小6国語「『鳥獣戯画』を読む」板書の技術
今回は、有名教材の「『鳥獣戯画』を読む」です。本単元では、教材文から筆者の書き方の工夫を捉え、日本文化についてその魅力を書いて発信していくことがねらいです。単元の学習の1時間目に単元の見通しがもてるような板書、「問い」を意識させ、「問い」について調べたり話し合ったりしたことが目に見えるような板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立学校教諭・櫛引千恵(せせらぎの会)
単元名 表現の工夫をとらえて読み、それをいかして書こう
教材名 「『鳥獣戯画』を読む」「日本文化を発信しよう」(光村図書出版 6年)
目次
単元の計画(全11時間)
1 学習の見通しをもつ。
2 『鳥獣戯画』の絵を見て、想像したことを発表し合う。
「『鳥獣戯画』を読む」を読む。絵と文章を照らし合わせ、内容を捉える。
3 筆者の『鳥獣戯画』をどう評価しているか、その根拠となる表現を見付ける。
4 筆者は、『鳥獣戯画』の素晴らしさを伝えるために、どのような構想メモを作成したのか、筆者の立場になって考える(相手、目的、論の展開、表現の工夫、絵の示し方)。
5 「調べた情報の用い方」を読み、著作権について考える。
6 学校図書館などで見付けた日本文化についての本から、表現の工夫を見付ける。
7~10 グループで発信する日本文化について調べ、パンフレットにまとめる。
11 各グループのパンフレットを基に交流する。学習の振り返りをする。
板書の基本
〇学習の見通しがもてる板書
単元の最初に学習の見通しがもてると、長い文章を読むこと、調べて書くことの目的が分かり、読んだり書いたりする意欲につながります。この単元では、教材文から筆者の書き方の工夫をとらえ、日本文化についてその魅力を書いて発信していくことがねらいです。
教材「『鳥獣戯画』を読む」を読むにあたり、まず、『鳥獣戯画』及び筆者の高畑勲氏について予備知識をもつことで、文章を読む意欲が増し、読んだときの理解が深まると考えました。そこで、単元の学習の1時間目は、単元の見通しがもてるような板書、教材を読む前の構えができる板書になるようにしました。
〇「問い」を意識付け、問いの追究の後が見える板書
「主体的・対話的で深い学び」には、自ら「問い」をもち、その「問い」を追究していく力を付けていくことが必要です。その力を付けていくために、「問い」を意識させ、「問い」について、調べたり話し合ったりしたことが目に見えるような板書にしていきます。
「問い」を意識させるために、「問い」の黄色いカードを何枚も用意しておきます。子供たちから挙がった問い、学習しながら生まれた問い、教師から投げかけた問いなどから、課題となっている「問い」について「問いカード」を貼って板書し、何を追究するのかを明確にします。
追究した結果は、ホワイトボードに書かせて貼ったり、教師が板書したりして、目に見えるようにします。このようなことを繰り返し行っていくことで、「問い」をもって学習することのよさや楽しさが意識付けられます。さらには、自ら問いをもって学習できる力を付けていくことになります。
板書を利用した授業の進め方(1/11時間目)
1 本時のめあてを確かめる
月日、めあてを板書します。このとき、子供たちにも同じように、月日、めあてをノートに書かせます。
2 2つの教材名とリード文から、学習の見通しをもつ
「◎学習計画」と板書し、リード文を読みます。
高畑さんの「『鳥獣戯画』を読む」という文章から表現の工夫を学ぶこと、学んだことを生かして、日本文化のすばらしさを伝える文章をパンフレットに書いて発信していくことを確かめます。確かめたことを板書し、学習の見通しをもてるようにします。
3 日本文化には、どのようなものがあるかを思い起こす。
「日本文化」には、どんなものがあるかを問います。
