小4算数「角とその大きさ」指導アイデア《180°より大きい角度の測定の仕方を説明する》
執筆/東京都立川市立幸小学校教諭・小泉友
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、東京学芸大学玉川大学非常勤講師・長谷豊
目次
単元の展開
第1時 半直線を回転させると、いろいろな大きさの角ができることを理解する。
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第2時 分度器の観察を通して、角の大きさの単位「度(°)」を知り、角の大きさの表し方を理解する。
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第3・4時 分度器を用いて角の大きさを測定することができる。
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第5時(本時)180°より大きい角度の測定の仕方を、既習の分度器を用いた角度の測定の仕方を基に考え、説明することができる。
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第6・7時 分度器を使って角をかいたり、三角形をかいたりすることができる。
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第8時 単元の学習の活用を通して事象を数理的に捉え、論理的に考察し、問題を解決する。
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第9時 学習内容の定着を確認するとともに、数学的な見方・考え方をふり返り価値付ける。
本時のねらい
180°より大きい角度の測定の仕方を、既習の分度器を用いた角度の測定の仕方を基に考え、説明することができる。
評価規準
・180°や360°の角に着目して、図や式から他者が考えた過程を読み取り、式にしたり説明したりしている。(思考・判断・表現)
・対話的に粘り強く問題解決に取り組むとともに、180°より大きい角度の測定の仕方を考えた過程をふり返り、学習に生かそうとしている。(主体的に学習に取り組む態度)
本時の展開
本実践は時計の短針と長針がつくる角度について考える展開とします。例えば6時であれば、長針と短針が一直線になるので、角度は180°になります。1つの時計から、短針と長針を動かすことで、さまざまな角度をつくることができます。時計の形が円であることや、時計の針が回転して進むことから1周で360°という回転の角度もイメージしやすいです。
まずは、直角がすぐに見える3時を提示します。そこから2時を提示し、分度器の使い方や分度器を使わずとも分かる角度について、既習をふり返っていきます。そして、本時の課題である7時を提示します。既習の角度から順に提示することで、180°を越えた角度について、「どのように求めることができるのだろう?」という問いを生み出すことができるとともに、180°を越えた場合について、解決の見通しをもつことができます。
今日は時計の長針と短針でできる角度を考えてもらいます。まずは3時です。
90°です。
どうして90°だと分かるのですか。
直角になっているからです。
本当に直角になっていますか。
三角定規を使えば確かめることができます。
確かに90°ですね。3時は90°になるんですね。では、次は……。
今度は2時だ。分度器を使えば測ることができます。
では、測ってみてください。
測ったら60°になりました。
分度器を使えば、角度を測ることができますね。
では、次は……。
あれ? ちょっと大きい。
分度器で測ることができないんじゃないかな。
分度器は180°までしか測ることができないのに、これはそれよりも大きい。
そうですか。180°を越えている角度だから難しいんですね。どうすれば、こうして180度より大きい角度も測ることができるでしょうか。
180°より大きい角度の測り方を考えよう。
見通し
分度器では測れませんか。だいたい何度くらいになりそうですか。
200°くらいなんじゃないかな。
どうして200°くらいと思ったのですか。
180°よりも大きいからです。
だったら、工夫すれば測ることができるんじゃないかな。
線を引けばいいんじゃないかな。
自力解決の様子
A つまずいている子
どう測ったらよいかが分からない。
B 素朴に解いている子
240°という角度を求めることはできているが、どのように求めたかの説明を表現することができない。
C ねらい通り解いている子
180°や360°を基にして角度を求めることができ、その求め方の説明を表現することができている。
自力解決の様相から、子供たちの状況を評価します。このときの評価は、「記録に残す評価」というよりは、「指導と評価の一体化」を意識することが大切です。子供の状態が、上記のA・B・Cのどれにあたるのかを把握します。そして、どのような指導をするのかを考えていきます。特にAの子供に対してどのような指導をするか考えます。ICTを活用しながら、「線を1本引いてみたらどうかな?」と、補助線を引くように促したり、角度のなかに既習の角度が見えないかを問うたりすることで、解決の糸口を見付けることができるようにします。
また、解決が難しいと感じている子が多いと判断したときには、自力解決の手を一度止め、「困っている人がいるけど、この人たちが『あっ!』と思うようないいヒントはないかな?」と解決が進んでいる子に投げかけるのも一つの方法です。そうすることで、困っている子は解決の糸口を見付けることができます。また、解決が進んでいる子は、自分がどうして解決に向かうことができたのかをふり返る時間となります。「180°を考えるといいよ」「線を引くと見えてくるよ」「どんな角度だったら分かりそうかな?」というようなヒントが期待できます。
学び合いの計画
学び合いのねらいは、180°や360°を基にして、180°+□°や360°-□°として求めることを、図と式と分度器の操作とを関連付けていくことです。解決した方法を黒板の前でただ発表していくのもよいですが、ICTを活用し、一人一人の考えを実際に操作する時間をもつことも効果的です。その際、考えをそのまま伝えるのではなく、式のみを提示し、その式から、どのような補助線を引き、どのように分度器を操作して考えたかをタブレット上で操作するような活動を取り入れるのもよいでしょう。
ノート例
B 素朴に解いている子
A つまずいている子
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
どのように測ったのか、みんなで考えていきたいと思います。最初に○○さんですが180°+30°という式で考えたようです。
イラスト/横井智美