小2 国語科「わたしはおねえさん」 全時間の板書例&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小2国語科「わたしはおねえさん」(光村図書)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末の活用例等、授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/京都府京都市総合教育センター指導室指導主事・吉田夏紀
執筆/京都府京都市立大枝小学校・山本嘉紀
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、身近なことを表す語句の量を増やし、語彙を豊かにしていく力、登場人物の行動を具体的に想像して読む力、自分の体験を結び付けて読み感想をもつ力を育てていきます。
「わたしはおねえさん」では、学習する児童と同じ学年の女の子「すみれちゃん」が登場します。すみれちゃんが2年生になり、1年生の子のおねえさんになったことと、児童自身の生活経験を関わらせながら読みます。
すみれちゃんの行動や会話に着目し、なぜそうしたのかなと考えたり、そのときの周りの様子と結び付けたりして読むことで、すみれちゃんの行動や会話に対して、こう思ったのかもしれないな、ちょっと気持ちがわかるななどと、自分と比べながら自分なりの思いが明らかになってくるでしょう。
そして、心に残ったすみれちゃんの言動から一番心に残ったところを選んで、自分の感想をもてるようにしていきます。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、「すみれちゃんの行動を具体的に想像し、その想像したことと自分を関わらせながら読み、感じたことを感想カードに書く」という言語活動を位置付けます。
「わたしはおねえさん」では、学習する児童と同じ年齢の女の子「すみれちゃん」が中心人物として物語が進んでいきます。1年生の子が小学校に入ってきたことで、2年生のおにいさん、おねえさんになったという共通の経験をもつ児童は、すみれちゃんの行動を想像し、自然と自身の経験とも関わらせながら読んでいくでしょう。
心に残った言葉や文を見つける、書き抜く、自分と似ているところや違うところを考える、自分だったらどうするかを考えるなどの活動を通して読み進めていきます。
それらの学習を経て、感じたことを感想カードに書きます。この言語活動を通して、登場人物の行動を具体的に想像する力、一人一人の異なる体験を結び付けて読んでいく力を付けたいと考えます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 登場人物と児童の共通点や相違点から読みのめあてをもつ
「わたしはおねえさん」の登場人物のすみれちゃんは、学習する児童と同じ2年生です。学習する児童も、すみれちゃんと同じように1年生の子のおにいさんやおねえさんになっていることから、すみれちゃんと同じような生活経験があることも予想されます。
また、一方ですみれちゃんの言動と自分との違いに「なぜ?」という思いも生まれやすいと考えます。その「なぜかな」という思いを引き出すことで、すみれちゃんの行動やそのときの場面の様子などを結び付けて読んでいこうという読みのめあてをもち、児童の主体的な学びへとつなげていきます。
〈対話的な学び〉 友達との対話を通して、自分の考えを十分に話す
本単元では、登場人物と自分を関わらせながら読み、感想をもつことをねらいとしています。
自分と関わらせるためには、登場人物の行動や心情を具体的に想像しておく必要があると考えます。
物語の言葉を手がかりに登場人物の行動や心情を想像します。
その際、想像したことを伝える、伝えた相手との考えの違いに触れることで、より物語の世界を具体的に想像できるようになります。
物語の叙述を手がかりに、登場人物の行動や場面の様子を具体的に想像し、対話を通して自分の想像したことや考えたことを何度も言葉にして考えを確かにしたり、深めたりすることにつなげましょう。
〈深い学び〉 言葉を手がかりに具体的に想像したり、自分と関わらせたりしながら読む
具体的に想像する際、物語の中の叙述を手がかりにしながら想像していきます。
すみれちゃんの行動の理由について、どの文からどう思ったのか、どの言葉に着目したのかを問い返し、児童が言葉から想像したり考えたりしたことを自分の言葉で表現することで、身近なことを表す語句の量を増し、語彙を豊かにする資質・能力の育成につながります。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
(1)交流したい相手を探す時に、目的をもって選べるようにするために
9時間目は、登場人物の行動や心情を想像したことをもとに、自分と関わらせて読んだ感想を交流する時間です。児童の感想がどの視点で書かれたものなのかが一目で分かるようにします。
