ワクワクが広がる!! 見え方が変わると世界が広がる! 〜6年「電気の利用」〜 【理科の壺】
6年の「電気の利用」は、これまで使ったことがない手回し発電機やコンデンサなど新しい教材がたくさん出てきて、それらを使い「電気を確認する」ことが多い単元です。しかし電気は、日常的に馴染みはあっても、それ自体は目に見えないため、なかなか問題をもって考えることが難しいです。小学校の理科は、学習したことを日常に活かすことができるようになることも大切なことです。そこで今回は、遊園地と絡めて電気を学習することをご紹介します。子どもたちが興味を持つ身近な事象と絡めて話し合う授業づくりを考えてみるといいですね。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県公立小学校教諭・森田千智
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.遊園地でワクワク!
6年「電気の利用」では、発電や蓄電、電気の変換について学習していきます。私たちの身の回りにもたくさんの電気が使われているので、子どもたちの生活と繋げて考えやすい単元です。しかし、子どもたちが問題意識を持続できるような学習にするためには、導入での「楽しそう!」「おもしろそう!」という気持ちがとても大切です。
そこで今回は、電気が使われている遊園地の遊具を子どもたちと見ることからスタートしました。先生が実際に行った時の映像を見せ、「どこに電気が使われている?」と問いかけると、「え‼ こんなところにも?!」「もしかしてこの音楽も?!」と、遊園地に行ったことのある子どもも新たな発見をします。映像を見た後に、遊園地でのエネルギー使用量や遊具ごとの消費電力量、家電製品の消費電力量の資料などを提示しました。子どもたちは、それらの資料を基に「遊園地では、たくさんの電気が使われているけれど、このまま続けていて大丈夫?」という問題を見いだしました。
日常生活と繋げて興味を広げていくことはとても良いことです。ですが、さらにワクワク・ウキウキして特別感のある学習にすることで、子どもたちの意識が高まる授業を始めましょう!
2.遊園地を徹底分析!問題意識を持続させよう!
学習が進むにつれて、「最初は楽しかったのに…」「なんだか難しい…」と、子どもたちも先生自身も感じることはありませんか。最初の楽しさや興味を持続させるために、学習の途中で「遊園地ではどうだろう?」と、最初に見いだした問題に戻るようにしました。
例えば、手回し発電機や光電池を使って、「電気は光・音・熱・動きに変換できること」、「自分で発電できること」を学んだとしましょう。その後、遊園地では、どうなっているのか考える時間をとります。下の表のように、遊園地のアトラクションを光・音・熱・動きに分類していきました。「一つだけではなくて、重なっているものがある!」「三つも変換していたら、たくさん電気を使っていることになるよね。」と、最初に見いだした問題を少しずつ解決していきます。
最初に見いだした問題に立ち返ることを意識することで、子どもの問題意識がぐんと高まり、持続することができます。
3.LEDと豆電球を比べて、LEDが多く使われている理由を解明する!
<30年前>
<現在>
問題意識を持続させるために、30年前のイルミネーションの映像を見て再度問題を見いだしました。30年前は、電球を使っていることを伝えると、「昔は同じような色をしている!」「なんかスカスカしている。」「いつから変わったんだろう。」「こんなに違ったんだ。なんか面白い!」というように、興味が湧いていました。「知らないことを知る」ことは大人でも楽しいですよね。
イルミネーションは、なぜ電球からLEDに変えたのかを調べるために、LEDと豆電球の点灯時間を比べ、考察しました。ICTを活用して結果をまとめました。表とグラフでまとめ、全ての班の結果が手元で見えるようにすることで、結果を比較しやすく、共通点や差異点にも気付くことができます。それが、より妥当な考察に繋がり、多くの子どもが複数の班の結果を基に考察することができていました。
LEDのすごさを知った後、「最初は、イルミネーションは電気を使いすぎているから週に1回が良いと思っていたけれど、LEDは効率良く電気を使っているし、みんなを喜ばせる光だと感じた」と、学習問題と繋げて振り返ることができていました。
4.自分たちでイルミネーションを作ってすごさを実感!
学習を進めていくうちに子どもたちから「イルミを作りたい!」「電気を少なくしたアトラクションを発明したい!」という発言が増えてきました。この意欲は、学習を盛り上げるチャンスです。そこで、理科と総合の学習を繋げて、MESHのIoTブロックとプログラミングで、イルミネーションによるパレードを製作しました。
プログラミングとブロックの組み合わせを作っていく中で、「動かすってこんなに難しいの!」「音と合わせて動きをつけるって大変!」「イルミのパレードってすごい!」ということに気付きました。
電気の利用の単元を通して、子どもたちも先生もワクワク・ウキウキしながら楽しめるっていいですよね!
「楽しそう!」「おもしろそう!」で始まった学習。最後には、先生も一緒に「楽しかった!」「おもしろかった!」「もっと知りたい!」と思える授業をしていきましょう!
イラスト/難波孝
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
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<執筆者プロフィール>
森田千智●もりた・ちさと 神奈川県公立小学校教諭。理科を研究している学校に着任し、研究を進めていく中で、自然事象の見え方が変わり、理科の愉しさを感じるようになる。第5学年で天気の学習をしたことをきっかけに、雲の観察をすることが趣味になった。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。