小1国語「うたに あわせて あいうえお」板書の技術
今回の教材は、「うたに あわせて あいうえお」で、1年生の最初の学習になります。入門期の学習の第一歩として、「あいうえお」は、教科書の内容と同じになるように板書していきます。また、この時期に、黒板を使って、学習のしかたを丁寧に教えます。そのような板書の工夫を紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立小学校教諭・並木知子(せせらぎの会)
教材名 「うたに あわせて あいうえお」(光村図書 1年上)
目次
単元の計画(全2時間)
1 「うたに あわせて あいうえお」を音読する。
2 「あ」「い」「う」「え」「お」の書き順や字形の確認をし、言葉集めをする。
板書の基本
〇教科書と同じように書かれる板書
入学したばかりの1年生は、「国語ってどんなことを勉強するのかな」と、大きな期待をもって教師の話を聞きます。そして、教師がチョークで黒板に書く字や貼られる挿絵、カードなどをいっしょに見たり読んだりしながら、学び方を身に付けます。
入門期の学習の第一歩として、「あいうえお」は、教科書の内容と同じになるように板書していきます。教科書と合わせながら黒板をよく見て学習すると、正しく丁寧に字が読めたり書けたりできるようになり、楽しく学べることに気付かせます。
〇学習のしかたが学べる板書
入学して間もないこの時期に、黒板を使って、学習のしかたを丁寧に教えます。
黒板の右側には、日付・題名・めあてを書きます。子供は、教師が書く字が手本となりますので、字の形やとめ・はね・はらいに気を付け、チョークの音を響かせながら1画1画はっきりと丁寧に書いていきます。そして、教師といっしょに、日付・題名・めあてを声に出して読むことを習慣化させます。
〇言葉がたくさんあることに気付く板書
五十音の基本である「あいうえお」の学習は、ひらがな、かたかな、さらには漢字と、これから続く文字学習を楽しく充実したものにしていくうえで大切です。ここでは、様々な方法で読み方を工夫し、言葉のまとまりや言葉の響きに気を付けて音読させます。また、各行の頭に「あ」「い」「う」「え」「お」が付く言葉を見付けさせ、言葉を集める学習もします。これらの言葉遊びを通して、声に出して読むことの楽しさや1つの音からたくさんの言葉がつくられることに気付く力を育てます。
板書を活用した授業の進め方(1/2時間目前半)
1 題名とめあてを読み、学習の見通しをもつ
題名「うたに あわせて あいうえお」と「たのしく よもう。」というめあてを板書し、本時の学習の見通しをもたせます。
2 「あ」「い」「う」「え」「お」を読む
「あ」「い」「う」「え」「お」を1文字ずつ意識できるように、黒板の掲示のしかたを工夫します。
①「あ」「い」「う」「え」「お」のひらがなカードの掲示
「あ」「い」「う」「え」「お」のカードを黒板上部に掲示します。カードは、書き順の1画目を赤色で示してあります(「おけいこノート」などの1画目の書き順の色と合わせます)。教師は、「あ」「い」「う」「え」「お」の文字を指さしながら、ゆっくりはっきりと発音します。そして、教師の指さす文字を見ながら、教師の後に続き、1文字ずつ発音させ、言葉によって発音が違うことに気付かせます。
②口の形の絵の掲示
ひらがなカードの横に、男の子の口の形の絵を掲示します。「あ」「い」「う」「え」「お」の文字によって、それぞれ口の形が異なることに気付かせます。絵と同じ口の形を意識させ、「あ」から1文字ずつゆっくり発音させます。口の開け方に気を付けて発音すると、はっきりと読めることを意識付け、「くちのあけかた」のカードを貼ります。
※癖のない「あいうえお」が発音できるように、短く切った「あっ」「いっ」「うっ」「えっ」「おっ」や、長く伸ばした「あー」「いー」「うー」「えー」「おー」など、口の形に気を付けて、様々な読み方を体験させると学習意欲を高めることができます。
板書を活⽤した授業の進め⽅(1/2時間目後半)
1 「うたに あわせて あいうえお」を読む
「あいうえお」の発⾳に慣れてきたところで、教科書を⾒ながら、次の順序で学習を進めます。
①挿絵から様⼦を想像し、範読を聞く
○ひらがなカードの下に、カードとペアになっている挿絵を、貼っていきます。それぞれの挿絵のかえるの様⼦から、気付いたことを⾃由に想像させます。楽しく想像がふくらんできたところで、教科書を⾒ながら範読を聞かせます。
○範読を聞いた後に、「あ」「い」「う」「え」「お」の順序でうたが進んでいること、うたの最後が「あいうえお」の⾔葉で終わっていることに気付かせ、ひらがなカードの下に、「あいうえお」の短冊を貼ります。
