小3国語「ありの行列」板書の技術
今回は、「ありの行列」という教材を通して、読んだ感想を書いて、伝え合うという単元です。ここでは、学習の見通しをもつ、文末表現を調べ、筆者の「書き方のひみつ(工夫)」をつかむなどの学習活動を行います。学習の見通しをもつ手がかりとなる板書、文末表現を調べて、書き方の工夫を考える手がかりとなる板書などを紹介します。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立小学校教諭・櫛引千恵(せせらぎの会)
単元名 読んで感想をもち、つたえ合おう
教材名 「ありの行列」(光村図書 3年)
目次
単元の計画(全8時間)
第一次 教材「ありの行列」を読み、学習の見通しをもつ(2時間)
1 教材「ありの行列」を読み、初発の感想を書く。
文章の「はじめ・中・終わり」の組み立てを予想する。
2 感想を交流して学習課題を作り、学習の見通しをもつ。
第二次 文章の構成や論の進め方を、叙述を基に捉える(4時間)
3 「はじめ」「中」「終わり」の組み立てを確かめる。
接続語や指示語に着目して、「中」の論の進め方を確かめる。
4 ウイルソンの研究の内容を、図や絵、動作化などの方法を使って確かめる。
5 文末表現を調べ、筆者の「書き方のひみつ(工夫)」をつかむ。
6 「ウイルソンの研究の進め方」(実験・観察・研究)、「ありが行列を作る仕組み」について、短くまとめる。
第三次 「ありの行列」を読んだ感想を書いて伝え合い、自分の感想と比べる(2時間)
7 文章を読んで理解したことを基に、感想を書く。
8 感想を伝え合い、自分の感想と比べる。学習の振り返りをする。
板書の基本
〇子供が参加する板書
2時間目の感想交流のときに、子供が、付箋紙に書いた自分の感想を、黒板の表の該当する欄に貼ります。このことにより、自分の感想がどの段落のどの内容かを考えたり、感想を一覧したりすることができ、学習課題や学習計画を立てることに役立ちます。
5時間目には、文末表現を調べる学習を行います。子供に1文ずつ分担し、それぞれ、担当の文の文末について板書します。一度に、多くの文について板書できるので、時間の短縮にもつながります。何より、子供たちの学習への意欲が高まります。
〇文末の表現に着目し、新たな気付きを生む板書
筆者の「書き方のひみつ(工夫)」を見つけるために、文末表現に着目させます。
「~ました。」は赤チョークで、「です。」「ます。」は黄色チョークで色分けし、一覧できるようにします。こうすることで、「~ました。」(過去形)は、「ウイルソンの研究の進め方」の説明をするときに使われていること、「~です。」「~ます。」(現在形)は、「ありが行列を作る仕組み」について説明するときに使われていることがわかります。
子供たちにこの「ひみつ」を見つけさせ、文末表現について新たな気付きを生み出せるようにします。「ひみつ」を見つけることは、楽しい学習活動になります。
板書を活用した授業の進め方(2/8時間目)
1 本時のめあてを確かめる
本時のめあて「感想を交流して、学習かだいを作り、学習の見通しをもつ。」を板書します。
2 教師は、表の枠組みを板書し、子供たちは、自分の感想を分類する
表の枠組みを作成し、縦軸に項目を書きます。項目の詳細は、次の通りです。
子供たちには、自分の感想が、どの段落のどの内容のものか、自分の感想の付箋を分類させます。そして、付箋に段落番号と感想の種類記号(?、!、)を書かせます。
3 表の2段目、3段目、1段目の順に、各欄を作成する
表の枠組みができたところで、2段目に段落番号のカードを貼ります。
3段目は、子供たちと各段落の最初の文の文頭を確かめ、板書します。段落1には、「問いの文」があったこと、段落9には、「このように」という言葉を使って、問いの答えが書かれていたことを確かめ、それぞれ、(問いの文)(このように)と黄色チョークで板書します。
1段目には、前時に予想した文章の組み立てについて、段落1に「はじめ」、段落2から段落8に「中」、段落9に「終わり」のカードを貼り、縦に青チョークで区切りの点線を入れます。次時には、文章の組み立てを確かめる学習を行うこと、予想通りであったら、点線を実線に換えることを話し、次時の学習への意欲を高めます。
4 感想の付箋カードを表に貼る
表の4、5、6段目に、それぞれの付箋カードを貼らせます。
※ここに貼った付箋カードは、白紙ですが、実際は、児童の名前、感想、段落番号、感想の種類記号(?、!、)が書かれています。
5 付箋カードを基に感想を交流する
まず、感想の付箋カードが貼られた表を見ながら、「なるほど」「びっくり」の感想が多い段落を見つけます。その段落に書かれていることを確かめたり、付箋に書いた感想を発表し合ったりします。感想が貼られていない段落(2、7)については、その段落の文章を読み、貼られていない理由を話し合うようにします。
