小6理科「燃焼の仕組み」指導アイデア
執筆/大阪府公立小学校教諭・岩本哲也
編集委員/文部科学省教科調査官・鳴川哲也、大阪府公立小学校校長・細川克寿
目次
単元のねらい
空気の変化に着目して、物の燃え方を多面的に調べる活動を通して、燃焼の仕組みについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成する。
単元の流れ (三次 総時数8時間)
◆一次 物を燃やし続ける工夫(4時間)
① 生活の中で、火を使った経験を話し合います。瓶の中でろうそくを燃やして、ふたをします。ろうそくの燃え方を観察することを通して、「瓶の中のろうそくが燃え続けるようにするには、どうすればよいのだろうか?」という問題を見いだします。
② 瓶の中でろうそくが燃え続けるようにするには、どうすればよいかを調べます。
七輪の下に小窓があったので、瓶の底に隙間をつくると燃え続けると思うよ。
ふたを取れば、燃え続けると思うよ。
③ ろうそくが燃え続けるときの空気の動きを線香の煙で調べます。(活動アイディア例)
◆二次 物が燃えるときの変化(2時間)
① ろうそくが燃える前と後の空気にはどのような違いがあるか、気体検知管や石灰水などを用いて気体の変化を調べます。
◆三次 物を燃やす働きがある気体(2時間)
① 空気を組成する窒素、酸素、二酸化炭素の中で、物がどのように燃えるのかを調べます。
単元デザインのポイント
○日常生活の中で物を燃やす体験が少ない現状を踏まえ、単元を通して、物が燃える現象を十分に観察・実験できるような場を設定します。
○一次から三次まで、子供が主体的に問題解決を行うことができるように、単元を構想します。そのためには、子供が問題を見いだすことが大切です。自然事象に十分に関わり、得られた知識や技能を基に、子供同士で「燃え続けるとき、空気はどのように動いているのか?」「中の空気に、どのような変化があるのか?」などといった、解決したい次の問題を見いだすことができるようにします。
○本単元は「粒子」を柱とした領域に位置付けられており、子供が、自然事象を主に「質的・実体的」といった見方を働かせて追究することが大切です。具体的には、植物体が燃えるときに、燃焼前後の空気の変化を、「質的」変化という見方を働かせて捉えようとしたり、植物体が燃えるときには目に見えない空気が関係しているのではないかと、「実体的」に捉えようとしたりすることです。さらに、「比較」「関係付け」「条件制御」「多面的に考えること」といった考え方を働かせて問題解決を行い、資質・能力を育成するようにします。
【単元の終わり】期待される振り返り
線香の煙を瓶の口や底に近付けると、目に見えなかった空気の動きが見えた! 物が燃えた後の空気が出ていき、新しい空気が入ってくるといった「空気の通り道」をつくることで、物は燃え続けるということがわかった。予想と違って、空気は入るだけでなく、入れ替わる必要がある。キャンプなどで木を燃やすときに、隙間ができるように木を組んだり、うちわなどで空気を送ったりするのはこのためだね。
ろうそくが燃える前と後の空気の成分について、気体検知管や石灰水を使って調べた結果から、ろうそくが燃えるときは空気中の酸素が使われ、二酸化炭素ができることがわかった。予想では、物が燃えるとき、酸素が全部なくなってしまうと思っていた。しかし、実際は空気中の酸素のほんの一部(約4%)しか使われないことに驚いた。
活動アイディア 資質・能力の育成を目指して!
空気の動きを矢印で可視化したり、複数の事実から多面的に考えたりすることで、植物体を空気中で燃やすと、空気の入れ替わりがあるところでは燃え続けるが、入れ替わらないところでは燃えなくなってしまうという、より妥当な考えをつくりだして表現することができるようにしよう。
授業の展開例
自然事象への関わり(一次②終わりの場面)
隙間があれば、ろうそくが燃え続けるというわけではないんだね。ろうそくが燃えているときには空気が動いているようなので、空気がどのように動いているのかを調べてみたいな。
問題
瓶の中のろうそくが燃え続けるとき、空気はどのように動いているのだろうか?
(ここから一次③)
予想
図のように、瓶の口と底の隙間の両方から、空気が入って出ていくと思うよ。
●空気の動きを可視化
目に見えない空気の動きを矢印や文などを用いて表現することで、空気の動きを実体的に捉えて考えることができます。自分の考えを明らかにしたり、考えを説明したりするために、空気の動きを表現した図の活用が考えられます。
火が消えるとき、空気の動きはどうなっているのかな?
図のように、底の隙間から空気が入って、瓶の中で閉じ込められてしまうから、火が消えてしまうと思う。
解決方法の立案
空気の動きを見るために線香の煙を近付け、煙の動きで調べよう。
●安全への配慮
火の取り扱いについて十分に指導します。安全に観察、実験を行うために、ぬれ雑巾や燃えがら入れ、軍手、保護眼鏡など、必要な物は何かを事前に話し合います。やけどなどの怪我に備え、理科室に救急箱を常置しておきましょう。
イラスト/高橋正輝、 横井智美
『教育技術 小五小六』2019年4月号より