子供たちといっしょに読みたい 今月の本#3 学級の荒れ防止におすすめの本
連載3回目のテーマは、「学級の荒れ防止におすすめの本」です。新しい学級にも慣れて、子供たちの気持ちがゆるみ出す6月。学級崩壊もこの時期から表れ始めると言われています。学級内の雰囲気がトゲトゲしてしまったり、子供同士の関係がこじれてしまったりする前に、子供たちの気持ちがおだやかになり、楽しい雰囲気の学級をつくる手助けになるような本はいかがでしょう。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど、学級の実態に合わせてください。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
低学年
失敗して心が沈んでしまったとき、おまじないの言葉で前向きになるというお話です。小学1年、2年の子供たちといっしょにおまじないを言って、元気につなげてください。
『げんきだしていこう! のおまじない』
文・絵/西平あかね
大日本図書刊
猫が主人公の女の子におまじないを教えてくれました。「ほっとけ ほっとけ ほっとけーきの ふとんがふっとんだ~!」このおまじないを言うと、恥ずかしさも嫌な気分も心配事も吹っ飛んで、いい気分になるという絵本です。
松岡司書のおすすめポイント
誰にでも恥ずかしいことや心配事があります。低学年の子供たちもくよくよしたり、心が沈んだりします。この絵本を読み聞かせしたときに、おまじないのところで「みんなもいっしょに言ってみよう」と言うと、子供たちは喜んでおまじないを唱えるのではないかと思います。きっと心配事が「飛んでけ~」という気持ちになるでしょう。読み聞かせのときに、子供たちもいっしょに読む絵本があると楽しいのではないでしょうか。
中学年
イライラする子にはその子なりの理由がありそうです。どんな原因があるのでしょう。小学3年、4年の子供たちの心を落ち着かせるヒントにしてください。
『かいじゅうポポリは こうやって いかりをのりきった~かいじゅうとドクターと取り組む2 怒り・かんしゃく』
作/新井洋行 監修/岡田 俊
パイ インターナショナル刊
かいじゅうポポリは、いつも怒っています。友達と大げんかしたある日、ポポリが1人であばれていると、怒りのマスターかいじゅうが現れて……。ポポリは自分の気持ちと向き合い、上手に怒りとつきあう方法を学びます。「かいじゅうとドクターと取り組む」感情をめぐる絵本シリーズの第2弾!
松岡司書のおすすめポイント
怒りの対処法がストーリー仕立てで描かれている絵本で、子供理解にも、読み聞かせにもよいと思います。ここには、ムカムカやイライラにつながるものが約50個も挙げられていて、このようなことが怒りにつながるのかと改めて知ることができます。子供がムカムカしたり、イライラしたりしたときの対処として活用してもよいし、ヒントにしてもよいのではないでしょうか。
高学年
自我に目覚め、大人たちに反発する年代になってくる小学5年、6年の子供たち。地球単位、宇宙単位で、子供たち自身の誕生を祝福してくれる壮大なイメージを届けます。
『あなたが うまれた ひ』
作/デブラ・フレイジャー 訳/井上荒野
福音館書店刊
赤ちゃん誕生の喜びを歌った絵本です。あなたがお腹の中にいるときから、あなたが地球で楽しく生きていくための準備を地球全体がしてくれました。あなたが生まれてきたとき、地球が誕生を祝福しています。
松岡司書のおすすめポイント
宇宙レベルであなたが生まれたことを祝福しているという壮大なイメージを子供たちに感じ取ってほしいと思います。地球の自然の巡りが、あなたの誕生を喜び、味方をしてくれると感じ、元気がわいてくる本です。
こちらもおすすめ!
いろいろな感じ方をする子供の気持ちが分かる絵本です。
『はやくはやくっていわないで』
作/益田ミリ 絵/平澤一平
ミシマ社刊
「はやく、はやく」と子供たちに言っていませんか。教室にはいろいろな個性の子供たちがいます。その子の心の声に耳を傾けてみてください。子供同士がお互いのペースを考えるきっかけになる内容です。
松岡司書のおすすめポイント
私もどちらかと言えばゆっくりペースなので、この絵本のことがよく分かります。いつもせかされている子供の心の声が聞こえてきそうです。子供たち同士、いろいろなペースの子供がいるという共感につながるのではないかと思います。
『じゅぎょうに しゅうちゅうしたいのに…』
作/西田征史 絵/鈴木友唯 編/NHK Eテレ「u&i」制作班
ほるぷ出版刊
NHKのEテレで放送された番組の書籍化。主人公のアイちゃんが「ココロのでんわ」などを使って、落ち着きのないユウくんが、光の感じ方が他の子とは違うことを知っていきます。そして、どうしたらいいのかを考えるようになります。
松岡司書のおすすめポイント
光過敏や感覚過敏など、人はそれぞれ感じ方に違いがあります。それを伝える絵本です。学級にはいろいろな子がいるのだということが分かると、子供同士の理解につながるのではないかと思います。
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松岡みどり司書からのメッセージ
様々な子供がいるなかで、子供たちの間に少しずつずれが出てきたときに考えるヒントになればよいと思い、今回の本をチョイスしました。ここに紹介した本を通して、子供たちがリラックスしたり、楽しい気持ちになったり、友達のことや自分のことを考えたりする手助けになればうれしいです。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。