例えば、登場人物と自分が同じ言動をすると考えて物語を読んでいる場合は赤色、自分とは違うな、自分ならこうするということを考えて物語を読んでいる場合は青色などのように色分けすることで、誰がどの視点で自分と関わらせながら読んだのかが一目で分かるようになります。
一目で分かることで、誰と交流すれば自分と同じ視点で話ができるのか、違う視点で話ができるのかが分かります。一人一人の目的に合わせて、交流する相手を選べるようになります。
(2)全員で全文シートに線を引き、みんなの興味の傾向をつかむ
3時間目は、物語の中で不思議だなと思うことを見つけていきます。それが、4時間目から6時間目の具体的に想像する場面の決定へとつながります。
物語を読み、不思議だなと思うところを共有していく必要があります。
その際、全文が記述された端末上のデータに児童が描画機能を使って線を引いていきます。そうすることで、線を引きながら、クラスのみんなが不思議だなと感じている箇所がどこに集中しているのか、自分以外の人がどこを不思議だなと感じているのかが分かるようになります。
この機能を使うことにより、共有までの速さ、全員が同時に活動できるなどの良さがあると考えます。
6. 単元の展開(9時間扱い)
単元名: 自分とくらべて、かんそうを書こう
【主な学習活動】
・第一次(1時)
①「わたしは、おねえさん」を読んで感想を交流し、学習の見通しをもつ。
・第二次(2時、3時、4時、5時、6時、7時、8時)
② 登場人物などの設定を捉えながら、「わたしは おねえさん」を読む。
③「わたしは おねえさん」を読み、「なぜ」を見つけて線を引く。
④⑤⑥ クラスのみんなが感じた「なぜ」を具体的に想像して交流する。
⑦ 登場人物の行動を具体的に想像したことをもとに、自分の経験と関わらせながら読む。
⑧ 心に残ったすみれちゃんの行動や、一番お気に入りの箇所についてカードに感想を書きまとめる。
・第三次(9時)
⑨ 感想カードを交流し、単元の学習を振り返る。
全時間の板書例、活動例と指導アイデア
1時間目では、「わたしはおねえさん」の文章を読み、感想を交流します。題名から、どんな物語なのか、登場人物がどんな子なのかを想像しましょう。
初めは、教師が範読すると良いでしょう。範読後に、児童一人一人の感想を引き出します。その感想をもとに、今後のめあてを設定するようにします。
例えば、「すみれちゃんは、すてきなおねえさんだなと思いました。」という感想をもった児童がいたとします。その言葉を取り上げて、第2時に「すみれちゃんはどんな女の子かな。」と児童に尋ねることで、物語のすみれちゃんの設定を読み取る活動につなげることができます。
また、「すみれちゃんの行動が自分と違って面白いと思いました。」という感想があれば、第3時の「すみれちゃんの行動の中で、不思議、どうしてだろうと思った箇所を探そう。」という活動につなげることができます。
第1時での感想をきっかけとして、今後の学習活動につなげていくようにしていきます。
すみれちゃんの行動を具体的に想像したり、お気に入りの箇所を見つけたりしていくために、この時間は物語の設定に着目して読んでいきます。
設定とは、作品の時、場所、人物のことです。設定を捉えることにより、中心人物のすみれちゃんがどのような人物なのかがより詳しく理解できるようになります。
物語の冒頭に書かれているすみれちゃんの歌に着目したり、すみれちゃんがどんな女の子だと思ったか、わかったことや感じたことを話し合ったりすることを通して、お話が書かれているのは何月なのか、すみれちゃんとかりんちゃんが一緒に過ごしているのはどこなのか、すみれちゃんは2年生の女の子ということ以外にどんな女の子なのか、これらの設定を探っていきます。
前の時間に「すみれちゃんは、おねえさんになってうれしそう」と言っていたね。どうしてみんなはそう思ったのかな。
すみれちゃんが歌いながら「2年生になって幸せ」と感じているよ。
歌を歌いながら、「おねえさんになって幸せ」と思っているよ。
どうして2年生になったことが幸せなのかな。
もっとすみれちゃんのことを詳しく読んでたしかめたいな。
では、今日は、すみれちゃんはどうして2年生になって幸せと思っているのか、すみれちゃんがどんな女の子なのかを確かめましょう。
すみれちゃんは、ぼくたちと同じ2年生の女の子で、かりんちゃんのおねえさんだよね。
歌を作るのが好きな女の子で、自分の気持ちを歌にしているんだと思うよ。
すみれちゃんは、もともとかりんちゃんのおねえさんだけど、2年生になって1年生のおねえさんにもなったことがうれしいんだと思う。
1年生にやさしい2年生になりたいって思って、この歌を歌っていると思う。
「ちょっぴりえらくて、やさしくて、がんばるもの」って言ってるから。
2年生になったから、頑張ろうって思ってる女の子だと思うよ。
小さい子や1年生にやさしくしたいって思ってる。
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イラスト/横井智美、小野寺裕美
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