小3国語科「カミツキガメは悪者か」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小3国語科「カミツキガメは悪者か」(東京書籍)の全時間の板書例、発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/熊本大学大学院教育学研究科准教授・北川雅浩
執筆/千葉県千葉市立小倉小学校・青木大和
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、日本に生息する外来種について考えたことを話し合う活動を通して、文章を読んで理解したことに基づいて感想や考えをもつことができるようにします。
また、考えとそれを支える理由や事例、全体と中心など情報と情報との関係について理解することを目指します。
2. 単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴
本単元では、外来種について考えたことを話し合う活動を言語活動として位置付けました。
児童の身近な場所に生息しているにもかかわらず、どの生き物が外来種でどのような影響を及ぼしているのかを認識している児童は少ないでしょう。そこで、授業冒頭に、身近に生息する外来種をスライドで提示し、どこの地域で生息する生き物なのかをクイズ形式で確認した上で教材を読み、自分の考えたことを話し合う学習に繋げていきます。
本教材は、題名が「カミツキガメは悪者か」と問いかけの文章となっており、筆者の考える問題意識について見通しをもちやすいことが特徴の一つです。
本文は、外来種ではあるカミツキガメがなぜ日本で増えているのかという問いから始まり、筆者の体験をもとにカミツキガメの生態や産卵の様子を説明しています。印旛沼付近の被害状況、印旛沼付近でカミツキガメが増殖した理由を問いと答えの形式で説明し、最後に飼育についての筆者の考えが述べられています。
本教材は、カミツキガメが悪者なのか否かについて、筆者が主張している文章ではありません。持ち込んだ人間に対する問題意識が書かれており、文章を読んで理解したことに基づいて感想や考えをもつことに繋げられる文章になっています。
また、題名が問いかけの表現をしているように、文章内にもいくつかの問いかけがあります。それぞれの問いに対する答えを筆者の体験や事例、理由などから捉えていく営みの中で、筆者の飼育に対する主張を読み取ることで、説得力のある文章の特性に気付くことができます。そのことが、考えを支える事例や理由の関係を捉える資質能力へと結び付いていくでしょう。
今回「外来種」について考えるように、一つの事象に対して多角的に考えようとする意識が芽生えていくことも期待できます。
4. 指導のアイデア
(1)外来種クイズを用いて、教材への見通しをもつ
「外来種」という言葉自体は、3年生の児童にとってなじみ深いものとは言えません。一方で、児童の生活に目を向けてみると、児童が想像しているよりも多くの外来種が身近にいることに気付きます。「外来種が自分たちにとっても身近な存在」と児童が自覚することが、本教材を読み自分の考えをもつ上で非常に重要です。
そこで、外来種クイズを授業冒頭に行います。このクイズでは、「外来種」を知っているか児童に問い、定義を確認したうえで、どちらが外来種だと思うのか、二択で児童が答えていくものです。
さらに、どちらを目にした経験が多いかを尋ね、自分たちの身近に外来種が生息していることを確認します。その際、在来種と外来種の割合を示すことで、より児童が外来種に対する危機感をもつことができ、教材を自分事として読むことに繋がります。
(2)児童の実態に合わせた「自分の考え」とは
本単元では、「『カミツキガメは悪者か』を読んで外来種について考えたことを話し合う」という言語活動を位置付けました。
この言語活動においては、「外来種について何を話し合うのか」を明確にする必要があります。ここで「外来種についての賛否」や「筆者の考えについての賛否」など、賛否を問う議題を設定してしまうと、児童の考えに違いが生まれづらく、単なる報告会で終わってしまいます。
総合的な学習の時間や理科、社会科などと教科領域等を横断して関連付け、「外来種」について児童が調べる時間を設け、それぞれが「外来種」について考えたことを発表し合う活動も可能です。ただし、そうすることによって単元が肥大化したり、本単元で身に付けさせたい力から逸れていったりする危険性があります。
この単元は本来、「カミツキガメは悪者か」を読んで考えたことを【考えの形成】としていますが、「外来種について考えたことを説得したり発表したりすること」に目的が置き換わってしまい、「読むこと」の学習ではなく、「書くこと」の学習になってしまう危険性があるのです。
そこで、本単元では、「カミツキガメは悪者か」を読んで自分が新たに獲得した情報を基に、ペットを飼うときに気を付けたいことを考え、友達と交流する活動を行うことにしました。
5. 単元の展開(9時間扱い)
単元名: 外来種について考えたことを話し合おう
【主な学習活動】
・第一次(1時、2時)
① 外来種クイズを基に外来種について知っていることを話し合い、「カミツキガメは悪者か」を通読する。
② 大まかな内容を確認し、学習の計画を立てる。
・第二次(3時、4時、5時、6時、7時、8時)
③④⑤ 問いに合わせ、筆者の考えとそれを支える理由や事例を捉える。
⑥ カミツキガメを「悲しい生き物」と筆者が考える理由を整理する。
⑦「カミツキガメは悪者か」を読んで考えたことを書く。
⑧ 互いの考えたことを聞き合い、悲しい生き物を増やさないために自分たちができることを話し合う。
・第三次(9時)
⑨ 筆者の考えやそれを支える事例や理由から、どのように自分の考えを深めたかを振り返る。
全時間の板書例・ワークシート例・端末活用例と指導アイディア
イラスト/横井智美
令和6年度の国語科新教材を使った授業アイデア、続々公開中です!


