【相談募集中】知的障害児の図工の学習、どう支援したらいいですか?

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白梅学園大学子ども学部子ども学科教授

増田修治

小学校の特別支援学級で担任をしている先生から、知的障害をもつ児童への図工の支援について、「みん教相談室」に質問が寄せられました。これに答えてくださったのは、白梅学園大学 子ども学部子ども学科教授・増田修治先生。子供の特性への理解が深まる回答と、視点を変えたアドバイスを紹介します。

イラストAC

Q. 自分の意思で作業をするのが難しい子がいます。図工で、どのような支援をしたらいいのか悩んでいます

小学校の特別支援学級(知的)の担任をしています。図工の支援について質問です。

私のクラスには、鉛筆等を持って字を書いたり、何か作業をしたりすること全てに支援が必要な児童がいます。

本人が意思を持って作業をするということは難しいです。

交流学級で図工を学習しています。

今度「運動会の絵」を描きます。交流学級の他の児童のように描くことは難しいなか、どのような支援をしていけばいいのか悩んでいます。(あめ先生・女性・30代)

A. 「運動会を色でイメージ化する」など『共感覚』を活かした教育方法を実践してみてください

1.「共感覚」を知っていますか?

共感覚は人間(哺乳類)の誰でも持っている根本的な感覚で、脳の正常な機能ですが、その働きが意識にのぼるひとは一握りしかいません。

小さい頃、音に色を当てはめた記憶がありませんか?

初めて見る景色に驚き、言葉にできない感情を覚えたことはありませんか?

今は忘れていても、誰しも一度はこのような経験をしたことがあるはずです。

共感覚とは、ある刺激に対して通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚をも生じさせる、一部の人にみられる特殊な知覚現象を言います。

例えば、共感覚を持つ人には、文字に色を感じたり、音に色を感じたり、形に味を感じたりすることがあります。

次の例は、保育園の親からの連絡帳に書かれていたものです。

このところ毎朝保育園へ向かう自転車のうしろで、「まぁーちゃん、寒くなーい?」と聞くと、「わたし、いま、風をたべているのー!!」と言います。「何味?」と聞くと、「今日は…う~ん…レモン味」と言いました。たしか昨日はイチゴ味だったような…。いったい何で味が決まるのかしら? ちょっと不思議!! まなとの会話は楽しいです。  

【参考文献】増田修治(2009)『子どもが育つ言葉かけ―聴きとる・つなげる・ふくらませる 口頭詩をもとにして』/ ひとなる書房(※)(下記リンク参照)

これは、共感覚の事例です。乳幼児期は神経のつながりがまだ未熟なため、目の情報が聴覚野につながったり、耳の情報が視角野につながったりして、音を聞いて色を感じたり、色を見て音を感じたりします。決して嘘をついているわけではないので、「そんなバカなことないでしょ!」と言わないことが大切なのです。

例えば、女性からの声援のことを「黄色い声援」と表したり、香水の香りを「あまい香り」と表現したりします。しかし、声援という聴覚情報が実際に黄色いわけではありませんし、香りが味覚的にあまいというわけではありません。

不思議と日本語の中には、共感覚を表す言葉が存在することに気がつきませんか。

2. 形をとらせるのではなく、色で表現させてみましょう!

2013年版の米国精神医学会(APA)「精神疾患の診断および統計マニュアル(DSM-5)」(※2)では、自閉症の人には共感覚が多いことが報告されています。

長田・藤澤(2009)の研究によると、

「神経生理学の分野でも共感覚が発現するメカニズムに関してさまざまな議論が行われている。中でも魅力的なモデルとして、cross-activation theory が起こるメカニズムとして、新生児期の刈り込み(pruning)の失敗による未分化説がある。生後3ヶ月までの赤ちゃんには、異なる感覚の間に神経結合があり、3ヶ月を過ぎると成長過程において神経経路が刈り込まれる。この経路が残された人に、共感覚が発現するという考え方である。
 この説にはまだ直接の証拠はないが、間接的な証拠はいくつか見つけられている。」

【引用文献】長田典子・藤澤隆史(2009)「共感覚の脳機能イメージング」 (『システム/制御/情報』 Vol.53 No.4 pp.149-154)(※3)

としています。

自閉症の人に共感覚が多いことから、知的障害の子供にも共感覚を持ち続けている可能性は否定できないのではないでしょうか。

ですから、形をとらせるという今までの指導を見直してみたらどうでしょうか。

むしろ、形はどうでもいいので、「運動会を見て、感じたままの色を描いてみてごらん!」などと声をかけてみるのです。

「形をとる」というのは、輪郭線が見えていないと難しいのです。ですから、色をそのまま塗って「運動会を色でイメージ化する」という方向に変えてみるのもよいのではないかと思います。

説明が長すぎると思うかもしれませんが、ぜひ実施してみてください。

色鉛筆で描けないことをどうにかしようとするのではなく、教育方法を子供に合わせて変えてみましょう。これは、実践の方向性として大切なことだと思うのです。


※増田修治(2009)『子どもが育つ言葉かけ―聴きとる・つなげる・ふくらませる 口頭詩をもとにして』( pp.72-74, ひとなる書房)

※2 American Psychiatric Association, Diagnostic & Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed.(DSM-5), (AM PSYCHIATRIC ASSOCIATION PUB, 2013), ISBN: 978-0-89042-554-1

日本語版: 高橋三郎・大野裕 監訳 / 日本精神神経学会監修(2014)『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

※3 長田典子・藤澤隆史(2009)「共感覚の脳機能イメージング」 (p.153, 『システム/制御/情報 = Systems, control and information:システム制御情報学会誌』Vol.53 No.4, pp.149-154)


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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