小2算数「2けたのひき算」指導アイデア《加法と減法の関係を調べ、答えの確かめをする》

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

執筆/新潟市立上所小学校教諭・志田倫明
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫

年間指導計画 2けたのひき算

単元の展開

第1・2時 2位数の減法の計算の仕方と筆算の仕方を考える。

第3時 2位数(繰り下がりなし、空位、欠位あり)の筆算の仕方を考える。

第4・5時 繰り下がりのある筆算の仕方を考える。

第6時 2位数(繰り下がりあり、空位、欠位あり)の筆算の仕方を考える。

第7時(本時)加法と減法の関係を調べ、答えの確かめをする。

第8時 適用問題を解決し、習熟を図る。

本時のねらい

減法では、答えに減数を足すと、被減数になることに気付く。

評価規準

図や言葉の式を使って、たし算とひき算の相互関係を説明することができる。

本時の展開

※問題を提示する。

問題
教室に34人いました。?人があそびに行きました。教室には何人のこっていますか。

遊びに行った人数が「?」で隠れています。「?」が何人だったら簡単に求められますか。

1人だったら簡単です。34―1=33だから、残りは33人です。

2人でも簡単です。34―2=32だから、残りは32人になります。

みんなの説明にあるように、この問題はひき算の式で解決できそうですね。どうして、ひき算の式になると言えますか。

残っている人数を求めるからひき算です。

「?」が2人のとき、図で表せますか。

まず34人をかきます。

2人が遊びに行くので、2人分に×をかきます。

残った〇が答えです。 

〇の数が多いので、まとめる方法はありませんか。

四角で囲めばいいと思います。教室にいた34人をまず囲みます。

次に、遊びに行った2人のところを赤線で囲みます。

とても分かりやすい図になりましたね。教室にいた34人は、どこの長さですか。

ここです。

それでは、言葉でも書いておきましょう。

ここは何人ですか。

2人です。

言葉で言うと、どう言えばいいですか。

遊びに行った人数です。

それでは、それも言葉でも書いておきましょう。

ここは、どう言葉で言えばいいですか。

残っている人数です。

(?に「残っている人数」と書き入れる)

だから式が、34―2になるんですね。赤線で囲んだところが2ならばこうなるけれど、分からないので□のままにしておきます。

□がほかに、どんな数だと簡単に計算できそうですか。

繰り下がりがない数のほうが簡単です。

10人でも簡単です。34―10=24だから、残りは24人です。

□が繰り下がりのない数だといいですね。しかし、16だとどうでしょう。

あ〜、面倒な数だ。34―16だから繰り下がりがある。

でも、筆算を使えば計算できるよ。

では、計算してみましょう。

※計算する時間をとる

34―16=18。答え18枚です。

え? 34―16=28じゃないのですか。ほら、図にかいても28人となります。

違うと思います。もう一度、しっかりと計算すればいいと思います。

28人だと図がおかしくなります。

これだと図が合わないです。

学習のねらい
28人が間違っている理由を、図を使って説明しよう。

見通し

28人だと図がおかしくなると言う人がいました。どこがおかしくなってしまいますか。

28人だと、教室にいた人数が変わってしまいます。

足してみれば分かります。

自力解決の様子

A つまずいている子
間違いの理由を、図を使って説明することができない。
図を使えない。
筆算や計算を繰り返す。


B 素朴に解いている子
図を使って,34―16=18になることを説明している。
4ー6はできないから、繰り下げて14ー6=8。20ー10=10だから、正解は18になる。


C ねらい通り解いている子
図を使って、16+28=44になることを説明している。
16人出て行って、残った人数が28人だと、16+28で教室に44人いたことになる。

学び合いの計画

たし算とひき算の関係を示すのが下のテープ図(図1)です。この図の関係を把握することが、学び合いを進めるためには重要です。そのため、たし算の学習から同じようにテープ図を用いて場面を整理したり説明したりする活動を行うことで理解が進むでしょう。

しかし、抽象度の高い図は理解が難しい子供もいるので、実態に応じてていねいな指導が必要です。

そこで、本時導入では子供の人数を○で表した具体的な図から扱う展開を構想しました。「例えば、遊びに行った人数が2人だったら」と計算が簡単な場面を設定します。そして、子供の人数34人を○でかいて提示します。ここで子供には、○がかいてあるワークシートを配ります。遊びに行った2人に印を付け、残った○の数を数えることで教室に残っている人数を求められることを確認します。このとき、◯のまとまり(教室にいた人数や遊びに行った人数)を線で囲むことで、人数を1本のテープで表せることを確認していきます。

○のように数えることのできる具体的な図から、テープのように量を表す抽象的な図へ置き換えていく活動をていねいに行うことが、数量の関係を捉えることにつながります。そして、同じように理解している図を他者とともに見つめながら整理したり説明したりすることで、学び合いが活性化されるのだと考えます。

