小5国語科「目的に応じて引用するとき」全時間の板書例&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「目的に応じて引用するとき」(光村図書)の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立けやき小学校校長・前田 元
執筆/東京都西東京市立田無小学校副校長・西村太吾
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
この単元では、多くの情報から目的に応じて必要な情報を選び取り、自分の文章に適切に、あるいは効果的に取り入れる方法を学びます。「調べる目的を明確にもつ」という経験を積むことで、その目的を意識した調べ方ができるようにしていきます。
2. 単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴
この単元では、報告する文章を書くために調べた事柄を引用カードに書いていきます。文献やホームページ等を読み、「どのような情報が書かれているか」を適切に読み取り、その中から「自分の目的に照らし合わせて、どの情報を引用しようか」と考え、選び出せるようにしていきます。
次の単元「みんなが使いやすいデザイン」には、時間をかけて報告する文章を書く時間が設定されているので、そこで活用できるように展開していきます。
4. 指導のアイデア
報告する文章を書くためには、誰に、何をどのように伝えていくのかという目的意識が必要です。
その目的意識を明確にもつために、本単元ではオリジナルのスライドショーを作成して児童の学習意欲を喚起していきます。
これを見た児童が、「水はきれいなほうがいいな。このことをみんなに伝えたいな」と思うことができるように、児童の問題意識に訴えかけられるように作成します。スライドショーの準備が難しい場合は、教師が話題として投げかけていくこともできます。
いずれの場合も、児童の目的意識を呼び起こすことが大切です。児童の目的意識が明確になったところで77ページの文章を読んでいきます。「目的をもつ」「目的に照らし合わせて情報を収集する」「収集した情報をカードにまとめる」という過程を体験させるのですが、中でも「目的をもつ」体験を重視したいところです。
また、引用カードを作成することを通して、「自分はこんな目的意識をもっている」「だからこの部分を引用したいのだ」と、カードを並べ替えながら論理的に考えることができます。さらに、このカードをFigJam等のオンラインホワイトボードツールで作成することで、より視覚的に表現できたり、お互いのカードを共有しやすくなったりします。
本単元は、「引用の仕方を習得する」という意味合いが強いので、引用カードの内容が多岐にわたることはありませんが、今後新たな学習をしていく中で、一人一人が個別の目的意識をもって調べ活動をする際に、この単元での学びを活用し、お互いの目的意識やそれに合った資料の引用を共有し、学び合うことができるようになるでしょう。
5. 単元の展開(全2時間扱い)
単元名: 目的に応じて引用するとき
【主な学習活動】
第1時「目的に応じた引用の仕方」について学習する。
○目的をもつ。
・教師が準備したスライドショーを視聴し、「水はきれいなほうがいいな。このことをみんなに伝えたいな」という問題意識をもつ。
○「きれいな水が使えないとどうして困るのか」という問題(≒目的)を解決するための情報を見つけ出す。
・77ページの文章を読み、この問題意識に合致する部分を選び出す。
・必要に応じて、この文章の内容を丁寧に確認する。
・教科書の例をもとにして引用カードの書き方を学ぶ。
○引用カードの作成の仕方を学ぶ。
・「目的」のカードを作成する。
・「引用したい部分」のカードを作成する。「 」(かぎ括弧)を付けた部分を短くまとめる。
・「出典」のカードを作成する。
○引用カードを並べ、引用する目的と引用箇所との関係を説明する。
・引用カードを「目的」▸「引用したい部分」▸「出典」の順に並べ、順に説明する。
〈説明の仕方〉
私は「きれいな水が使えないことで起こる問題を、具体的に説明したい」という目的をもちました。それが説明できる部分は、「よごれた水が飲み水や生活用水として使われていることが、下痢やコレラなどの病気の原因になり、多くの人が命を落としている」です。出典は「近松 みづき『水と未来』大空書店、2020年、52ページ」です。
○本時の振り返りをする。
○次時の学習の見通しをもつ。
第2時 引用する目的に応じて、引用カードを書く。
○目的をもつ。
・スライドショーを視聴し、「手あらいの際に、じゃぐちをしめなければならない」という問題意識をもつ。
○「手あらいの際じゃぐちをしめないとどうして困るのか」という問題(≒目的)を解決するための情報を見つけ出す。
・77ページの文章を読み、この問題意識に合致する部分を選び出す。
○引用カードを作成する。
・「目的」のカードを作成する。
・「引用したい部分」のカードを作成する。
・「出典」のカードを作成する。
○作成した引用カードについて、友達と交流する。
・引用カードを「目的」▸「引用したい部分」▸「出典」の順に並べ、順に説明する。
○単元全体の振り返りをする。
・同じ文章でも、目的が変わると、書き留めなければならない部分が変わることが分かる。
6.全時間の板書例・端末活用例と指導アイデア
イラスト/横井智美
令和6年度からの国語科新教材を使った授業アイデア、続々公開中です!
