小1道徳「めだかのめぐ」指導アイデア

執筆/鹿児島県公立小学校教諭・田村敏郎
監修/鹿児島県公立小学校校長・橋口俊一、文部科学省教科調査官・浅見哲也

使用教材:「めだかのめぐ」(学研教育みらい)

授業を展開するにあたり

道徳科の授業を終えた直後、まだまだ語り足りないと、子供たちが黒板に集まり、「さっきの○○さんの意見ではさあ」と話し始める姿。そんな道徳科の授業を子供たちとつくっていきたいと日々願っています。

そのためには、子供たちが、今日の道徳で何を学んだのかが明確であることと、自分の考えが広がったり深まったりしたという実感をもたせることが大切だと考えています。具体的な手立てとしては、友達と話し合ったことを思考ツールを活用して視覚化し、話合いの足跡を残すようにしました。

すると、自分一人では気付かなかった考えに気付いた子供や、考えていたことを聞いてもらい、賛同を得たり、新たな視点から価値付けされたりすることで自信をもった子供の姿を見ることができました。

今回の授業では、教材「めだかのめぐ」を使って「C よりよい学校生活、集団生活の充実」について一年生の子供たちと考えていきました。学習指導要領解説には、「教師や学校の様々な人々との活動を通して学級や学校全体に目を向けさせ」とあるので、学校全体に目を向けさせるための手立てが必要であると考えました。

そこで、子供たちの話合いの際に「ウェビングマップ」を活用して、学校の好きなところを連想して考えを広げさせていく活動を取り入れました。そして、導入で考えた「学校の好きなところ」と、ウェビングマップを並べて提示することで、道徳科の授業を通して自分の考えが広がったり深まったりしたという実感をもたせるようにしました。

展開の概略

1 自分たちの学校の好きなところを出し合う。

2 本時で考えていきたい学習内容について、確認する。

3 教材「めだかのめぐ」を読んで、主人公の心情を自分との関わりで話し合う。
①場面の状況を確認する。
②黒板消しをきれいにするめぐの気持ち。
③「ふわっとなる」気持ちについて考える。

4 自分たちの小学校の好きなところを話し合い、ウェビングマップにまとめ、分類する。

5 学んだことをふり返り、今日の学習で考えたことを発表し合う。

教材中にある「心がふわっとなりました」という抽象的な表現を具体的に考えさせるために、「ふわっとなるってどんな気持ちだろう」と発問しました。そして、「では、わたしたちの小学校にもふわっとするところはないかな」と発問し、ウェビングマップにまとめさせました。

▼ワークシート(ウェビングマップ)

「学校の好きなところ」について思い付いたことを次々に書かせていきました。子供たちも初めての体験でしたので、例を示しながら「学校の好きなところをお団子に入れて、どんどん増やしていくんだよ」という指示をしました。「好きなところって何があるかな」と考えながら書き進める様子が見られました。

▼実際のイメージマップ例(誤字と文字の向きは修正、ひらがな表記は実際のまま)

実際のイメージマップ例1
実際のイメージマップ例2

子供たちに「こころがふわっとなるところ」を考えて書かせたところ、関連するものを二重、三重に広げて書くことができました。「みんなのえがおが大すき」という記述から、先生や上級生、友達にも視点を広げることができました。

▼感想カード

子供たちが道徳科の授業で学んだことをふり返り、自分自身の成長を実感できるように、学習の感想を書くようにしています。今回の授業では、「学校が楽しいです。もっと楽しく生活できるようにみんなで考えたことが楽しかったです」や「○○(担任)先生、いつも勉強を教えてくれてありがとう」という記述が見られました。

「先生を敬愛し、学校の人々に親しんで、学級や学校の生活を楽しくする」ことができた感想だと感じました。

実際の授業展開

主題名
たのしいがっこう ~ウェビングマップを活用して考えを広げる工夫~

教材名
「めだかのめぐ」

ねらい
心がふわっとなった主人公の気持ちについて話し合う活動を通して、先生や友達、学校を支える人々や学校施設などへの愛着を考えたり、日常の生活から実感したりして、学校生活をよりよくする態度を育てる。

内容項目
C よりよい学校生活、集団生活の充実

ワークシートや感想カードのPDFはこちらよりダウンロードできます
小一道徳学習プリント「めだかのめぐ」

指導の概略(板書計画例)

