小5国語「注文の多い料理店」板書の技術
今回の教材は、有名な物語文の「注文の多い料理店」です。本単元のめあては、「物語のおもしろさの秘密を見付け、伝え合う」です。そのため、おもしろさの秘密を見付けることができるような板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂
教材名 「注文の多い料理店」(東京書籍)
目次
単元の計画(全10時間)
1 全物語を通読し、初発の感想を書く。
2 さかのぼり学習 「スイミー」 を行う。
3 場面分けをし、見出しを付ける。
・不思議な世界の入り口と出口を見付け、物語の構成を捉える。
4 作品のおもしろさを見付ける。
・分類する【人物像・戸・表現の効果・主題】
5 作品のおもしろさの秘密を伝える①
・「二人の紳士」の人物像を読み深める。
6 作品のおもしろさの秘密を伝える②
・戸に書かれた言葉の2通りの意味を考える。
7 作品のおもしろさの秘密を伝える③
・音、色、たとえなど、表現の工夫を見付ける。表現の効果。
8 作品のおもしろさの秘密を伝える④
・主題(作者の工夫)
不思議な世界のクライマックスから現実世界にもどってきたときのおもしろさを見付ける。
9 振り返り
・物語のおもしろさを伝え合い、感想を交流し合う。
10 交流したことをノートにまとめる。
板書の基本
本教材は、「現実の世界、不思議な世界、現実の世界」を行き来するファンタジーの構造をもつ物語です。作者による工夫を凝らした構成や展開により、子供は戸の奥へ奥へと進んでいく期待感を味わいながら読み進めることができる作品となっています。
物語の構成や展開のテンポのよさに加え、それを支える優れた表現をたくさん見付けることができます。「おなかにお入りください」「すぐ食べられます」など2通りの意味に解釈できるような「戸」に書かれた言葉、「白い瀬戸」「黒ぬり」「金文字」など色彩を使った表現、「ザワザワ」「カサカサ」などの擬声語の多用、「白くまのような犬」「くしゃくしゃの紙くずのような顔」などの比喩表現が見られます。
これらの表現の効果を考えることで、子供たちは、楽しんで読み進めることだけでなく、作者が表現の工夫にどのような意図(秘密)をもっていたのかについて考えを深めることができる作品となっています。板書でもそのような表現に注目できるように色チョークを使って書いたり、強調したりするようにしました。
■強調の一工夫
授業において、キーワードになる言葉や強調したい言葉は、「囲む」ことで子供も一目で気が付けるようになります。囲み方も様々です。吹き出しにしたり、四角で囲んだり、チョークの太さを変えたりしています。
■吹き出しで分かりやすく
登場人物や、子供たちの意見を書くときに、吹き出しの中に書くことがあります。チョークの色使いも工夫することで、より整理された板書になります。自分の中で色のルールを決めておくと、迷うことなくスムーズに書けるようになります。
また、最初に書くことの多い「めあて」や最後の「まとめ」は、毎回同じ色で囲むことで、子供たちがノートに写す際も悩むことなく書き写すことができるようになります。
板書のコツ(3/10時間目)
板書のコツ①
今回のめあては「物語の構造を深めよう。」です。「めあて」に構造という言葉が出てきたことで、子供たちは辞書で「構造」という言葉を調べたり、自分なりに考えたりします。そして、構造は「組み立て」「作り上げる」「つくり」という意味があると確認し、「はじめ」「なか」「おわり」という構成について、「山場」はどこなのかなど、この物語の「設定」について改めて確認することができました。
板書のコツ②
その後、場面分けを行いながら、それぞれの場面にみんなでアイデアを出し合いながら「題名」を付けていきました。そこで決まった題名が、
1 山奥で困った二人の紳士
2 不思議な料理店に期待している紳士
3 続くとびらをあやしむ紳士
4 注文の意味に気づいた紳士
5 ぎりぎりで助けられた紳士
6 レストランから脱出したが顔がぐしゃぐしゃの紳士
です。
1、2、6場面を短冊に書くことで、動かすこともできるので、板書のどこに貼るとよいのか、子供たちに聞きながら板書に表すことができました。また、吹き出しの「黄色」は現実の世界、「青色」は不思議な世界と、吹き出しの色を変化させることで視覚的に分かりやすくすることにしました。それにより「ファンタジー」の始まりや終わりを意識する子供たちも出てきました。すると、「白い犬」も作者のしかけではないかという意見も出てきたので、板書していきました。
教師が、物語文の「構造」について教えこまなくても、子供たちが自ら発見する姿は何度も見ることができます。
板書のコツ(5/10時間目)
板書のコツ①
「ノートにめあてを書きましょう」と伝えました。学級としての「めあて」と、本時の課題に対するそれぞれの「めあて」をノートに書く時間を設けています。「めあて」を書くことで課題に対してどのように取り組んでいくのか、自分の学習への姿勢を明らかにすることを大切にしています。すると、
「自分のめあては中心人物について考えようです」
「自分のめあては紳士の人物像について考えようです」
「二人の紳士について深めようです」
「自分のめあては二人の紳士がどんな人物か考えようです」
などの意見が出てきたので、めあての横に黄色のチョークで板書しました。
めあての迫り方として、「話す・聞く・書く」の技術的な「めあて」を掲げている子供と、教材に向かう「めあて」を発表する子供がいます。ピンク色のチョークの内容は「話す・聞く・書く」につながる「自分のめあて」です。このように区別しながら板書するようにしました。
板書のコツ②
「二人の紳士ってどんな人物ですか?」と発問しました。この発問に対しての意見はピンクの丸の中に書くようにしました。そのなかで、「性格の悪い主人公って初めて」という意見が出てきたので、ピンクの吹き出しの中に書くと、中心人物ってどういう特徴なのか、ということについて話題が変わり、「中心人物は一番変化している人物」という意見が出てきました。
「変化について僕が思ったことは、最初はそんな余裕な顔をしていたけど、最後になって紙のようにくしゃくしゃになったって書いてあるじゃないですか? 最後の6場面の132ページの後ろから2番目。しかし……って書いてあるから、たぶんこういうところが変化だと思いました。だから罰が当たった。動物たちを殺して自分たちのことを考えていたからレストランにも連れていかれたと思いました」
という「中心人物」の「変化」に注目する子供も出てきたので、四角で囲むことで、その部分についてみんなで考えられるような「きっかけ」を意図的に作りました。
授業の後半では、「二人の紳士」の顔が戻らないという終わり方について考えていくなかで、作者に迫っていくことにしました。
すると、「注文の多い料理店を読む人に続きを考えてもらう」「罰みたいな」「最後に罰が当たった」「作者は、自分の行いを気付かせるために、宮沢賢治さんはしたと思いました」「二人の紳士の行動が悪いって気付くためです」など意見が出てきたので、水色で囲むことで「二人の紳士」の人物像と板書でも比較しながら、作者の意図(主題)に迫っていくことができました。
板書のコツ③
単元での付けたい力が「おもしろさの『ひみつ』を伝えることができる」であり、「おもしろさの『ひみつ』」という言葉を用いることで、作者意識を子供がもてるようにしています。子供がただ「おもしろさ」を味わうのではなく、根拠を本文より見付けながら、その「おもしろさ」には、作者のどのような意図(秘密)が込められているのか、またその効果について考える学習を行うことを通して、より深く味わうことができる作品だと考えているからです。
構成/浅原孝子