子供の挙げた日本文化を板書し、最後に『鳥獣戯画』と書きます。『鳥獣戯画』も日本文化の1つであること、その『鳥獣戯画』について、高畑勲さんが発信している文章が、「『鳥獣戯画』を読む」ということを確かめます。
4 『鳥獣戯画』とは何か、筆者の高畑勲さんとはどのような人かを調べる
『鳥獣戯画』とは何か、筆者の高畑勲さんとはどんな人か、「問いカード」を貼って、2つの問いを板書します。2つの問いについて、文章を読む前に、辞書、鳥獣戯画についての本、タブレットで調べる学習を行い、予備知識をもたせます。この「『鳥獣戯画』を読む」という文章は、この2つの予備知識により、特に、筆者の高畑勲さんがどのような人か知ることにより、読む意欲が格段に高まると考えるからです。
5 調べたことを交流し、「調べたことボード」に書いて発表する
個々が調べたことをグループで交流し、「調べたことボード」に書かせ、黒板に貼り、発表させます。
6 題名「『鳥獣戯画』を読む」について考える
題名について、「鳥獣」「戯」「画」について、辞書で調べる活動を行います。
調べて分かった意味を板書します。「鳥獣」は、「鳥やけもの」。「戯」は、「たわむれる。あそび。」「画」は、「絵」。
すると、『鳥獣戯画』は、「鳥やけものが遊んでいる絵」と解釈されます。
題名に戻り、高畑さんは、「絵」なのに、なぜ、「『鳥獣戯画』を読む」という題名にしたのかを問い、「読む」を辞書で調べさせます。すると、「読む」には、文字を声に出したり見たりするだけではない意味が、他に4つほどあることに気付くことができます。それらの意味のうち、高畑さんの「読む」は、どれに該当するか、当てはまる意味を話し合い、板書します。
すると、「高畑勲さんは、『鳥獣戯画』をどのように読んだのか。」という問いが生まれてきます。次時は、その問いについて考えていくことを確かめます。
7 本時の振り返りを書く
板書を利用した授業の進め方(3/11時間目)
1 本時のめあてを確かめる
月日、題名、筆者を板書します。前時に挙がった問いを確かめ、「めあて」として板書します。子供たちにも同じように、ノートに書かせます。
2 高畑さんは、『鳥獣戯画』をどう評価しているかを数値で表す
高畑さんは、『鳥獣戯画』をどう評価しているか、最高のレベルを5とすると、レベルいくつの数値で表せるか、数値で表すことを提案し、数値とその理由を挙げながら話し合います。黒板にも、数字を書き、子供たちから挙がったレベル5、4の数値に赤丸を付け、高畑さんの文章には、『鳥獣戯画』を絶賛する言葉や表現が多く使われていることに気付かせます。
3 評価の根拠となる表現を見付け、付箋紙に書かせる
そこで、「レベル5や4の高評価」の根拠となる表現を段落ごとに見付けて付箋紙に書かせます。その際、1枚の付箋紙には、1つの表現について書かせるようにします。こうすることで、各段落にいくつの表現があるか、付箋の枚数で分かるからです。
見付けた表現について、子供が書いた付箋紙を段落ごとに黒板に貼って整理します。
さらに、それぞれの段落の表現から、高畑さんの評価のキーワードとなる表現を赤チョークで板書します。
4 段落の⑧に書かれていることを確かめる
各段落の評価の表現を貼って整理すると、⑧には、付箋紙がないことに気付きます。そこで、⑧には、何が書いてあるのか、「問いカード」を貼り、問いを板書します。
⑧には、『鳥獣戯画』のことではなく、絵巻物のことについての説明と評価が書かれていることを確かめ、評価のキーワードを板書します。
5 高畑さんの『鳥獣戯画』の評価レベルから、次の問いへつなげる
本時の学習から、高畑さんの『鳥獣戯画』への熱い思いとその思いが表れた表現を振り返り、次の問いへつなげていきます。
高畑さんは、『鳥獣戯画』のすばらしさを伝えるために、どのような構想メモを作ったのか。生まれた問いを板書し、さらに、構想メモの柱になることを確かめて板書します。
次時は、この問いについて考えていくことを確かめます。
6 本時の振り返りを書く
構成/浅原孝子