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小3理科「磁石の性質」指導アイデア

特集
文部科学省教科調査官監修「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小3理科「磁石の性質」の板書例、教師の発問、想定される子どもの発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

執筆/福岡県北九州市立門司中央小学校教諭・三戸岡洋平
   福岡県北九州市立深町小学校指導教諭・鈴木寛人
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
   福岡県北九州市立湯川小学校校長・齋藤貴志
   福岡県北九州市立青山小学校教頭・中富太一朗

単元目標

磁石を身の回りの物に近付けたときの様子に着目して、それらを比較しながら、磁石の性質について調べる活動を通して、それらについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主に差異点や共通点を基に、問題を見いだす力や主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。

評価規準

知識・技能

①磁石に引き付けられる物と引き付けられない物があることを理解している。
②磁石に近付けると、磁石になる物があることを理解している。
③磁石の異極は引き合い、同極は退け合うことを理解している。
④磁石の性質について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。


思考・判断・表現

①磁石の性質について、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。
②磁石の性質について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。


主体的に学習に取り組む態度

①磁石の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②磁石の性質について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

評価計画

総時数 9時間

第1次 磁石が鉄を引き付けることについて調べる。

 磁石を身の回りの物に近付けて、自由に活動することから、問題を見いだす。

思考・判断・表現①
磁石の性質について、差異点や共通点を基に、問題を見いだし、表現するなどして問題解決している。〈記述分析・発言分析〉

 磁石に引き付けられる物と引き付けられない物について調べる。

知識・技能①
磁石に引き付けられる物と引き付けられない物があることを理解している。〈記述分析・発言分析〉

3 磁石と鉄の距離が変わると、鉄を引き付ける力が変わるか調べる。

思考・判断・表現②
磁石の性質について、観察、実験などを行い、得られた結果を基に考察し、表現するなどして問題解決している。〈記述分析・発言分析〉

知識・技能②
磁石に近付けると、磁石になる物があることを理解している。〈行動観察・記述分析〉

 
「エネルギー」を柱とする領域である本単元は、主として量的・関係的な視点で捉えることが特徴的な視点となっています。3時間目の「磁石と鉄の距離が変わると、鉄を引き付ける力が変わるか調べる」場面で、磁石の性質について、「量的・関係的」な見方をはたらかせることができるように促しましょう。

第2次 磁石の極について調べる。

4 磁石の極同士を近付けて、極について調べる。

知識・技能③
磁石の異極は引き合い、同極は退け合うことを理解している。〈記述分析・発言分析〉

5 磁石の極の指す向きを調べる。

主体的に学習に取り組む態度①
磁石の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析・発言分析〉

第3次 磁石に近付けた鉄は磁石になるのか調べる。

6 磁石に付けた鉄は磁石になるのか調べる。

主体的に学習に取り組む態度①
磁石の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・記述分析・発言分析〉

7 磁石に近付けただけでも、鉄は磁石になるのか調べる。(授業の詳細)

知識・技能④
磁石の性質について、器具や機器などを正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果をわかりやすく記録している。〈記述分析・発言分析〉

第4次 磁石の性質を生かしておもちゃを作る。

8~9 磁石の性質を生かして、目的をもっておもちゃ作りをする。

主体的に学習に取り組む態度②
磁石の性質について学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・記述分析・発言分析〉

授業の詳細

第3次 磁石に近付けた鉄は磁石になるのか調べる。

7 磁石に近付けただけでも、鉄は磁石になるのか調べる。


磁石に近付けると、磁石になる物があることを理解することができる。


学習指導要領では、「磁石に付けると」ではなく、「磁石に近付けると」、磁石になる物があることを理解できるようにすることが記されています。そのため、磁石に付けた鉄が磁石になることだけでなく、磁石に近付けた鉄が磁石になることを実験で確かめることも大切です。

板書例(クリックして拡大)

①問題を見いだす【自然事象との出合い】

磁石は離れていても鉄を引き付けるという性質を振り返り、磁石に近付けただけでも鉄が磁石になるのか考えることができるようにすることで、問題を見いだしていく。

磁石は、鉄から離していても鉄を引き付けたよ。

磁石に近づけただけで、鉄は磁石になるのかな。


じしゃくに近づけた鉄は、じしゃくになるのだろうか。

②予想する

磁石の不思議を見つけたときのことや、これまでに学んだことから予想してみましょう。

磁石の間に物をはさんでいても鉄を引き付けたから、近付けただけでも鉄は磁石になると思う。

磁石と鉄の距離が長くなると、鉄を引き付ける力は弱くなったよ。近付けただけでは、鉄は磁石にはならないと思う。

③解決方法を考える

予想を確かめるために、どのように調べればよいでしょう。

 
前時の磁石に付けた鉄が磁石になったことを確かめる実験と同じ方法で調べればよいことを押さえましょう。また、複数の方法で調べることで、「近づけただけで磁石になること」が、より妥当な考えとなるようにしましょう。

この前は磁石を鉄に付けて調べたから、鉄に磁石を近付けた後に磁石を離して、その鉄が他の鉄を引き付けるか調べるといいよね。

磁石に鉄を付けて調べたときと同じように確かめるといいね。

④観察・実験をする

磁石を鉄くぎに近付けて(5㎝くらい離す)、10秒くらい待ちましょう。その後、磁石を離して鉄が磁石になっているかを確認しましょう。

(安全指導)

①10秒くらい数えて、磁石を離す。
②鉄くぎが磁石になったか3つの方法で調べる。
 ●鉄くぎを引き付けるか調べる。
 ●砂鉄を引き付けるか調べる。
 ●方位磁針の針がふれるか調べる。

⑤結果の共有

実験をしてわかったことを、グループごとに話し合う。


3つ全ての実験をする時間が取れなければ、グループ毎に実験を割り振り、結果を学級で持ち寄ってもよいでしょう。その際、ICT端末で実験の様子を動画で記録しておいたものを学級で確認するという方法も有効です。

実験結果をまとめた例

磁石を近付けた鉄くぎに、別の鉄くぎが引き付けられたよ。

砂鉄も引き付けられたよ。

方位磁針に近付けると針のふれる向きが変わったよ。

⓺結果を基に考察する

予想通り、どの結果からも、磁石を鉄に近付けただけで、鉄が磁石になっていることがわかった。

磁石を鉄に近付けただけでは、鉄は磁石にならないと予想したけど、方位磁針の針が動いたり、鉄くぎや砂鉄を引き付けたりした結果から、磁石に近付けただけでも鉄は磁石になるんだね。


考察は「~と予想していたが、~だった」と、自分の予想と結果を照らし合わせて考えることができるようにしましょう。グループの結果を黒板で一覧掲示することで、子どもが他の班の実験結果と「比較して」考察できるようにもしましょう。また、磁石を近づけて磁化した物は、磁力が弱いことも体感できるので、子どものつぶやきを捉え、学級全体に共有できるようにするとよいでしょう。

⑦結論を出す


じしゃくに近づけた鉄は、じしゃくになる。

⑧振り返る

磁石が離れていても、他の物を磁石に変える力があることに驚いた。でも、距離によって磁石の力は変わったね。

安全指導

実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。

●釘の先は鋭利なため、怪我をしないよう注意して取り扱う(事前に先端をやすりで削っておいてもよいでしょう)。

イラスト/難波孝

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