小5国語「古典の世界(1)」京女式板書の技術
今回の教材は「古典の世界(1)」です。この単元では、「昔の人のものの見方や感じ方を知る」ことを目指します。そのため、古典が現代の感じ方に通じるところや4つの古典の共通点などに気付けるような板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/京都女子大学附属小学校教頭・砂崎美由紀
教材名 「古典の世界(1)」(光村図書出版)
目次
単元の計画(全2時間)
- 「古典の世界(1)」を読み、古典作品の冒頭部と、その解説文を音読し、作品の大体の内容を知る。
- 「古典の世界(1)」を読み、昔の人のものの見方や感じ方を知る。
板書の基本
〇「古典の世界(1)」では、「竹取物語」「平家物語」「方丈記」「徒然草」の冒頭部を扱っています。まずは音読を通して、古典に親しみ、日本語の美しい表現に触れさせます。作品の冒頭部を、現代語にした解説文といっしょに読み、昔の言葉と今の言葉を結び付け、大体の内容をつかませます。
〇板書に、古典の原文は白チョークで、現代語は黄色チョークで、というように、板書をする際の約束事を決めておきます。
板書のコツ(2/2時間目前半)
板書のコツ①
「竹取物語」「平家物語」「方丈記」「徒然草」の4つを1時間で読むことを知らせます。前時に読んだ際、大体の内容をつかんでいます。そこで、「昔の人のものの見方や感じ方を知る。」と本時のめあてを確認します。教師がめあてを板書し、黒板全体を4つに分けます。子供たちへはノート2ページを使って、4つの古典を書くことを知らせ、ノートに板書のように縦横に線を書くよう指示します。
次に「竹取物語」を読みます。1人が音読し、前時に読んだとき、自分が印象に残っているところや気に入ったところを重ね読みをするように全員に指示します。多くの子供が重ね読みをしたところを板書に書きます。ここでは、「今は昔」「竹取の翁」「さぬきのみやつこ」を白いチョークで板書しました。
板書のコツ②
同様に、「平家物語」を読みます。1人が音読をして、印象に残っているところや気に入ったところを音読するように指示します。そして、同様に、重ね読みが多かったところを板書します。「祇園精舎」「諸行無常」「盛者必衰」などを白いチョークで板書しました。学習の方法を知り、次の「方丈記」「徒然草」については、今度は1人学習で言葉を選び、同様に各自ノートに書くことにしました。その後、発表を板書しました。
板書のコツ(2/2時間目後半)
板書のコツ①
本時のめあてが「昔の人のものの見方や感じ方を知る。」であることを確認します。現代語の説明文を読みながら、4つの文章それぞれから分かる「昔の人の物の見方や感じ方」を見つけます。
「竹取物語」では、今は「かぐや姫」として知っているおとぎ話を、昔の人たちも楽しんでいたこと、昔の人も「不思議なできごとに興味をもっていた」ことなどを発表しました。これら、現代語訳の説明文から読みとったことは、黄色チョークで板書し、気付いたことは雲形で囲みます。チョークの色を分けることで、原文なのか、読み取ったことや解説なのかを区別します。
「徒然草」では「みょうに心がみだれて」と、昔の人も今と同じように、何かに悩んだり生き方を考えたりしていたというところに着目しました。はるか昔の人たちと、現代に生きる私たちに、共通点があることから、ぐんと古典が身近になってきます。
板書のコツ②
子供の気付きは赤チョークで短い言葉で書き加えました。「竹取物語」では、今は昔話を「むかしむかし」から始めることを子供たちから引き出しました。
「平家物語」では、音読するうちに七五調でリズムよく音読できることに子供たちは気付きました。
「方丈記」では、「ずっとそのままということはない」が、「平家物語」に出てきた「無常」と同じ意味と子供たちは考えました。
「徒然草」では、今の時代で言う「ブログ」のようだという意見が子供たちから出ました。これらの子供たちの気付きを板書しました。
板書のコツ③
「4つの古典作品が板書されたものを見て、気付いたことはありませんか」と子供たちに問いかけます。子供たちは、それぞれの中によく似た言葉が出ていることに気付きました。「平家物語」の無常は「方丈記」にも表れていること、「方丈記」の「消えたりできたりするあわ」は、「徒然草」の「浮かんでは消えていく」と似ていること、「平家物語」と「方丈記」ではどちらも世の中や人生のはかなさを書いていること、などが出ました。
これらは、昔の人のものの見方や感じ方として、作品が異なっても流れる共通点なのかもしれません。この気付きは青チョークで板書しました。これらは後ほど、1時間を振り返ったときに、読み深めた学習の軌跡を分かるようにするため、黄色チョーク・赤チョーク・青チョークで書きました。
授業のコツ④
学習の最後には、「学習の振り返り」を各自がノートに書きます。振り返りを書くときに使うキーワードを示します。この授業で押さえるべきポイントをキーワードとして示すことで、学びを自分事として捉えることになります。「古典とわたし」の距離が縮まり、気に入った作品とその理由が書ければ、古典を味わえたと言えるでしょう。
構成/浅原孝子