小学校理科のプログラミング学習どうしてる? ─A領域の「電気の利用」から─ 【理科の壺】

連載
理科の壺/進め!理科道~理科エキスパートが教える、小学校理科の指導法とヒント~

國學院大學人間開発学部教授

寺本貴啓

理科の授業とプログラミングは親和性が高く、「理科の学習を充実させるため」にもってこいです。プログラミングを取り入れることで、指導要領に基づいた理科の学習の深度を、さらに深めることができます。様々な教材が出ている中で、具体的に何に気を付ければよいのでしょうか? 今回は一つの事例として、ご紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?

執筆/長野県公立小学校教諭・佐藤幹子
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓

プログラミング学習どうしてる?

理科はプログラミングが馴染みやすい教科です。文部科学省の「プログラミング教育ポータル」の実践事例A「学習指導要領に例示されている単元等で実施するもの」に、6年「電気の利用」が挙げられています。教科書にも例が掲載されており、チャレンジしやすい単元です。まずは、「電気の利用」の学習でプログラミングを取り入れた授業について考えてみましょう。

心得1 プログラミングは手段の一つ

プログラミング学習というと、まずイメージするのはコードを作成し、プログラムを組むことではないでしょうか。Scratchをはじめとした、プロックを組み合わせることで容易にプログラムを組むことができる無料教育プログラミング言語などが普及し、一人一台端末の実現が、プログラミングをより身近にしました。

しかし、プログラミングそのものが目的ではありません。身近な生活でコンピュータが活用されていることや問題の解決には必要な手順があること、よりよい社会づくりに生かされていることを体感できる手段として、プログラミングを取り入れてみましょう。また、プログラミングがコンピュータ内の命令だけではなく、物理的に働く仕組みなども体験したり、工夫したりしたいものです。

心得2 プログラミングを取り入れた単元展開を考えよう

「電気の利用」では、電気は

つくることができる(発電)
蓄えることができる(蓄電)
光などに変換することができる

ことを学びます。そして、それらを効率よく利用している道具があることに注目し、制御するためのプログラミングがされていることに気づく展開を考えてみましょう。

例えば、導入に「ソーラーライトを観察すること」を取り入れてみます。

まず、100均などで入手できるソーラーライトを観察します。子どもたちは、どのようにしたら電気がつくのかいろいろ試し始めますが、やがてパネルの光をさえぎると点灯することに気づきます。そこで、内部構造を見せ、一つ一つの役割について考えていきます。

ソーラーパネルは、発電(光電池)・蓄電(充電池)・光へ変換(LED)・制御する部分(基板上のICチップなど)の4つの役割をする部品があり、それが回路になっていることを確認します。

また、光電池がセンサーの役割をしていることにも気づくでしょう。そして、それぞれの役割について詳しく調べた後、最後にソーラーライトを作ってみようという目標をたてます(それにしても、これが100円ということが驚きです)。

心得3 センサーやプログラミングを使った制御を何で行うか

各教材会社から、コンピュータを使ってプログラミングしたものを容易に接続して使える器具がいろいろ出ています。これらがすでに学校にあればよいのですが、比較的高額で、すぐに用意できない場合もあります。私が活用しているマイコンボード(micro:bit)は、数千円と安価で、必要な部品を買い足すなど備品の範囲内で準備できるのが魅力です。また、ブラウザー上でプログラミングでき、様々なアプリが提供されている環境や自分たちで部品をつないで回路を作り上げていく体験ができることも大切な要素だと思います。

では、「ソーラーライトづくり」を行う学習で、プログラミングを活用してみましょう。マイコンボードが先に観察したソーラーライトの「制御する部分」になります。マイコンボードは見た目が基板そのもの。ソーラーライトの基板とイメージを重ねやすいと思います。このマイコンボードに、自分たちの目的に合ったプログラムを作成し、転送することで、「明るい時は消灯、暗くなると点灯」する制御をさせることができます。

micro:bitにプログラミングする時は、ビジュアルプログラミング言語であるMicrosoft MakeCodeやScratchが利用できます。これまでの学習で活用したことがある場合は、見本を見ながら子どもたちにプログラムを組んでもらうのも良いでしょう。今回は、明るさの数値を工夫することが学習の中心となります。事前に組んでおいたプログラムを配布するのも良いでしょう。子どもたちの習熟度に合わせてみてください。

事前にMicrosoft MakeCodeで作成したプログラムを配布する方法

実際の授業の流れです。マイコンボードには、いくつかのセンサーが装備されています。光センサーもその一つです。事前に明るさを調べるプログラムを転送しておいたマイコンボードを配り、教室の明るさを調べます。今回は、暗くなると点灯するプログラムについて考えます。micro:bitのLED部分が光センサーの役割をしているので、室内の明るさを数値で調べることができます。

明るさを調べるプログラム

教室の明るさが分かったら、今度は、その数値をもとにして「明るい時は消灯、暗くなったら点灯」するプログラムを完成させます。「電気の利用」ブロック(注1)の「〇より暗い」ブロックの〇に先ほど調べた教室の明るさの数値より少し小さい数値を入力します。このプログラムをmicro:bitに転送します。これで、制御部分は完成です。このコンピュータにつながっていなくても、プログラムを記録させて回路に組み込むことで、電気を制御できることがポイントです。

micro:bitの制御で消灯点灯させるプログラム

(注1)通常のMicrosoft MakeCodeには、「電気の利用」ブロックはありません。https://makecode.microbit.org/97107-44541-01240-00950より、MakeCode for micro:bit を開くと「電気の利用」画面が出てくるので、「コードを編集する」をクリックすると、ブロック制作画面が表示されます。

いよいよ、発電した電気をためた部品(コンデンサーなど)、電球、マイコンボード(制御プログラムが入ったmicro:bit)をつないで回路を完成させます。

実際に試してみると、暗くならなくても点灯してしまったり、なかなか点灯しなかったりする場合があります。修正を重ね、いい塩梅でセンサーが働き点灯すると歓声があがります。

光をさえぎった時(電気を通しオン)
明るい時(電気は流れずオフ)

これらの活動を通して、一つ一つの部品の役割が連携して道具ができていること、プログラミングや回路には人の工夫があることを実感して学んでいくでしょう。

プログラミングやそれを取り巻くOSやアプリ、器具は、日々進化していきます。子どもと共に学ぶ気持ちで楽しんで取り組んでみてください。

イラスト/難波孝

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<執筆者プロフィール>
佐藤幹子●さとう・みきこ 長野県長野市立吉田小学校教諭。理科専科として、また信州理科教育研究会員として日々実践研究を行う。SSTA会員。


<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。


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