書く力を伸ばす!効果的な赤ペンの入れ方とは【ノート指導14】
「赤ペン」の入れ方次第で子どものやる気に差が出ます! いつも決まって「二重丸」をつけているだけでは子どものやる気は育ちません。効果的な「赤ペンの入れ方」のお話です。
執筆/北岡隆行
目次
「速くて、ていねい」を評価する
ゆっくりていねいに書くことと、雑でもたくさん書くこと、どちらを優先させるかといえば、たくさん書かせることが優先でしょうか。それに、つねにスピードアップを意識させれば万全です。
赤ペンの入れ方で鍛える
速く書けても、雑になる。これを解決する方法を紹介しましょう。
速く書けるように鍛えながら、「ていねいに」書くことを意識させるのですが、その秘訣は、赤ペンの入れ方にあります。
「ありの行列」(光村3年上)の1時間目のことでした。
ありの行列は、なぜできるのでしょう。
この課題を、ノートに書かせました。1時間の学習内容を意識させ、見通しをもたせるためです。
「今度は一緒の速さで書かないよ。先生より速く書けた子は鉛筆を置いて。」と言って、書かせました。
子どもは速く書こうとがんばり、あっという間に書き終えます。そこで、机間巡視しながら赤ペンを入れていきます。教師より速く書けた子には全員、〇をつけます。ところが1人、2人に◎がつきます。「!」が広がり、子どもたちは◎の子のノートをのぞきます。
〇と◎をつけるのは、望ましいノートを示し、子どもたちに意識させる方法です。
○の子と◎の子の違いは、次のとおり。○の子は表記のしかたが身についていないのです。◎の子はていねいに書いていました。
最低1か月は指導する
なぜ、自分は◎がつかないんだ? 子どもに疑問が生まれるはずです。
そこで、望ましいノートの具体例を板書して、文字、表記、文法などの違いを説明します。
一度自分でノートに書き、間違いに気づいているからこそ説明をよくきき、理解できるのです。そうすれば、速さだけを競うことはしなくなります。速く書くことは大前提ですが、ていねいに書くことに気をつけるようになります。
少なくても1か月。3か月続ければ、速く、ていねいに書くようになるでしょう。しつけとは「しつづける」ことなのです。
漢字練習のさせ方
漢字練習を10問するとき、課題を板書したとしましょう。このとき、「10 回ずつ書きなさい」という指示はよくありません。
「教科書を見ながら、それぞれ1 回ずつ書きなさい。」と言って、持ってこさせ、正しく書かれたものに○をつけます。そして、○がつかないものだけ、もう一度下に書かせます。
その子にとってせいいっぱいの、きれいな字に○をつけます。
きれいな字は、子どもそれぞれに違います。ですから、第三者から見ると、○をもらっていても「へたな字」ということもあります。「先生は、一人ひとりどのくらいの字が書けるか知っているよ。誰かとの比較ではなく、その子のせいいっぱいのきれいな字に○をつけるよ。」と、子どもたちを納得させましょう。
〇の数で競わせないように注意
○重丸では、きりがない
丸はどのようにつけていますか。
普通は三重丸、ちょっとよいと四重丸、さらによいと花丸、いちばんいいと星丸といったところでしょうか。
そうすると、子どもたちは少しでも数の多い丸をもらえるよう、がんばります。四重丸をもらえる子が少ないときは、そこに価値を見つけます。ところが、ほとんどの子が四重丸をもらうと、四重丸には見向きもしません。子どもの興味は、丸の数だけなのです。
赤ペンを必要なことにしぼって入れる
ですが、教師は、書くことのよさを知り、工夫して書けるようになる子どもになってほしいのです。
必要なことにしぼって赤ペンを入れる。これが、書くことのよさを知り、工夫して書けるようになるためのポイントです。
具体的な赤ペンの入れ方を紹介しましょう。
正解のときは、ただの一つ丸。時間がないときは、よいところにアンダーライン、あるいは囲みをします。
そして、よい点を一言、書きそえます。一言の具体例は、以下のとおりです。
正しく書くことについては、
・句点(。)や読点(、)が正確に打てるようになったね。
・会話文の下には書かない約束ができるようになった。GOOD !
・習った漢字を使って書いている。えらい。
考えをつくるためには、
・矢印の使い方がうまい。原因→結果になっているね。
・箇条書きしたあと、それを3つにまとめて書いている。だから、わかりやすい。
表現のしかたについては、
・書き方が上手になってきたね。最初に結論をもってきて、例がわかりやすいからだ。
・メモのしかたが適切。最後にまとめを入れて、これをもとに今度の発表をしたらいいよ。
という具合です。
〇と一言の入れ方・例
赤ペンの3つの鉄則
①教師がねらっていることにしぼって、ほめる。
②わかってできるようになるまで、ほめ続ける。
③できるようになったあと、次のねらいをもって進んでいるときでも、ときどき思い出したようにほめる。
イラスト/相澤るつ子
「COMPACT64 ノート指導 早わかり」より