次に、「なぜ? 」「もっと知りたい」の欄の感想についても、感想が多い段落を見つけ、その段落に書かれていることを確かめたり、付箋に書いた感想を発表し合ったりします。
最後に、「文章の組み立てや表現方法」に着目した感想について交流します。文章の内容ばかりでなく、書き方にも感想をもつことができるのは、国語の学習の力が積み上げられている成果であることを話し、奨励していきます。筆者の説明がわかりやすいという感想を取り上げ、その根拠となる段落の感想を確かめます。
交流をしながら、課題設定につながる感想については、吹き出しのカードに書いて、貼っていきます。
6 感想を交流したことを基に、学習課題を作る
ありの行列ができるわけについて、「なるほど」「びっくりした」という初めて知った子供の喜びや驚きを受けとめ、ウイルソンさんの研究の過程とその内容をもっと詳しく学習していく課題を作ります。
1つ目は、子供の感想に出てきた「なぞ」という言葉を取り上げ、「ウイルソンさんは、どのようにしてなぞをつきとめたのか。」という課題を作ります。このことを確かめるために、絵や図を使ったり、実際に、ありになって動いてみたりすることを提案し、板書します。
2つ目は、子供の「『はじめ・中・終わり』がわかりやすい」などの感想を取り上げ、「大滝さんは、わかりやすく書くために、どのようなくふうをしたのか」という課題を作ります。そして、「大滝さんの書き方のひみつを見つけよう」と提案し、板書します。
これら2つの学習課題について、読み取ったことを基にして、単元のめあて「読んで感想をもち、つたえ合おう」につなげていきます。
板書を活用した授業の進め方(5/8時間目)
1 本時のめあてを確かめる
大滝さんの説明のしかたの「ひみつ」について、これまでに見つけた「ひみつ」に加え、本時では、学習の手引きにある「〜ました。」「〜です。」「〜ます。」の文の終わり方をヒントに、さらなる「ひみつ」を見つけていくことを提案します。
本時のめあてを確かめて板書します。
2 表を作成し、段落3~段落8のウイルソンの研究の進め方を板書する
前時で学習したことを基に、表の2段目「研究の進め方」を段落と対応させながら確かめ、板書します。
3 表の3段目に文番号を貼る
文番号のカード⑦から㉛を、並べて貼ります。
4 文の終わり方を調べ、各自が黒板に書く
子供たちは、各自の全文シートの⑦から㉛の文について、文の終わり方を調べて、文末をそれぞれ四角で囲みます。
・「ました。」→赤鉛筆
・「です。」「ます。」→青鉛筆
シートの作業が終わった子から、黒板に自分の担当の文の終わりを書いていきます。「ました。」の場合は赤チョークで、「です。」「ます。」の場合には黄チョークで書かせます。
※上の板書写真では、すべて教師が書いていますが、実際は子供が書きます。
5 書き方の「ひみつ」を見つける
表から「ひみつ」を見つけます。すると、次のことがわかってきます。
・「ました。」→「実験」「観察」「考察」「研究」のところに使っている。
・「です。」「ます。」→ウイルソンさんの研究の結果、つまり、「ありの行列ができるわけについて、わかったこと」に使っている。
さらに、「ました。」の主語を調べ、ウイルソンさんが主語のところは、四角で囲みます。他は、ありが主語ということを確かめます。
すると、次のことがわかってきます。
・四角で囲んだ「ました。」は、ウイルソンさんが実験・考察・研究したこと。
・四角で囲まれていない「ました。」は、ありがしたことなので、ウイルソンさんが観察したこと。
表から話し合ってわかった「ひみつ」を整理して板書します。
6 次時の学習課題について、見通しをもつ
次時の学習課題である「ウイルソンさんの研究の進め方」「ありが行列を作る仕組み」を短くまとめるためのヒントを、この表と《見つけたひみつ》の板書から見つけさせます。
すると、「ウイルソンさんの研究の進め方」をまとめるためには、「ました。」で書かれている段落3~6の四角で囲んだ「ました。」(ウイルソンさんがしたこと)の文を中心にして、順番にまとめるとよいことに気付くことができます。
さらに、「ありが行列を作る仕組み」は、段落8をまとめるとよいことに気付くことができます。
そこで、表の一番下「内よう」の欄に、「ウイルソンさんの研究の進め方」「ありが行列を作る仕組み」というカードを貼ります。
本時で学習したことを基に、次時は、「ウイルソンさんの研究の進め方(実験・観察・研究)」「ありが行列を作る仕組み」について短くまとめる学習を行うことを確かめ、見通しをもたせます。
構成/浅原孝子