小5社会「工業生産を支える貿易や運輸」指導アイデア
執筆/北海道札幌市立宮の森小学校教諭・栗原聡太郎
編集委員/文部科学省教科調査官・小倉勝登
北海道札幌市立山鼻小学校校長・佐野浩志
目次
年間指導計画
・国土の広がり
・国土の地形と気候の概要
・低い土地のくらし
・高い土地のくら
・あたたかい土地のくらし
・寒い土地のくらし
・米づくりの盛んな地域
・水産業の盛んな地域
・日本の工業生産と工業地域の特色
・自動車工業の盛んな地域
・工業生産を支える貿易や運輸
・放送などの産業とわたしたちのくらし
・情報を生かして発展する観光業
・情報を生かして発展する販売業
・情報を生かして発展する運輸業
・国土の自然災害
・私たちの生活と森林
・公害からくらしを守る
目標
我が国の工業生産について、交通網の広がり、外国との関わりなどに着目して、地図帳や地球儀、各種の資料で調べてまとめ、貿易や運輸は、原材料の確保や製品の販売などにおいて、工業生産を支える重要な役割を果たしていることを理解できるようにするとともに、主体的に学習問題を追究・解決しようとする態度を養う。
評価規準
知識・技能
①交通網の広がり、外国との関わりなどについて、地図帳や地球儀、各種の資料で調べて、必要な情報を集め、読み取り、貿易や運輸の様子を理解している。
②調べたことを文などにまとめ、貿易や運輸は、原材料の確保や製品の販売などにおいて、工業生産を支える重要な役割を果たしていることを理解している。
思考・判断・表現
①交通網の広がり、外国との関わりなどに着目して、問いを見いだし、貿易や運輸の様子について考え、表現している。
②工業生産と貿易や運輸の働きを関連付けて貿易や運輸の様子を考え、適切に表現している。
主体的に学習に取り組む態度
①工業生産を支える貿易や運輸について、予想や学習計画を立て、学習を振り返ったり見直したりして、学習問題を追究し、解決しようとしている。
学習の流れ(5時間扱い)
問題をつくる 1時間
- 日本で製造された自動車が世界中に運ばれていることや自動車の燃料となる原油が遠くの国から運ばれていることから日本の貿易の様子について話し合い、学習問題をつくり、調べる計画を立てる。
(学習問題)
日本は外国とどのような貿易を行っているのだろう?
追究する 3時間
- 日本の輸入、輸出の様子について資料などを用いて、必要な情報を集め、読み取り、日本の貿易の様子を調べる。
- 原材料や工業製品がどのような輸送手段で運ばれるのかについて、資料などを用いて、必要な情報を集め、読み取り、運輸の様子を調べる。
- 外国の自動車部品工場の停止が及ぼした日本工業生産への影響を考えることを通して、貿易や運輸の役割を話し合う。
まとめる 1時間
- 日本の貿易や運輸の様子について調べたことを輸入と輸出が比較できる表にまとめ、日本の貿易や運輸の特色や役割について文章にまとめる。
問題をつくる
日本で製造された自動車が世界中に運ばれていることや自動車の燃料となる原油が遠くの国から運ばれていることなどから、日本の貿易の様子について興味・関心をもち、日本はどんな製品を輸出し、どんな物を外国から輸入しているかを予想し、学習問題をつくり、学習計画を立てる。(1/5時間)
導入のくふう
前単元「自動車をつくる工業」の学習とのつながりを大切にして、外国で使われている日本産の自動車の資料や、燃料の輸入先などの資料を提示する。「つくられた自動車がどこに運ばれるのか?」「車を動かす燃料がどこから運ばれるのか?」「日本でつくられた他の製品はどこに運ばれるのか?」「反対に日本には、どんな物が運ばれてくるのか?」などさまざまな視点からの問いをもつことができるようにし、日本と外国との貿易の様子について関心をもたせていく。そして、「他の製品はどうなっているのか」「どのように運ばれているのか」など子供のさまざまな視点を生かし、学習問題を設定していく。
1時間目
日本で製造された自動車が世界中に運ばれていることや自動車の燃料となる原油が遠くの国から運ばれていることから、日本の貿易の様子について話し合い、学習問題をつくり、調べる計画を立てる。
看板が日本語じゃないから外国の道路ではないかな。
日本の自動車が写っているよ。外国でも日本の自動車が走っているんだね。
日本で製造された自動車はどこに運ばれているのかを調べてみましょう。
世界中に日本の自動車が運ばれているんだね。
南アフリカにも運ばれているよ。ずいぶん遠いところにも運ばれているんだね。
船で運んでいるのではないかな?
