小6国語「春に」板書の技術
今回の教材は、「春に」です。本単元では、「明日への一歩を、言葉とともに 君たちに伝えたいこと」と「春に」の2作品を読んで、「文章と詩を読んで考えたことを共有すること」を目指します。文章と詩を読んで自分の感じたことを伝え合うという活動を位置付けます。そのため、本時では、文章のどこの部分に自分が心ひかれたのかを明らかにして、友達と伝え合うことができるような板書の工夫を紹介します。
監修/元京都女子大学教授
同附属小学校校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂
教材名 「春に」(東京書籍)
目次
単元の計画(全4時間)
- 既習事項を確かめ、単元の学習の見通しをもつ。
- 「君たちに伝えたいこと」を読み、文章に込められた思いを捉え、感じたことを友達と伝え合う。
- 「春に」を読み、詩に込められた思いを捉え、感じたことを友達と伝え合う。
- 2つの作品を読んで考えたことをまとめて単元の学習を振り返るとともに、1年間の学習を振り返って中学校への意欲を高める。
板書の基本
〇単元の目標としては、「文章と詩を読んで、自分の考えを広げたり深めたりすることができる。」を設定しました。また、言語活動は、「自分の感じたことを伝え合う。」です。本単元では、「文章と詩を読んで考えたことを共有する」を目指します。そのため、文章と詩を読んで自分の感じたことを伝え合うという活動を位置付けます。
考えを共有するためには、自分の考えをもつことが必要です。文章のどこの部分に自分が心ひかれたのかを明らかにして、友達と伝え合うことにより、互いの意見や感想の違いを明らかにしたり、互いの意見や感想のよさを認め合ったりすることを大切にします。そして、共有したことを一人一人の考えを広げたり深めたりすることにつなげていきます。
もうすぐ中学生になろうとしている子供たちは、現在の自分自身の心のありようと重ねて読んでいくことでしょう。現在の自分自身の心と比べながら、「自分にも同じ気持ちがある、分かる分かる」と同感しながら読んでいく子供がたくさんいるのではないでしょうか。
今回は、「春に」という谷川俊太郎さんの作品の授業を紹介します。そこでは、「春」と「春に」は全く違う、と子供たちが何度も音読しながら辞書を使って伝え合っている様子が見られました。
ただ、音読中心の授業であっても、まずは板書を見ながら「ノートに書く」時間をとりました。「書くことで、考える」機会にしたいからです。小学校生活最後となる本単元は、小学校6年間で培ってきた力を確かめるとともに、その力を活用して文章を読んでいくようにします。そして、中学校へ、未来へと向かっていく気持ちを友達と共有し、次へと向かう意欲を高めていきたいものです。
〇1時間の中に一斉に音読する機会を何度も取るようにしました。音読することで、
・お気に入りの部分、注目する部分を増やすことができる。
・本時のねらいに気付くことができる。
・追及の手がかりをつかむことができる。
・読み取った内容を表現することができる。
タブレット導入などにより、そして「主体的・対話的で深い学び」の「対話的」ばかりに注目されてしまい、読まない、書かない授業が増えていることに危惧を感じるという声も聞こえてきます。
それでは子供たちに力は付きにくいでしょう。私たちが意識して目指すべきことは、音読においても単元の終わりになって子供がたどたどしく読む、ということをなくしていくことです。
子供たちはもともと表現することを喜びに感じるものです。「文章を上手に読んでみたい」「おもしろいお話を読んでみたい」という気持ちはどの子供ももっているものです。私たち教師には、この子供たちの願いを満たす授業を心がける必要があるはずです。気の利いた子供と教師だけでやり取りする授業では、子供たち全員の伸びは期待できないと考えます。
板書のコツ(3/4時間目前半)
板書のコツ
今回は、上の写真のように本文をいきなり板書していきました。板書していきながら、「気になるところはありますか?」と発問すると「春と春『に』の違い」が気になるということで、子供たちは意見を伝え合っていました。
「私は、『に』を辞書で調べると『行く先、場所』と書いてあり、春に『に』が付くことで、『春に~をしたい』という意味を伝えていると感じました。文章は読者に問いかけるようにしているので、題名と文章がつながっていると思います」という意見を言う子供たちが出てきました。
板書のコツ(3/4時間目後半)
板書のコツ①
板書に子供たちの意見を反映していきました。
青色のチョークは、「この気持ちはなんだろう」と繰り返し書かれている部分が気になる、ということで強調できるように囲みました。
ピンク色のチョークは子供たちの考え、意見、黄色のチョークは詩に込められたメッセージにつながるような言葉です。
板書のコツ②
板書を見ながら、最後に音読して振り返りを書きました。
構成/浅原孝子