小4国語科「まちがえやすい漢字」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小4国語科「まちがえやすい漢字」(光村図書)の全時間の板書例、発問例、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/大妻女子大学家政学部児童学科教授・樺山敏郎
執筆/埼玉県さいたま市立針ヶ谷小学校教頭・樋口 浩
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
ここでは、同音異義語・同訓異字や馴染みの浅い読み方など誤りやすい漢字があることを認識し、それらの漢字について国語辞典を使った学び方の理解と、その知識を活用していく力を付けます。
実際の学習では、日々の漢字学習における課題意識の親近性と、苦手感や困難感を乗り越える学び方の有用性を示していくようにします。その上で、子供たちが思考操作を通して知識を得られる効果や喜びを実感できるようにするとともに、ここでの学習後もその学び方を使って、漢字の知識を習得する意欲やそのための拠り所とできるようにします。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
子供たちは4年生までで642字の漢字を学習します。5・6年生ではさらに384字を学びます。
子供たちが漢字により親しめるようにするためには、書き間違えたり読み間違えたりする漢字と出合ったときに、分からないことを調べる手立てと、正しい漢字の使い方を知ることが必要です。
ここでは、子供たちの思考や言語の操作を通して漢字の読み方、書き方、意味について、理解への抵抗感を和らげ、乗り越えて学ぶ意欲を高めます。
そのため、国語辞典で調べ、意味と漢字を結び付けて考えることで、難解な漢字も理解や活用につなげる手立てとし、習得活動を継続的な取組と捉えることができるようにします。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 前向きな課題意識を共有する導入
導入において、漢字に係る学習での課題について、子供たちが共有できるようにします。
これまでの小学校4年間に及ぶ漢字の学習は、子供たちにとって少なからずの課題を与えています。
中には、「漢字を間違えてしまう」ことから「国語が苦手」、さらには「勉強が好きではない」という思考過程を踏んでしまっている子供もいるかもしれません。
漢字の難しさの一つに「同音異義語」「同訓異字」「馴染みの浅い漢字の読み方」があります。それが故に、テスト等でこのカテゴリーから問われたとき、それが子供たちの躓きとなってしまう契機になりがちです。そのため、本学習においても、漢字の学習に対して、敷居の高さを感じてしまう子供たちも少なからずいると考えられます。
ここでは、課題を捉える際に、クイズや紙芝居等の軽みのある素材を用いて漢字を間違えてしまう場面を具体的に提示します。それによって、子供たちから「ある、ある。」「分かる、分かる。」と共感を呼び込みます。子供たちにとって困難さ、苦手さを抱く課題に対して、共有できる仲間を得られたことで、ある種の孤独感から反転し、課題を解決しようという大きなエネルギーを生み出します。それが原動力となり、主体的な学びの後押しとなります。誰もが解決したいと思っていた課題に向かう意欲に火をつけることになるわけです。
〈対話的な学び〉 目的意識と取組の分担を明確にした協働
同音疑義語、同訓異字、馴染みの浅い漢字のどれをとっても、対象となる字は膨大な数に上ります。
また、学習活動も複数の過程を踏むことになります。それらを一人の学びで完結させるには、実に多くの時間を要します。その結果、学級やグループという集団の中では、個人差が浮き彫りとなり、能力の高い子供も課題の多い子供も消化不良を起こしかねません。そのため、個別の能力や課題、意欲の中で、子供が少しでも多くの該当漢字に触れられるようにします。
ここでは、グループ協議までの個の学びに対して、その活動の過程や取り組みのカテゴリーを役割として複数人で分けて協議に臨みます。そうすることで、個人の能力差があっても、自分たちで立てた計画のため、一貫して自分自身の課題意識に沿い、焦点を絞った視点から見通しをもって協議することができます。意識の一貫した見通しが明確にもてる活動では、自らの学習に対する目的意識も明確になります。
ここで分担する取組の例には、以下のようなものが考えられます。
【活動の過程を分担する】
①該当漢字を検索する。 ②該当漢字を用いた例文を作る。 ③漢字を分類し、整理する。※
※部首、画数、五十音順、使用場面、意味のカテゴリー、学習学年等
【取組のカテゴリーを分担する】
①音読み一字 ②訓読み一字 ③熟語
必要に応じてその都度交流する中で、人数配分や分担範囲を修正していきます。