板書計画例

導入

①水引小学校の好きなところはどんなところですか。

  • 学校の好きなところを出し合い、本時の学習への意欲を高める。

展開1

②めぐはどんなことを心配していただろう。

  • 友達や先生との関わりで学校が楽しくなったことに気付かせるために入学前の不安な気持ちも押さえる。

展開2

③めぐはどんな気持ちで黒板消しをきれいにしているのだろう。

  • 自分の喜びが、他者の喜びや、学校を好きになることにつながっていることに気付かせる。

展開3

④「心がふわっとする」ってどんな気持ちなのだろう。

  • 抽象的な表現をより具体的にするために、日常生活の中でどんなときに心がふわっとするのか、そのときどんな気持ちになるかを問いかける。

展開4

⑤学校生活のどんなときに「心がふわっ」となりますか。

  • ④で具体的になった気持ちを学校生活の中でどんなときに感じるかを想起させ、学校生活の場面と重ねて考えさせる。

展開5

⑥水引小学校の好きなところをどんどん書き込んでみよう。
⑦最初に考えた好きなところと比べてみよう。

  • 学習や話合いを通して新たに気付いたことを確認することで、自分自身の成長を実感できるようにする。

ここがアクティブ!授業展開の補足説明

「学校の好きなところを見付けよう」というめあてで本時の学習を進めました。子供たちが考える「学校の好きなところ」には、休み時間に友達と遊ぶことや学習などが多く出されると予想しました。そこから教師やさまざまな人との関わりや学校全体に目を向けさせるために、教材中の「こころがふわっとなる」に着目しました。

「心がふわっとなるってどんな気持ちなのだろう」と子供たちに発問し、子供たちの日常での具体的な場面を想起させました。そして、「そんな気持ちになるのはどんなときか」について、子供の発言に問いかけを繰り返しながらさまざまな人との関わりにも気付かせていきました。

さらに、友達との話合いを通して考えを広げたり深めたりするために、ウェビングマップを活用しました。子供たちは自分の考えが、友達との話合いを通して、次々に広がっていくことを視覚的に捉えることができました。

また、友達との話合いの中で、友達の考えを新たな考えとして自分の中に取り入れたり、自分の考えに自信をもったりする姿が見られました。最後に導入の際に出し合った意見とウェビングマップを並べて提示することで、この時間での新たな気付きや考えの深まりを実感できるようにしました。

「授業の最初は少ししか分からなかったことが、今日の学習でこんなにたくさんのことに気付けた」と自分の成長を感じることができたと思います。

授業をするうえでの注意点 ・ ポイント解説

子供が考えていることや、友達と話し合って考えがどう変わっていったかを見とるために、ワークシートを活用しています。今回の実践でもウェビングマップという思考ツールを使って、子供たちの考えが広がっていくことを視覚的に捉えさせていきました。

このようなワークシートを活用する際に留意したいことは、なんのためにそのワークシートを使うのかということを明確にしておくことだと考えます。友達の考えと比較するのか、共通点を見付け出すのか、考えを広げていくのかなど、目的に応じてワークシートを活用していくことが大切だと考えます。

私は主に、学習指導要領解説の「道徳科の内容」を参考にして、内容項目ごとにどんな指導が必要なのか、どんなことを考えさせていくのかを踏まえたうえで、授業で活用する思考ツールやワークシートを考えるようにしています。

教科調査官からアドバイス

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・浅見哲也

道徳科の授業は、教材を活用しながら、自己を見つめ、多面的・多角的に考えながら、自己の生き方についての考えを深める学習を行うものですが、それは子供たちに説明してもなかなか難しいものです。しかし、田村先生は、指導の工夫を通して道徳科の学習の実現を図っています。

教材文中の抽象的な言葉をきっかけに、そのときの気持ちを感じ取り、教材から離れて自校について考えていく。誰もが興味をもって話合いに参加しやすい教材活用の利点を生かしつつ、イメージがもてたら、今度は子供の身近な世界で考えられるようにしています。

また、ウェビングマップの活用により、子供一人ひとりの考えを生かしながら、多面的・多角的な見方や考え方ができるようにしています。さらに、導入時と展開の後半を比較することで、自己の考えの広がりを実感できるようにしていることは、教育においてとても重要なことです。

道徳科で指導する内容を理解して効果的な思考ツールを考えるという発想を、ぜひ、参考にしていただければと思います。

『教育技術 小一小二』2020年10月号より

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