②教師の範読に合わせて読む
挿絵を黒板下部にずらし、真ん中の位置に教材文を板書します。子供といっしょにゆっくり音読しながら、ひらがなカードの下に文節ごとに板書します(「あいうえお」は短冊で掲示したまま)。「あ」「い」「う」「え」「お」の順に、本文を文節で区切って範読します。範読に続けて、文節ごとにゆっくり音読させます。初めのうちは、黒板を見ながら声を合わせて読ませますが、慣れてきたら、黒板に貼ったピンクのシート(2枚)をはがし、教科書の持ち方や口の開け方、読む姿勢に気を付けることを指導し、教科書を見ながら音読させます。
※「教科書の持ち方」や「読む姿勢」については、教師自身が具体的に手本を示すことが効果的です。また、教室の『教科書の持ち方』や『読む姿勢』の掲示物を参考にさせたり、タブレット端末を活用して大型画面で提示したりすることもできます。
③声の大きさに気を付け、リズムよく読む
張り切りすぎて、どなり声で読むことのないように、教室掲示の『こえのものさし』などを活用して「声の大きさ」を意識させるようにします。
「あ」の字の学習では、唱え歌の各行頭に「あ」の字が並んでいることに気付かせ、「あ」を赤チョークで囲み、印象付けます。「あかるい」と「あさひだ」も音の数が同じであること、「あ」の口の形は大きく開いていることなどを確認させます。「い」「う」「え」「お」についても、同じように学習を進めます。唱え歌から、「あ」「い」「う」「え」「お」いずれも同じリズムであることなどに気付かせ、楽しく読ませます。
④さまざまな読み方で音読する
○飽きずに楽しく音読できるように、様々に音読のしかたを工夫して練習させます。
・声の大きさの工夫・・・・大きい声、ひそひそ声、となりの友達に聞こえる声 など
・かけ合いの工夫・・・・・・教師と子供、男子と女子、列ごと、誕生月のまとまりごと など
・声の表情の変化・・・・・・笑いながら、うれしそうに、泣きながら など
・リズムに気を付けて・・手を叩きながら、ゆっくり、早口で など
○言葉を隠して、クイズのように音読を楽しむこともできます(「い」「う」「え」「お」も同様にして音読します)。
例1・「あいうえお」の短冊を裏にして、「あいうえお」の言葉を暗誦し、声に出して楽しむ。
例2・「あかるい」「あさひだ」の頭の文字「あ」だけを残して、続きを声に出して楽しむ。
板書を活⽤した授業の進め⽅(2/2時)
1 本時のめあてを確認する
〈「あ」「い」「う」「え」「お」ではじまることばをみつけよう。〉というめあてを板書し、本時の学習の見通しをもたせます。
2 「あ」「い」「う」「え」「お」の字を書く
言葉集めの前に、「◎かこう」と板書し、以下の手順で「あいうえお」の字の練習をさせます。
①黒板の左上部にひらがなカードを横に5枚掲示し、赤色のところが1画目であることを伝えます。教師は指の動きに合わせて、「左から右に」「上から下に」など、筆順を伝えながら、子供にはいっしょに「そらがき」をさせます。
②教科書22ページから24ページの「あ」「い」「う」「え」「お」の文字を人差し指でなぞらせます。
③「姿勢」と「鉛筆の持ち方」を確認し、書く準備をさせます。
※『姿勢の唱え歌』と『鉛筆の持ち方唱え歌』を教室に掲示し、学習に生かします。教科書14・15ページを見返したり、タブレット端末で教科書に載っているQRコードを読み取り、大型画面で映し出したりすることもできます。
④1マスが、4つに分かれることを知らせ、「1のへや」「2のへや」などと名付けます。書き順が分かるように色を変えてカードに書き、黒板に縦に5枚貼ります。
⑤教科書25ページの1行目と2行目の「あいうえお」の文字を、書き順を確かめながら鉛筆でなぞらせます。3行目は、手本をよく見て自分の力で書くことを伝えます。
練習シート〈右利き用〉
下のような練習シートを用意すると、早く書けた子供が、繰り返し練習できます。
練習シート〈左利き用〉
左利きの子供には、配列を変えたプリントを準備すると、子供は手本をよく見て書くことができます。
3 言葉集めをする
教科書25ページの下部に載っているひらがなを発音させ、文字が集まれば、言葉ができることを確認させます。「あ」「い」「う」「え」「お」で始まる言葉を作って発表させ、それぞれのカードの下に板書します。2文字の言葉に限定せずに、3文字、4文字以上の言葉も板書します。音の数ごとに整理し、文字数が違う言葉がたくさんあることを視覚的にも理解させます。学習していないひらがなを使っている言葉も板書し、読み方を教え、声に出して読ませます。
※集めた言葉を使って、自分たちの「うたに あわせて あいうえお」をつくることもできます。
構成/浅原孝子