「条件制御花壇」を活用して、植物の成長条件を調べよう!<5年生 植物の発芽と成長> 【理科の壺】
今回は、肥料の必要性を子どもに感じさせられなかった、という反省から生まれた実践についてご紹介します。5年生「植物の発芽と成長」において、インゲンマメには個体差があるため、「肥料なし」でも青々と大きく成長しているものもあれば、「肥料あり」で小ぶりなものもあったため、より分かりやすく条件制御の方法を改善するための取組です。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/福島県公立小学校教諭・野口卓也
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.子どもは、植物の成長における「肥料」の必要性を実感できていますか?
春も終わり、夏に向けてまっしぐら! 発芽した植物たちも、ぐんぐんと成長している時期だと思います。5学年理科では「植物の発芽と成長」において、主にインゲンマメを用いて植物の発芽や成長の条件を解決していきます。ちょうど今頃は、ある程度大きくなってきて、プランターや花壇に植え替えて、成長条件について調べ始めているのではないでしょうか。
以前、わたしは5年生を担任して、インゲンマメを用いて植物の成長条件についての考察をしている際、「先生、肥料がなくてもインゲンマメは大きくなっているから、肥料はあってもなくてもいいんじゃないかな」というA君に出会いました。たしかに肥料がなくても、植物は成長します。A君に、「肥料があるとこんなに成長の仕方が違うんだ!」と感じさせることができなかった、わたしの授業に課題があるのだと思い、改善点を振り返ってみました。
すると、一番の原因は「インゲンマメの個体差」だったのではないかと考えました。つまり、植木鉢に一株ずつインゲンマメを植え替え、「肥料あり」と「肥料なし」に分けて実験をしていたのです。そうすることで、子どもは「肥料あり」と「肥料なし」の植木鉢を比較して結果を整理していくのですが、インゲンマメにも個体差があるため、「肥料なし」でも青々と大きく成長しているものもあれば、「肥料あり」で小ぶりなものもあったのです。
そのとき、わたしは「インゲンマメの個体差が気にならないように実験していくことが必要かもしれない」と考えるようになりました。
そこで、子どもからの「肥料ありと肥料なしの場所を作って、そこに植え替えて実験してみたい」という声に応え、子どもと共に条件制御花壇を整備して実験を始めました。インゲンマメを群生させて、個体差による影響を無視して実験できる「条件制御花壇」を製作したのです。
2.「条件制御花壇」を作ろう
条件制御花壇は、学校園の一区画を活用して製作できます。学校の実態に応じて、製作する花壇のサイズは変わりますが、小スペースでも効果を発揮します。製作に向けての準備物や手順は、次の通りです。
<準備物>
・レンガ(製作する規模に応じた個数)
・接着剤(レンガ用またはコンクリート用)
・培養土(製作する規模に応じた量)
・バーミキュライト(製作する規模に応じた量)
<製作手順>
① 製作する場所に、レンガを四角形になるように並べる。(この時、レンガを2個積んで並べると深さが出る)
② できた四角形が半分になるようにレンガを並べる。
③ 並べたレンガのつなぎ目に接着剤を流し、固定する。
④ 接着剤が乾いたら、培養土とバーミキュライトを8:2くらいの割合で混ぜて入れる。
⑤ 培養土側に肥料(化成肥料または牛糞など)を混ぜこむ。
子どもたちが種子から育てたインゲンマメの苗を植え替えると、右の写真のようになります。「条件制御花壇」は、子どもと共に製作しても、教師で環境づくりとして製作してもよいと思います。
3.「条件制御花壇」を使って、問題を解決しよう
1か月程度成長させていくと、下の写真のようになります。(「花壇の左側が「肥料あり」、右側が「肥料なし」としています」)
休み時間や登下校の際に、まめに観察する子どももおり、
「肥料ありの方がぎっしりしてきました!」
「肥料ありの方はもう実ができていたよ」
など、日々の成長の様子を伝えてくれる姿が見られました。群生させると、上の写真のようにインゲンマメの個体差にとらわれず、成長の傾向で捉えることができるようになります。この「条件制御花壇」を活用すれば、植物の成長条件に対する子どもの理解も深まるはずです。
イラスト/難波孝
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<執筆者プロフィール>
野口卓也●のぐち・たくや 福島県公立学校教諭。福島市教育委員会学校教育課指導員として、市内の小・中学校を訪問し、理科の授業改善に取り組んでいる。2019年~2020年には、評価規準、評価方法等の工夫改善に関する調査研究委員を経験。共著に、『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校理科』(国立教育政策研究所)、『板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 小学校理科4年』(東洋館出版社)、『これからはじめる “GIGA” 全学年1人×1台端末×活用事例 小学校理科3・4年』(日本標準)等がある。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。