小6国語「メディアと人間社会」「大切な人と深くつながるために」板書の技術
今回の教材は、「メディアと人間社会」「大切な人と深くつながるために」です。本単元の学習活動は、学習課題「これからの社会でどう生きていくか」を設定し、2つの教材文と資料を基に自分の考えをまとめるということです。そのため、「メディアと人間社会」を読み取ったり、2つの教材文を比較して、自分の考えとの共通点や相違点を見付けたりするようにします。それらを捉えやすくする板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立学校教諭・園田 萌(せせらぎの会)
単元名 筆者の考えを読み取り、社会と生き方について話し合おう
教材名 「メディアと人間社会」「大切な人と深くつながるために」
【資料】「プログラミングで未来を創る」(光村図書出版 6年)
目次
単元の計画(全6時間)
第一次 学習課題を設定し、学習の見通しをもつ。(1時間)
1 単元扉のリード文と関連付けて学習課題「これからの社会でどう生きていくか」を設定し、自分の考えと学習の見通しをもって2つの教材文を読む。筆者の主張について初発の感想を交流する。
第二次 2つの教材文を読み、自分の考えとの共通点や相違点を見付けながら考えをまとめる。(4時間)
2 「メディアと人間社会」を読み、論の展開の仕方や表現の仕方を捉え、筆者の考えを読み取る。筆者の考えについて、自分の考えをまとめる。
3 「大切な人と深くつながるために」を読み、論の展開の仕方や表現の仕方を捉え、筆者の考えを読み取る。筆者の考えについて、自分の考えをまとめる。
4 2つの教材文を比較して、自分の考えとの共通点や相違点を見付ける。
5 2つの教材文と「プログラミングで未来を創る」を基に、学習課題について自分の考えをまとめる。
第三次 学習課題について交流し、学習のまとめをする。(1時間)
6 学習課題について、これまでにまとめた考えを基に話し合う。
板書の基本
〇キーワードとなる語句を色分けして、筆者の考えを捉えやすくする板書
単元の主たる学習活動が「筆者の考えを読み取る」とあるので、繰り返し使われていることに着目します。そのために、繰り返し使われているキーワードや文を色分けして押さえます。そのことが、論の展開や構成、表現の工夫を捉えやすくします。これは、色分けした矢印を書くことで、着目した叙述が筆者の考えにつながることを意図しています。
〇2つの教材文の共通点を捉えやすくする思考ツールを活用した板書
「メディアと人間社会」「大切な人と深くつながるために」の2つの教材文の共通点を捉えやすくするために、ベン図を活用します。このベン図の活用により、2つの教材文を比較し、異なる点や共通点を整理することで、自分の考えとの異なる点や共通点を気付きやすくします。さらに、次時で自分の考えをまとめる際の手立てとなるように、自分の考えを整理するベン図を作成します。
板書を利用した授業の進め方(2/6時間目)
1 本時の学習のめあてを確かめる
はじめに、前時の単元のめあて「二つの文章の筆者の考えを読み取り、これからの社会と生き方について話し合おう。」を確認します。本時は「メディアと人間社会」の筆者の考えを読み取るために、論の展開の仕方や表現の仕方を捉えて読むことを押さえ、めあてを板書します。
2 文章構成を確かめ、論の展開や事例の挙げ方を捉える
①文章全体の構成を表にまとめる。
1段目に文のまとまり、2段目に段落、3段目に主な内容をまとめることを伝えながら表を板書し、同じようにノートに書かせます。
②文章のまとまりを確かめる。
筆者の主張がどの段落で述べられているのかを読み取らせます。繰り返し使われている言葉や「重要なのは」「なのではないでしょうか」の読者への呼びかけの言葉などを根拠として、⑥段落に述べられていることを押さえます。
文章のまとまりは、次のようになっています。
・「はじめ」が①段落
⑥段落と同様の内容が述べられていること
・「中」が②段落から⑤段落
具体的な事例が書かれていること
・「終わり」が⑥段落
まとめと読者への呼びかけ
という構成になっています。
上記のようにまとまりを確認し、表にまとまりごとの区切り線を引き、「段落」の列にそれぞれ段落番号を振ります。
③「はじめ」と「終わり」、さらに「中」の順に内容を捉える。
「はじめ」の内容は、繰り返し使われている言葉「人間」「欲求」「メディア」などに着目します。板書では、繰り返し使われているキーワード「人間の欲求」に赤チョーク、「メディア」に緑チョークで直線を引き、2つの言葉の区別を視覚的に分かりやすくします。
