには、インタビュー内容が自分の目的や意図の達成につながっていたのかについて、情報を精査して考えを形成したり、自分の聞く力について、問題を見いだして解決策を考えたりする必要があります。
そのためには、インタビューのやりとり(話し言葉)を可視化して、聞きたいことを焦点化したり、事実のみならず思いや考えまで引き出すことができているかを省察したりすることが重要です。
例えば、6時間目では、インタビュー内容を文字化し、聞き手の質問を改善していく活動を計画しています。そのために、話合いの最中に、端末の音声入力機能を活用し、話し言葉を文字化するようにします。この文字化された言葉を基に、「どのような質問が相手の思いや考えを引き出せたのか」など、話合い自体を振り返るとよいでしょう。そうすることで、話し手と聞き手双方の情報を関係付けて、自らの考えを問い直そうとする、深い学びに向かうことができると考えます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)音声入力機能を活用して話し言葉を文字化(自分の考えを深める場面における活用)

6時間目には、「インタビューの際の質問内容について振り返る活動」を設定しています。
例えば、インタビューの際、質問をし始めるときに音声入力キーを押し、インタビュー終了後にもう一度音声入力キーを押します。すると、話し言葉が文字化されて記録される機能をもつ端末があります。この文字化された資料を基に、質問内容をよく吟味します。
吟味する内容としては、例えば「事実を引き出す質問ができているか。」「事実から思いや考えを引き出す質問ができているか。」「相手が話したいことを踏まえながら自分の聞き出したい質問を投げかけることができているか。」等があるでしょう。
インタビューが終わり、教室に戻った後で、文字化された情報を基に自分の聞き方(聞く力)を振り返り、よさや改善策を話し合うことで、自らの活動を見直したり、自分の考えを深めたりすることができるでしょう。
音声入力機能や文字化の機能がない端末を使用している場合は、端末の動画撮影機能でインタビューの様子を撮影しておき、その動画を見返して振り返ることでも同様のねらいを達成できると考えます。
端末の機能として、文字化することが難しい場合は、別途ボイスレコーダー等を使って自分の話し言葉を記録し、音声情報を何度も聞き直すことで、自分の質問内容を吟味するといった手立ても考えられます。もし、記録することができない場合は、インタビューの際、記録者を役割として立てるとよいでしょう。自分の話し言葉を問い直すために、記録した文字情報や音声情報を活用することが、深い学びにつながると考えます。

6. 単元の展開(6時間扱い)

 単元名:「学校のよいところ」をインタビューして紹介しよう~オンラインによる他地域の小学6年生との交流~

【主な学習活動】
・第一次(1時2時
① 「学校のよいところ」について、これまでの自分の経験を基に話し合う。
 
② 図を使って、自分の考えとその理由、自分の経験に基づく事例などをつなぎ、「学校のよいところ」という話題に対する自分の考えを書きまとめるとともに、学校のよいところに詳しくなるために、誰にインタビューするとよいかを話し合う。 

・第二次(3時4時
③ インタビューをする相手が同じ友達同士で組んだグループで、インタビューの計画を立てる。その際、②でまとめた「聞きたいことに対する自分の考え」に加え、「質問に対する相手の答えの予想」「予想した答えに対して、さらに詳しく聞いたり、内容を深めたりする質問」等について話し合い、②の図に付加・修正する。

④ 「学校のよいところ」という話題に沿って、インタビューを行う。〈 端末活用 〉

・第三次(5時6時
⑤「学校のよいところ」という共通した話題を基に、オンラインで他地域の小学校と交流を行う。

⑥ インタビュー時に記録した文字化資料を基に、自分の考えを深める上で、よい質問とは何かについて話し合う。〈 端末活用 〉

全時間の板書例・端末活用例と指導アイデア

【1・2時間目 端末上のワークシート(考えマップ) 】

1・2時間目のワークシート(考えマップ)
「主体的な学びのために」/ 話題を具体化する

「学校のよいところ」という話題は子供たちにとって身近で話しやすい話題です。まずは、子供たちが考えている学校のよいところを発表していくようにしましょう。その際、教師は、以下の3点を全体で共有し、学校のよいところを探る話合いを支援します。

  • 学校のよいところとして目を付けるとよいこと(人の優しさ、自然の多さ、楽しい授業がたくさん、地域の方が見守りをしてくれる等)
  • 学校のよいところを伝えるときに気を付けるとよいこと(考えと理由を述べること、事実と思いや考えを区別すること等)
  • 伝える相手や目的、意図によって、取りあげる学校のよいところは変わること

全体での話合いをすることで、学校のよいところについて、自分の立場が明確になります。
この話合いの中で、子供たちは、誰にインタビューすると学校のよいところについて詳しくなるかを見いだすことができるでしょう。
ワークシートには、中心に「学校のよいところ」を書き、そこから「考えや理由」を線でつないで現段階での自分の考えを整理します。図の外側に、内容をさらに詳しくするためにインタビューをしたい人の名前も書き込むとよいでしょう。このワークシートは、端末上で作成することで、毎時間の自分の考えや変化を蓄積していくことができます。

「対話的な学びのために」/ 対話の数を保障する

ワークシートに自分の考えを表した後は、ペアで学校のよいところを探る話合いを行います。
その際、ペアを変えながらできるだけ多くの友達と話合いを行うとよいでしょう。話すこと・聞くことの学習では、相手を変える、役割を変える、話し方や聞き方を変える、話題を変えるといった変化を付けながら数をこなしていくことを大切にします。
相手を変えて繰り返し話し合うことで、学校のよいところについて考えを深めるためには、誰にインタビューすればよいかを一人一人が見いだしていきます。

~ ペアによる学校のよいところを探る話合いを終えた後のやりとり ~

学校のよいところを探る話合いをペアでしてみて、もっと詳しく調べる必要があると考えたよいところは何ですか。

イラスト/明野みる(交流場面)、横井智美

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