もし、これでも理解が難しい場合は、テープを3本用意する方法もあります(図2)。このようにするとテープに重なりがなく、1本1本について「このテープの長さが〜を表します」とていねいに説明することができます。さらに、最初はテープではなく、子供がかいた素朴な絵を使って、テープの図にしていく場面があってもよいでしょう。このように、実態に合わせて、扱うテープ図の抽象度を判断するとよいでしょう。

本時では、問題をひき算で解決できる理由を確認する場面で、テープ図を使って確認します。そして、課題を解決に向けて考える場面では、テープ図を考察の対象として、教師の提示した間違いを修正する活動に取り組みます。

このとき協働的に学び合いながら学習を進めることを期待します。学び合いが成立するためには、学び合う集団が共通の目的をもつことが必要です。目的は同じでも、それぞれ考えていることが異なる状況で学び合いが成立するのです。

この場面では、「教師が導いた解答の誤りを修正すること」が共通の目的であり、「その修正の仕方」が異なる考えです。多様な考えをもった子供が、共通の目的の達成に向けて追究することで、自分にはなかった考えに触れ、自分の考えをよりよいものにしていきます。

そのために、先に示したテープ図を用意することが重要です。同じテープ図を見ながら考えているにもかかわらず、思い浮かべている考え方が違うことが表出したとき、学び合いが始まるのです。例えば、本時では答えが間違っていることを説明するために、ひき算の計算をやり直して確かめる子供や、たし算で答えを確かめる子供と様々です。同じテープ図を基にした説明のなかに、たし算とひき算の計算が出てくることで、その関係が話題になり、本時でねらいとしている「減法では、答えに減数を足すと、被減数になること」に、子供自ら気付いていくことが期待できます。

全体発表とそれぞれの考えの関連付け

28人が間違っているのはなぜですか。

もし、残っているのが28人だったら、教室にいた人が44人になってしまいます。

そうそう。図で説明すると、遊びに行った人と残っている人を合わせると、16+28=44だから、全体が44人に変わってしまいます。

(式をカードに書いて、黒板に貼る。)

「教室に44人いました……」という問題だったら正解だったね、先生の答えは。

44―16=28にちゃんとなるからね。

(式をカードに書いて、黒板に貼る。)ひき算の答えが間違っていることを説明するとき、たし算が使えるんですね。では、34―16の正しい答えはいくつになるのでしょうか。

18です。さっきと同じように図で説明すると、遊びに行った人と残っている人を合わせると16+18=34だから、全体の人数がぴったりになります。

(式をカードに書いて、黒板に貼る。)

私は筆算で計算をしなおしました。はじめに4ー6をしたいけれど引けないから十の位から繰り下げます。14―6=8。次に十の位を計算すると、2ー1=1。答えは18です。

(式をカードに書いて、黒板に貼る。)

先生はたぶん、この繰り下がりをしていません。3―1=2だから28にしたんだと思います。

先生の答えが間違っている理由を説明するとき、同じ図を見ているのに、たし算とひき算というまったく違う計算が出てくるのは不思議ですね。

2つの式は全然違っていません。使っている数字は一緒だからです。

本当だ。ひき算の答えと引く数を足すと、引かれる数になっている。

※子供の「“ここ”が“ここ”になっている」のような曖昧な表現を取りあげて、算数の言葉に置き換える。

逆になっているね。ひき算の式を逆から(答えのほうから)見ると、逆になっている。

図も逆だよ。引かれる数(全体)から引く数(部分)を引くと、答え(部分)になるのがひき算。逆に、答え(部分)と引く数(部分)を足すと、引かれる数(全体)になる。

確かに。1人のとき34―1=33。逆にして足すと33+1=34になっている。

2人のときもそうだ。34―2=32。逆にして足すと32+2=34になっている。

どんなひき算も、答えと引く数を足すと、引かれる数になっているね。

学習のまとめ
ひき算の答えに引く数を足すと、引かれる数になります。このことを使うと、ひき算の答えが正しいかどうか確かめることができます。

評価問題

「もし、あそびに行った人数が29人だったら、34-29=6で、教室にのこっていたのは6人です」。この答えが正しいかどうか、たし算をつかってたしかめましょう。

子供に期待する解答の具体例

6+29=35
34ではないので、この答えは正しくありません。
正しい答えは、34ー29=5です。
たし算にすると5+29=34なので、正しいです。

感想例

  • ひき算を反対にするとたし算になることが分かりました。
  • 答えを確かめるとき、便利だと思いました。
  • これから計算したときは、反対にして確かめたいです。

板書例とワークシートPDF

イラスト/横井智美

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