小5理科「花から実へ」指導アイデア
執筆/大阪府公立小学校教諭・松田善行
編集委員/文部科学省教科調査官・鳴川哲也、大阪府公立小学校校長・細川克寿

目次
単元のねらい
結実の様子に着目して、それに関わる条件を制御しながら、植物の育ち方を調べる活動を通して、植物の結実とその条件についての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に予想や仮説を基に、解決の方法を発想する力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成します。
単元のねらい(三次 総時数 6時間)
※カボチャの他に、ヘチマやヒョウタンなどでも同様の展開ができます。
◆一次 カボチャの花のつくり(1時間)
① カボチャの花には、2種類あることを知る。
雌花には、花の下に膨らみがあるんだね。
私たちの育てているカボチャにも、雄花と雌花があるのかな? 調べてみたいな。
② 実際に学習園のカボチャを調べよう。
単元デザインのポイント
これまでに、子供たちは水やり等でカボチャに関わってきていますが、花のつくりに着目するには至りにくいもの。そこで、雌花と雄花の写真や動画を見せて、興味・関心を高めてから、実際に観察させる方法も考えられます。「NHK for School」の動画クリップ「カボチャのお花とめ花」も活用しやすいです。また「雄花」「雌花」の漢字表記を伝えることで、メダカの学習の雄雌と関連付けて考えやすくなります。
◆二次 受粉と実のでき方(3時間)
① めしべの膨らんだ部分が実になるときと、ならないときがあることを知る。→「どうすれば、実ができるのだろうか」という問題を見いだし、実験する。
カボチャの実の中には、何が入っていますか?
実の中には、種が入っています。メダカは、雌が産んだ卵は雄が出す精子を受精して、卵が育っていったね。それに似ているのかな?
花粉が関係していると思う。どんな条件で調べればいいのかな?
・植物にとって、実を育て種子を残すことが、生命を受け継ぐことにつながることを確認しておきましょう。
・メダカは雄と雌で受精卵をつくっていたことを想起できるようにし、花粉が、めしべにつく受粉と似ていることに気付けるようにします。
◆三次 植物の受粉(2時間)【活動アイディア例】
①「自然の植物は、どのように受粉しているのか」という問題を見いだし、観察したり調べたりする。
単元の終わりに求められる振り返り
植物も動物と同じように、生命を受け継いでいっているんだね(共通性の視点)。
植物は、自分では花粉を運べないけれど、虫や風などに花粉を運んでもらって、受粉しているんだね。
植物がきれいな花を咲かせて、中に蜜をつくるのは、虫に花粉を運んでもらうためなんじゃないかな。
虫に運んでもらう花粉は、虫の体に付きやすいように、風に運んでもらう花粉は、軽く風に乗りやすいように、それぞれ生命を受け継ぐためにうまくできているね(多様性の視点)。
授業の展開例
植物の生命を受け継ぐための、巧みな仕組みに気付くことができる授業を行うことで、観察の技能を身に付けるとともに、生物を愛護し、生命を尊重しようとする子供を育成しましょう。
【自然事象への関わり】
自然に生息している植物は、人の手で花粉を運ばなくても、受粉して生命を受け継いでいることに気付く。
問題
自然の植物は、どうやって受粉しているのだろうか。
予想
植物は自分で動けない。昆虫が、花粉を運んでいるんじゃないかな?
風じゃないかな? テレビのスギやヒノキの花粉情報で、花粉が風で飛ばされている様子を見たことがあるよ。
そうですね。昆虫に花粉を運んでもらう花を虫媒花、風に花粉を運んでもらう花を風媒花と言い、他にも鳥媒花や水媒花などもあります。
では、昆虫はどうして、植物の花粉を運んでくれるのでしょうか?
指導のポイント
・問題に対して、子供は、虫や風によって花粉が運ばれていると予想をもつことが考えられるが、その場合はさらに、「どうして虫は、植物のためにそんなことをしてくれるのかな?」などと問い返し、さらに深く考えられるように助言したい。
虫媒花と風媒花と、それぞれの花粉について調べると、特徴がわかるかもしれないね。
図鑑やインターネット、顕微鏡などを使って調べよう。
・虫媒花と風媒花と、それらの花粉に焦点化して考えるように助言する。
・図鑑やインターネットだけでなく、実際に花や花粉を調べる活動も大切にしたい。
調べ学習
調べてわかったことをまとめる。

考察
より妥当な考え方をつくりだす。
昆虫は、蜜が欲しくて花にやってくる。その時に体に花粉が付くから、結果として花粉を運ぶことになるんだね。
花がきれいだったり、奥に蜜があったりするのは、昆虫を呼ぶためなんじゃないかな。
よく花粉症の原因になるスギなども、生命を受け継ごうとしているんだね。
結論
自然の植物は、風や昆虫などの力を借りて受粉している。
自然を愛する心情や、主体的に問題解決しようとする態度を養うためのポイント
植物は動物と比べて、ほとんど動かないため、生命活動を意識しにくいものです。しかし、動かないために、他の自然を巧みに利用して生命を受け継いでいます。それらに気付けるように学習を展開することで、その後も、身近な植物にも当てはめてみたり、主体的に考えたりするようになり、自然を愛する心情が養われていくことでしょう。
イラスト/横井智美
『教育技術 小五小六』2019年9月号より