〈深い学び〉 継続的な学びにつなげるまとめと振り返り
ここでは、「まちがえやすい漢字」を調べて集めますが、同様の過程を踏む学習は、ここまでにもこれからにもあります。「ことわざ」「四字熟語」「同じ著者の書いた作品名」等がそうです。他教科においても汎用性の高い学びになります。
「まちがえやすい漢字」は、ここでの学習が終わった後も集め続けることで、漢字の知識はさらに蓄積され、理解が深いものになっていきます。
また、「国語辞典」を使った学び方は、習慣化することで他の学習のみならず、日常生活も豊かにする側面を有しています。さらに、「目的とする語彙・情報」を「資料を使って調べ」、「集める」という過程は、繰り返し活用する学び方、そして言語生活そのものを深めるものとなります。
その価値ある深まりへつなげるためには、ここでの学びを継続的なものとすることと、その価値を見いだすことが大切になります。
学習の導入時につかんだ課題意識が、学習後の振り返りにおいて完結したものではなく、この学びを価値付けるまとめと、今後に生かす具体的なビジョンをもった振り返りになるようにしていきます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)導入や言語活動の教師モデルのファイル化による個別活用
教師が課題把握のために導入で示したモデルや学習過程の手順やポイントを示したものは、学習の中で常に意識したり、繰り返し確認したりしたいものです。ここでは、間違えやすい漢字を学ぶ必要感や、漢字の調べ方や交流の仕方を示したものになります。
これまでは、教師が口頭や板書、プリント等で示し、提示された後、時が過ぎるほど記憶が薄れ曖昧になったり、資料の整理が煩雑になったりしてしまう子供もいました。
しかし、1人1台端末の中に、それらをファイル化して格納しておくことで、個々で必要なときに必要なだけ確認することができます。
さらに、動画であれば静止したり繰り返したり、静止画でもマーキングしたりコメントを挿入したりして、自分なりの資料に昇華していくこともできます。まさに主体的で個別最適な学びを支えるものとなります。効果的な使い方をしている子供の取組を、端末を通して紹介することもできるので、より子供の意欲や効果的な活用を促していくようにします。
以下のaからeを順にプレゼンテーション風に示す。
(2)双方向のコメント添付による学びの足跡の記録化
分担した一人の学びを保証しつつも、後に取りまとめることを見通したコミュニケーションをクラウド上で取りながら活動し、その軌跡を残すことで自らの、そして集団としての学びの深化を認識できるようにします。
グループで、学習過程を分担して取り組んでいても、ただ別々に活動してそれぞれの成果を合わせるだけでは協働にはなりません。これまでは、個々で取り組んだ後に集まって話し合うという、全員共通のタイムスケジュールに基づいて個の学習に取り組むこともありました。これにより、設定された一斉のタイミングでその都度作業や思考が分断され、個に応じたペースを尊重することに難しさがありました。また、集まらずに紙媒体でやり取りする場合、細かいニュアンスをやり取りできず、本当に欲している情報の送受信に困ることもありました。
端末にインストールされているアプリの機能には、資料の中にコメントをカラーペンで直書きする、カードにメモを残して添付する、チャットでコメントする、スタンプで印を残す、などによるコミュニケーションが可能になります。これらのやり取りは自分のタイミングで情報を発信したり受信したりすることができます。そのため、自分の取組の進捗状況を見ながら、自分で交流するタイミングを選ぶという学習のマネジメントがしやすくなります。
しかも、交流の中で質問、協議、回答したことなどの情報は、全て端末内に残り、時系列でも整理できます。その思考過程の足跡をたどって視覚的に学びを振り返ることもできます。
このように、端末を活用することで容易で効果的であるということを実感できるようにしていきます。
6. 単元の展開(2時間扱い)
単元名: 国語辞典を使って、まちがえやすい漢字を調べよう
【主な学習活動】
(1時)
① これまでに漢字を書いたり読んだりした時に間違った経験を振り返り、みんなで学びたい課題を出し合い、学習課題、学習計画を立てる。〈 端末活用(1) 〉
学習課題:国語辞典を使ってまちがえやすい漢字を調べ、漢字の学び方をまとめよう
② 平仮名で書くと同じになる言葉について考える。〈 端末活用(1) 〉
③ 平仮名で書くと同じになる言葉を集め、まとめる。〈 端末活用(2) 〉
(2時)
④ なじみのない読み方をする言葉について考える。〈 端末活用(1) 〉
⑤ なじみのない読み方をする言葉を集め、まとめる。〈 端末活用(2) 〉
⑥ まちがえやすい漢字の学び方についてまとめ、学習を振り返る。
全時間の板書例、発問例、児童の発言例
イラスト/横井智美