これは、日本が原油を輸入している国と輸入の割合を示した資料です。自動車が動くための燃料はたくさん外国から輸入しているのですよ。
燃料がないと自動車も走らないし、他の製品もつくれないね。外国から輸入してばかりで大丈夫かな?
自動車以外の日本でつくられた他の製品はどうなっていると思いますか?
他の製品も外国に輸出されていると思います。例えば、テレビとかゲームとか機械は日本でつくって外国に売っているのではないかな?
日本のゲームやカメラが外国でとても人気だってことを聞いたことがあるよ。
ゲームとかならば、飛行機で運べるね。
飛行機で運べば、すぐに届けられるしね。
運ぶ方法にもいろいろ理由がありそうですね。反対に日本に運ばれてくる製品にはどのようなものがあるでしょうか?
外国からも同じように機械が運ばれてくると思うよ。外国製のものは安いってお家の人が言っていたよ。
洋服は外国から輸入していると思うよ。服のタグに「中国製」「ベトナム製」などと書いてあることもあるよ。
予想がたくさん出てきましたね。日本と外国はどのような貿易をしているのでしょうか? みなさんの立てた予想をはっきりさせるために調べてみましょう。
日本は外国とどのような貿易を行っているのだろう?
まずは、何から調べていきますか?
何を輸出していて、どのような物を輸入しているかを調べたいな。
どうやって運んでいるのか、運び方も調べないとね。
では、日本がどのような物を輸入、輸出しているかをはっきりさせて、その後、物の運び方も調べていきましょう。
追究する
子供と作成した学習計画を大切にして調べ活動を行う。2時間目には教科書に記載の日本の輸入、輸出の資料を読み取る。その際、輸出の資料を先に読み取り、機械類を輸出していることを捉えられるようにする。そうすることで、日本の輸入の特色について子供たちが自然と着目できるようになる。3時間目には原材料や工業製品の輸送のされ方を調べる。子供にとって貨物の大きさはなかなかイメージすることができないので、NHK for schoolなどの動画資料を活用していきたい。4時間目には、貿易相手国の社会情勢が日本国内の工業生産に影響を及ぼす意味を考える。そうすることで、貿易や運輸が工業生産に果たす役割を捉えられるようにしていく。(2、3、4/5時間)
「対話的な学び」を生むくふう
4時間目には貿易相手国の社会情勢が日本国内の工業生産に影響を及ぼす意味を考える。そうすることで、原料の輸入を外国に頼っていること、外国で生産された部品を輸入して国内で組み立てて製品をつくることの問題点が浮き彫りになっていく。このような外国との関わりに着目して、社会的事象の意味を考えることで、貿易や運輸が工業生産に果たす役割を捉えられるようにする。
2時間⽬
日本の輸入、輸出の様子について資料などを用いて調べ、必要な情報を集め、読み取り、日本の貿易の様子を理解する。
日本がどのような物を輸入、輸出しているかを調べ、はっきりさせていきましょう。
やっぱり自動車が多いね。電気機器や精密機械も日本から輸出されているんだね。
日本の製品は高い技術でつくられ、信頼されているから外国でもほしいと思う人がたくさんいるんだね。
原油、天然ガス、鉄鉱石などの原料が多いね。それを使って製品をつくっているんだね。
外国製の安い機械も輸入しているんだね。外国から部品を輸入することもあるみたいだね。
この資料を見てごらん。
原油、天然ガス、鉄鉱石などの原料はほとんど外国から輸入しているんだね。
原料をこんなに外国に頼っていたら、困る問題もあるのではないかな?
3時間⽬
原材料や工業製品がどのような輸送手段で運ばれるのかについて、資料などを用いて調べ、必要な情報を集め、読み取り、運輸の様子を理解する。
日本はどのようにして原料や製品を運んでいるのかを調べましょう。
船やトラックで運ぶことが多いね。鉄道や飛行機で運ぶよさもあるね。それぞれの運び方のよさを整理してみよう。
4時間⽬
外国の自動車部品工場停止が及ぼした日本工業生産への影響を考えることを通して、貿易や運輸の役割を考える。
イラスト/栗原清、横井智美