第4学年「月と星」 学校で行うべき活動とは?【理科の壺】
調べ学習は子どもたちに主体的にやらせたい。しかし、果たして子どもたちだけでできるのか、同じ学級内でも子どもによって、調べる視点や深さに差が出てしまうのではないかと、お悩みの方も多いのではないでしょうか。何に気を付ければ、子どもたちが円滑に、かつ主体的に調べ学習をできるのか、今回は考えてみます。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/東京学芸大学附属小金井小学校教諭・三井寿哉
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.はじめに
今回は4年生の「月と星」の指導を題材にして考えたいと思います。
まず、先生は月が観察できる授業日を決めましょう。そして、子ども一人一人が観察し、正しく記録できるよう学校で指導していきましょう。さらには、宿題を出して夜の観察も行えるようします。月の観察活動を丁寧に行うことで、後で行う星の学習は、宿題として個人の観察ができるようになり、共通の記録を得ることが期待できます。
1.月が見られる時刻に時間割を調整する
「月と星」の単元の「月の学習」では、まず導入で月を実際に観察する活動を大事にしたいです。子どもたちと日中の月を見ながら問題を見出し、観察を行い、結論までを学校で行うようにします。
そこで、まず先生は日中に月が見られる日を理科の授業日にしなくてはいけません。先生は月カレンダーを基に学校時間に月が見られる時刻を確認し、理科の授業時間を設定するとよいでしょう。授業中に観察できる月は主に半月です。上弦の月前後2日間は3時間目以降の授業にし、東の空を観察します。また、下弦の月前後2日間は1、2時間目に授業を設定し、西の空を観察します。
【学校時間で見られる月の形と、理科の授業にするとよい時間割の目安】
※授業日時設定の際は、その日の天気も確認しておきましょう。
2.方位(高さ)のはかりかたを実践で確かめよう
①方位磁針
まず方位磁針の操作について指導します。方位磁針は3年生「太陽と地面の様子」でも扱っていますが、本単元でも実際の月の方位の観察を通して、正しい操作ができているか確認していくことができます。家庭で方位磁針を持っている子は、今後の星の観察の練習のため、学校に持って来させるのもいいですね。最近ではスマホの方位磁針アプリを使う子もいます。扱い方は学校の方位磁針と同じです。学校の器具を家に持ち帰らせる際には、誰に何番の器具を貸したか、先生が記録しておくようにします。
②高度をはかる
月の高さは必ずしも調べる必要はありません。しかし、方位だけでなく高さも変わるのではないか、と経験を根拠にした予想を立てる子もいます。高さの位置変化を調べる場合は、教科書等の測り方を参考にしながら行いましょう。手軽な測り方としては、握り拳何個分か※ではかることができます。日中に子どもたちと操作や月の高度を確認しながら調べる活動ができます。
※月の方向を向いてまっすぐ立ち、グーにした片手をまっすぐ前に伸ばして、握り拳の上の部分と目線が水平になるように揃えます。その上にもう片方の握り拳を重ねると、重ねた握り拳の上の部分までが10度です。あとは、握り拳を何回重ねたかで、月までの角度のあらましがわかります。
3.条件を整えた観察記録を作ろう
① ノートに記録する
ノート1枚を使って数時間の月の位置の変化が記録できるよう指導していきます。まず、下段にわかったことや結論が書けるスペースを確保しながら、ノートの升目や罫線を利用して地上線を決めます。高度も記録させる際には、拳3個分の線を等間隔に設けるよう指示します。地上線には建物や木などの目印となるものを簡単に記録し、方位を描きこみます。
学校で観察する時間を3回程度設け、その都度月の位置と時間を記録できるようにしていきます。
② PCで写真に残すのは、実際難しい
一人一台端末で写真を撮るときは、毎回同じ画角にしないといけません。また、撮影された月は小さくなることが多いです。そのため、比較できるくらいの条件を整えた撮影は高度な技術が求められます。つまり、子どもたちにとって、月をきれいに撮影することが活動のメインとなってしまうため、月の位置の変化を調べるという、本来の活動が疎かになってしまいます。撮影をOKにする際には、先生の支援と注意が必要です。
4.宿題にする→星の観察に生かす
理科の授業で行う月の観察、記録は友達と確認しながら行えるようにしていきます。観察は個人で行っていきますが、操作や記録の仕方を学級で統一することができ、記録を基にしながら結果を共有することができます。日中の観察によって結論まで得ることができたら、同じ方法で夜の月の観察も行ってみましょう。夜に観察は各家庭での個々の宿題になってしまいますが、同じ操作、同じ記録の仕方であるならば、後の理科の授業で結果を共有することができます。
そして、これらの活動は、星のならびや位置の変化の学習に生きていきます。星の学習は観察が全て夜であるため、学校時間外の個人観察が主となります。月の観察経験を基にしながら条件を整えた宿題へとつなげていきましょう。
イラスト/難波孝
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<執筆者プロフィール>
三井寿哉●みつい・としや 東京学芸大学附属小金井小学校教諭。理科を中心に日々実践研究を行う。本学教育実習をはじめ、東京未来大学非常勤講師、姫路大学非常勤講師の教員養成にも携わる。理科おもしろゼミ研究会代表、NHK Eテレ『ふしぎエンドレス』作成協力委員、共著に『GIGAスクールに対応した小学校理科1人1台端末活用BOOK』(明治図書出版)、『小学校理科フローチャート型授業ガイド』(東洋館出版社)など。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。