「作家の時間」4回目のレッスン ~物語の冒頭を工夫しよう~
連載|ayaya先生のすてきやん通信
書く活動をワークショップ形式で取り組む学習法「作家の時間」。4回目のレッスンは、物語の冒頭の工夫についてです。Instagramでは1万人超えのフォロワーに支持され、多くの女性教師のロールモデルにもなっている樋口綾香先生オススメの実践です!
執筆/大阪府公立小学校教諭・樋口綾香
■「作家の時間」はじめてみませんか
■「作家の時間」を面白くする二つの工夫
■「作家の時間」はじめてのレッスン ~魅力的な人物を考える~
■「作家の時間」2回目のレッスン ~中心人物の悩みや課題と事件をつなげよう~
■「作家の時間」3回目のレッスン ~事件の解決を考えよう~
目次
文章を吟味するレッスン
「作家の時間」をはじめて1ヶ月が経ちました。この頃になると、物語の下書きを完成させた児童が出てきて「早く原稿用紙に書きたい」と言いに来たり、担任の先生から原稿用紙の原本をくださいと言われたりすることが増えてきました。
早速原稿用紙に書いていくのもよいのですが、ここで、自分が書いた文章を吟味するレッスンを入れます。
そうすることで、文章をよりよくしようしたり、語彙を増やしたりしようとする態度が育ち、それは学級全体へと広がっていきます。
レッスン④「物語の冒頭を工夫しよう」
物語の冒頭には、どのようなことが書いてあるのでしょうか。これまでに学習した教材の書き出しを例に考えます。今回は、「くじらぐも」(光村図書一年上)と「たぬきの糸車」(光村図書一年下)の文章で考えました。
「くじらぐも」の冒頭には、まず「時」が書いてあり、そのあと、「一年二組の子どもたち」「大きなくじら」という「人物」が出てきます。さらに、子どもたちは「体操をしている」、くじらは「真っ白い雲のくじら」という「人物の特徴」が書いてあります。
「たぬきの糸車」ではどうでしょうか。「くじらぐも」と同じように、「時」や「人物」「人物の特徴」だけでなく、「場所」が出てきます。また、「きこりがわなをしかける」という、事件につながる伏線も書かれています。
この2作品の冒頭を比べ、さらにこれまでのレッスンで学習した「スイミー」の冒頭も踏まえ、冒頭には「時・場所・人物」に加えて、「人物の特徴」や「事件へのつながり」を入れるとよい、とまとめました。
しかし、このまとめでは、すでに冒頭を書けている児童もいるので、「もっと文章をよくしよう」「語彙を増やそう」という態度へは結びつかないかもしれません。そこで、もうワンステップ用意します。
「こんな冒頭もあるよ!」と題して、「白いぼうし」(光村図書四年上)、「ずうっと、ずっと、大すきだよ」(光村図書一年下)、「スーホの白い馬」(光村図書二年下)、「モチモチの木」(光村図書三年下)の冒頭を取り上げました。
これらの作品を取り上げたのは、冒頭が印象的であり、作者の工夫がつまっている部分だと私自身が感じたからです。語り手を一人称とするか、三人称とするかだけでも大きな違いがあることに気づかされます。
最後に、より読者を惹きつける冒頭にするためには、
- 作品の中の大事なことを印象付ける会話文を入れる
- 読者に語りかける
- 作品につながる外側のお話を書く
などの工夫があるということをまとめました。
レッスンが終わった後は、「ひたすら書く時間」になります。
次回は、5回めのレッスンについてお伝えします。
樋口 綾香
ひぐち・あやか。Instagramでは、ayaya_tとして、♯折り紙で学級づくり、♯構造的板書、♯国語で学級経営などを発信。著書に、『3年目教師 勝負の国語授業づくり』(明治図書)ほか。編著・共著多数。
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