次に「終わり」の内容を確かめます。⑥段落の1文目を読むと、①段落の内容と同様に、人間のもつ欲求とメディアの発達について書かれていることに気付きます。表に、⑥段落の1文目「メディアは人間の欲求と関わりながら進化してきた。」とまとめます。①段落「主な内容」を青チョークで囲んで線で結びます。「はじめ」と「終わり」を呼応させる構成「双括型」であることを押さえ、板書します。子供の言葉から筆者の考えをまとめ、書き込みます。ここでも、①段落と同じように繰り返し使われている言葉「人間の欲求」「メディア」に色分けした直線を引き、「はじめ」と「終わり」の構成を理解させます。
さらに、「中」の段落では、事例を確かめます。段落ごとにメディアの発達の事例が1つずつ書かれているので、黄色チョークで「文字」「ラジオ」「テレビ」「インターネット」を囲み、事例を矢印でつなぎます。
3 キーワードに着目して、論の展開や構成の理解を深める
①繰り返し使われている言葉を基に、文章の内容を整理する。
表にまとめた「主な内容」や繰り返し使われている言葉から、どの段落にも「人間の欲求」と「メディア」について述べられていることに気付かせます。そして、文章中のキーワードとなる「人間の欲求」と「メディアのえいきょう」の2つの事柄について内容を整理します。
②論の展開や構成の工夫、表現の仕方を捉え、筆者の考えを読み取る。
表に整理した文章構成「主な内容」「人間の欲求」「メディアのえいきょう」の関係を子供に考えさせます。子供の発言から、その時代の人間の欲求が事例に挙げられたメディアを発達させたことを押さえ、関係を捉えやすくするために、赤チョークで矢印を引きます。
また、「人間の欲求」と「メディアのえいきょう」の内容が「筆者の考え」につながっていることに気付いた子供の発言から、先に色分けしたチョークで矢印をつなげます(「人間の欲求」赤チョーク、「メディアのえいきょう」緑チョーク)。
その他に、主張を伝えたい筆者の表現の仕方の工夫で気付いたことを子供に発表させ、板書します。実際に、子供からは以下の工夫が挙がりました。
・①段落の冒頭文「私たち人間は、一人では生きられません。」
↳他人事ではなく、自分自身のこととして考えさせられる。(赤色系下線の工夫)
↳断言しているため、インパクトが強い。(青色系下線の工夫)
板書を利用した授業の進め方(4/6時間目)
1 本時の学習のめあてを確かめる
それぞれの教材文を読み取ってきたことを基に、2つの教材文を読み比べ、教材文の共通点を整理し、自分の考えとの共通点や異なる点を見付けることを伝え、めあてを板書します。
2 2つの教材文を読み比べ、共通点を整理する
①ベン図を使って共通点を整理します。学習の仕方としてベン図の説明をします。緑色の丸は「メディアと人間社会」のことを、青色の丸は「大切な人と深くつながるために」のことを、そして、自分の考えを赤色で表し、3色で作ります。子供のノートには、自分の考えの枠も楕円に囲むように伝え、3つの楕円を色分けしてベン図を作るように伝えます。
②これまで学習でまとめた文章構成表やまとめた内容を比べたり、2つの文章をもう一度読んだりして、共通点や異なる点を見付け、ベン図に書き込みます。2つの教材文の異なる点は重なりでない部分に書く、共通する部分は重なりのある部分に書くということを通して、筆者の考えの共通点と異なる点を理解させます。このとき、2つの文章のそれぞれの特徴は前時までにノートに書き取ってあることから、一つ一つの図には筆者の考えを書き込む程度とし、この時間は特に共通点に注目して考えるように伝えます。
③2つの教材文の共通点を子供に発表させ、ベン図の真ん中の円の中にまとめます。2人の筆者は、それぞれ異なる題材(メディアとコミュニケーション)から、これからの社会でどのように生きていくのか、メディアや人との付き合い方、人とつながりたいという思いについて述べている点などが共通していることを押さえます。
3 2人の筆者の考えと自分の考えとの共通点や異なる点を見付けて書く
2人の筆者の考えについて、自分の知識や経験から考えたことや共感したこと、異なる感想をもったことなどを基に、自分の考えと比べます。2人の筆者の考えと自分の考えが共通する点は三重囲みの中、1人の筆者の考えと自分の考えが共通する点は二重囲みの中、筆者の考えと異なる自分の考えは「自分の考え」の囲みの中に短い言葉でまとめるように伝えます。
最後に、2人の筆者と自分の考えとの共通点や異なる点を子供に発表させ、子供の考えをベン図に書きます。
4 学習の振り返りと、次時の学習の見通しをもつ
学習の振り返りをノートにまとめます。次時は今回ベン図で整理したことを基に、学習課題のテーマ「これからの社会と生き方」について自分の考えをまとめるという学習予告をします。
構成/浅原孝子