読書指導のアイデア ⑭むかしばなしを楽しむ
14回目のテーマは「むかしばなしを楽しむ」です。むかしばなしは長く親しまれ、リズム感もよく、聞き心地がよいので、いろいろな機会に子供たちに味わってほしいものです。今回は、むかしばなしを聞いて、絵を描いたり、読み比べをしたりしようという提案です。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
むかしばなしを味わおう
「むかしばなし」は昔から語り継がれてきた民話なので、音のリズムがよく、聞き心地もよい作品が多いのです。むかしばなしの読み聞かせをして、子供たちにその場面を想像してもらうような活動をすると楽しいでしょう。
子供たちといっしょに、むかしばなしのリズム感のよさを味わってみてください。本を読むことが苦手な子にとっても楽しめると思います。
読み聞かせの際に、絵本などの絵を見せてもよいと思います。その際は絵も重要になるので、ストーリーと共に絵のチョイスもポイントになります。
むかしばなしの読み聞かせにもう1つ活動を加え、子供たちの好きな場面を想像して、1枚の絵に描くという活動をしてはいかがでしょう。子供たちの独創性が発揮されるのではないでしょうか。
この際、一度聞くだけでは話が分からないという子供もいるかもしれません。子供たちに登場人物や重要場面などを発表させて、板書するということも考えられます。
読み聞かせに選ぶむかしばなしは、シンプルで短いものがよいでしょう。また、絵を描いた場合は、掲示板に「むかしばなしコーナー」などをつくって、掲示すると後々まで楽しめます。
分からない言葉を調べよう
むかしばなしには、今では使われない生活用具やものなどが出てきます。「お堂」や「いろり」など、子供たちにとって身近でないので分かりにくいものがあるかもしれません。そんなときには、それが何に使われていたのかなど、本や事典などで調べてみると、むかしばなしがより楽しめるようになります。
むかしばなしを読み比べよう
『ももたろう』『さんまいのおふだ』『さるかに合戦』『おむすびころりん』などのむかしばなしは、複数の出版社から再話されて出版されています。その本の読み比べも楽しいものです。話の筋が少し違っていたり、場面が違ったり、話の最後が異なっていたりすることがあります。
異なる出版社から出ている同じむかしばなしを読み比べして、どの部分がどのように違っているかを話し合ってみてはいかがでしょう。グループごとにすればやりやすいと思います。その際、どのむかしばなしを比べるかもグループで決めると、子供たちの意欲がアップするでしょう。その後、学級で共有してみてください。
同じむかしばなしでも、出版社によって書名が異なっている場合があります。この活動をするときには、学校の図書館の司書さんに相談してみてはいかがでしょう。複数の本を集めて、協力してもらえると思います。
松岡司書おすすめのむかしばなし
『かさじぞう』
瀬田貞二/再話 赤羽末吉/画
福音館書店/刊
編み笠を作って暮らしているじいさんは、笠を売りに出かけましたが、さっぱり売れません。戻ってくる途中、お地蔵さまに雪が積もっているのを見て、持っていた笠を全部かぶせてあげました。お正月を迎える朝、何かが……。
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『かぜのかみとこども』
山中恒/著・文 瀬川康男/画
フレーベル館/刊
大人たちが田んぼに出かけてしまった村で、子供たちが遊んでいると、見たことのない男がやってきました。男は風のように子供たちを山へと連れて行き、栗や梨などをたくさん食べさせてくれますが、子供たちを置いて去ってしまいました。困った子供たちは……。
松岡みどり司書からのメッセージ
むかしばなしは創作作品と違って、素朴なよさと怖い一面が含まれています。子供たちに読み聞かせをしたり、手渡したりする前に、「ストーリーはどうか?」など、一度確認しておくようにするとよいでしょう。先生が何か引っかかる部分があれば、その作品を選ばなくてもよいと思います。
全部をデリケートに考えることはないのですが、家族の形態も変わってきていますので、学級の子供が悲しい思いをするかもしれないと感じられたときには、配慮してください。
むかしばなしの作品は、先生が子供の頃に触れた作品などを選ばれてもよいと思います。「先生も子供の頃に読んだむかしばなしだよ」と伝えれば、子供たちは興味をもって聞いてくれるでしょう。また、季節に合ったむかしばなしを読み聞かせしたいときは、学校の司書さんに相談してみてください。よい作品を紹介してもらえると思います。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。