新たな学年への進学・進級に向けた「習熟度別少人数指導」を実施するには
最終学年への進級を控えた5年生、中学校への進学に期待を膨らませた6年生一人ひとりのために、当該学年の学習内容の確実な定着を図りましょう。ここでは、多様な子供たちの学習状況に対応するための「習熟度別少人数指導」等について紹介します。
執筆/福岡県公立小学校教諭・村上暢崇
目次
習熟度別少人数指導の目的や効果
習熟度別少人数指導を行う目的は、「新たな学習内容の指導」と「既習の学習内容の定着」に分けることができます。いずれの場合であっても、教員1人が指導する子供の数を少なくすることで、子供の活躍の機会がふえたり、教員のきめ細やかな指導が実現したりするなどの効果が期待できます。
「習熟度別少人数指導」は、基本的に次のような手続きで進めます。
- 学習状況の把握
- 学習内容の整理とコースの設定
- 子供への説明と子供によるコース選択
- 習熟度別少人数指導の実施と評価「習熟度別少人数指導」は、チームで実施します。
①〜④の手続きは、関係する教職員全員で進めます。
子供の学習状況の把握
習熟度別少人数指導の効果を高めるには、正確な子供の実態把握が重要です。実態把握には、いくつかの方法が考えられます。
【学習内容の定着度調査を実施する】
かかわりのある内容の問題を数問解かせ、学習内容の定着度を把握します。
【過去に実施した調査から分析する】
これまでに実施した調査結果の中からかかわりのある内容を取り出し、定着度を分析します。
【子供自身に理解度を尋ねる】
かかわりのある学習内容について「自信がある」「どちらとも言えない」「自信がない」等の選択肢を与えて回答させます。
1つの方法で判断するのではなく、いくつかの方法を組み合わせることも有効です。
学習内容の整理とコースの設定
習熟度別少人数指導のコースをいくつか設定し、どのような指導を行うかは、「指導できる職員の数」「子供の実態」等から判断します。
ここでは、3つのコースを設定することを想定して紹介します。
各コースの人数には差がありますが、Aコースの子供には自立した学びを、Cコースの子供にはきめ細やかな少人数指導が実施できます。
このような分布が生じている場合は、一斉指導を行うこと自体が困難ともいえます。特に、Cコースの子供には、次の学年への進級、進学前に丁寧な指導を行いましょう。
コースは3つですが、A1とA2、B1とB2は同じ内容や量の学習を行うコースとして設定することもできます。
子供への説明と子供によるコース選択
各コースには「じっくりコース、のびのびコース、どんどんコース」や「かめコース1、かめコース2、うさぎコース」のように、子供にとってイメージしやすい名前をつけます。
自分に合ったコースを適切に選択する力もとても大切です。丁寧な説明を行った上で、自己判断、自己決定をさせます。初めて「習熟度別少人数指導」に取り組む場合は、事前に保護者に知らせておくことも重要です。
習熟度別少人数指導の実施と評価
【実施の段階】
「計画通りに進んでいるか」を教師間で確認しながら実施します。特に、「学習の効果が高まる」 「活躍の場が保障される」といった少人数のよさは、必ず達成される必要があります。
【評価の段階】
一人ひとりの子供に期待した効果が得られたかを検証することで、「習熟度別少人数指導」全体の評価を行います。
最後に、期待した効果が「得られた理由」「得られなかった理由」を次の視点から振り返り、次回の習熟度別少人数指導に生かします。
- 開始前の実態把握は?
- コースの設定や内容は?
- 子供によるコース選択は?
イラスト/北澤良枝
『教育技術 小五小六』2021年2月号より