小2道徳「みんなの ものって?」指導アイデア
執筆/北海道公立小学校・藤原友和
目次
指導項目「規則の尊重」
約束やきまりを守り、みんなが使うものやみんなのものを大切にすることができるようになる。
趣旨
「使った道具はきちんと片付ける」
二年生の子どもは、「ものを大切にする」とはどういうことか、頭では理解していますし、「どうしたらいいのかな?」と問われたらこのように答えるでしょう。
しかし、実際の生活の中ではまだまだ行動が伴わず、そのたびに注意をされてしまいます。これは、「言葉でわかっていること」と「実際に行動すること」の間にいくつかの「壁」があることが原因です。
その中の一つが、幼児期のもつ自己中心性です。「みんなで使うものを、片付けなければいけないことはわかっている。けれど、別の遊びがしたい」「みんなで使うものは大切にしなければいけない。けれど、遊びに夢中で乱暴に扱ってしまった」というように、自分の都合を優先してしまうことが、わかっていてもできない要因です。
日常的に指導を重ねていく必要はもちろんありますが、道徳科の授業でこの時期に取り上げ、みんなで考え、みんなで確かめておくことは、その後の指導に効いていきます。
「自分のものも、みんなのものも大切にする」
本時の指導内容だけに限らず、「みんなで使うものを大切にする」ことは、道徳科の時間に一度扱ったからといって、すぐに身に付くものではありません。しかし、さまざまな角度から考える経験をしておくことで、その後の生活の中で「できている自分」に自信を持ったり、「ついうっかりしてしまった自分」に気付いて、改めようとする気持ちをもつことができたりします。
例えば、授業後の学校生活の中で指導するときにも、「あのときの勉強で、こんなこと話し合ったよね?」「覚えている? どうするのだったっけ?」などと想起させながら、「気付いて自分で再挑戦する」ことができるようにします。こうした中期的な見通しの中に本時を位置付けることで、効果を高めることができます。
また、本時では、「片付けなさい」と声をかけられたときに、どのような返事をするのかという設定で「ロールプレイ」を行います。「ロールプレイ」は楽しい活動ですが、あまりに盛り上がると、ねらいからはずれてしまったり、演技の後でその思いや判断、友達の演技を見た後の言語化が上手くいかないことも心配されます 。 しかし、同種の活動を繰り返すことで徐々に習熟していきます。
なお、教育出版の教科書では、この単元で2つの教材が扱われていますが、ここでは後半の教材のみを扱います。
指導教材
「みんなの ものって?」(教育出版 二年)
お昼休みにグラウンドでサッカーをしていた『ぼく』は、チャイムと同時に教室に戻ろうとします。しかし、みんなで使っていたサッカーボールをそのままにしていたので、六年生の先生に「待ちなさい。ボールをちゃんとボールかごに戻しなさい」と大きな声で注意されてしまいます。『ぼく』は内心、「ぼくがもちだしたボールではないのに……」と反発してしまいます。
授業では、「『ぼく』はどうすればよいか」を考え、ペアやグループで話し合ったり、教師を相手にロールプレイで演じながら、「みんなのもの」や「みんなで使うものを大切にする」とはどういうことか、考えを深めていきます。また、学級開きからこの日までの間に、指導内容に関連した子どものよさを記録し、授業の中でさりげなく紹介することも考えられます。
指導に当たっては、「キレイゴトの発表会」に終始してしまわないように気を付けます。そのため、
「ボールを出したのは自分ではない」
「最後にボールを触った人が片付ければよい」
といった自己中心的な考え方や意見も否定せずに受け止めながら、そのままだと、どんな困ったことが起きるのか、みんなで気持ちよく生活するためにはどうしたらよいのかなどと、さまざまな角度から話し合いを深めていくようにします。
本時の展開
板書例
①学校のボールと個人の体育帽を見せて問う
このボールは、誰のもの?
え? 名前書いてる? 学校のだよ
この帽子は、誰の?
板書例のように、学校のボールと体育帽の「同じところ」と「違うところ」を比べてみます。子どもから出た意見を整理し、課題を提示します。
今日の道徳は、みんなで使うものを大切にするとはどういうことか考えていきます
②教材文を読み、ロールプレイや話合いを通して考えを深める
『ぼく』が、先生に「大きな声」で「ちゃんと戻しなさい!」と言われたときに、「どんな気持ちがするか」に着目させ、本音による話合いをします。板書例のように、「ぼくじゃないのにな」といった考えも認めて整理します。そして、
『ぼく』はどのように先生に答えると思いますか? お隣同士で、先生と『ぼく』の役をやってみましょう
と、ロールプレイをはじめます。一通り活動を終えたら「どのように演じたか」を発表させ、板書に整理します。
次に、子どもたちから出た意見を一つ一つ検討し、「みんなで使うものを大切にする」とはどういうことか、多面的・多角的に考えを深めていきます。ここまでの板書に整理した意見を指しながら、話合いを進めます。
どうして、『ぼく』が片付けるのがよいことなのでしょうか
『ぼく』も使ったから
次に使うときに困るから
なくなっちゃうかもしれないよ
先生に怒られるから
どのような考えでも受け止めて、「どうしてそう思うの?」と、発言の背景にあるその子なりの考え方を掘り下げます。
③「みんなで考えたこと」をまとめ、個人で振り返りを書く
子どもの言葉をつなぎながら、「みんなのまとめ」を板書します。その後で、授業についての振り返りを個人でノートに書きます。
みんなが使うものはサッカーボールだけじゃないよね。他にどんなものがあるかな。どうやって大切にしたらいいかな?
このように問いかけて、授業の振り返りをします。
評価
- きまりは、みんなが気持ちよく生活するためにあることを理解できたか
- みんなで使うものや場所を大切にしようとする判断力や態度を育てることができたか
イラスト/小泉直子、横井智美
『教育技術 小一小二』2019年5月号より