小5国語科「古典の世界(一)」全時間の板書&指導アイデア

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国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
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1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小5国語科「古典の世界(一)」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:古典の世界(一)(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/東京都西東京市立田無小学校校長・前田 元
執筆/東京都西東京市立田無小学校・金子嘉良

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、5年生になって初めての古典についての単元です。
中学年では、短歌や俳句を取り上げ、音読や暗唱を通して言葉の響きやリズムに親しむ学習を行ってきました。高学年では、古文や漢文、近代以降の文語調の文章を取り上げ、音読や暗唱に加えて、古典の解説や図版から古人のものの見方や感じ方に触れることをねらいとしています。
中でも一番大事なことは、「古人のものの見方や感じ方について触れ、そのことについて自分はどのように考えるか。」ということに尽きると思います。
与えられたものをただ学ぶ学習から、なぜ、この文章が今まで受け継がれているかを考え、当時の人のものの考え方に思いをはせるきっかけとなるような授業展開にしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元で扱うのは、「竹取物語」「平家物語」「方丈記」「徒然草」の抜粋です。
難しい文法などの指導を行ってしまうと児童の心が離れていくことが予想されます。ここでは、大体の内容を押さえることにします。
現代語訳だけを読み、どう感じるかを尋ねてもよいですし、音読をしたあとで現代語訳を読んでみて、比べてどのように感じたかと尋ねるのも有効かと思います。
初めから児童同士で話すことはおすすめしません。なぜなら、難しい言葉が羅列され、「どう思う?」と尋ねたところで、「よく分からない」としか返ってこないことが予想されるからです。
ですので、初めのうちは、教員と児童の対話を意識して行いましょう。
「なぜ、教科書に書かれているのか」「なぜ抜粋なのか」という、児童が普段あまり持たない視点を与えることで、児童はいつも以上に考える活動に集中して取り組んでいくと考えます。関連性を問わず様々な意見が出ると思うので、教員が道標となりリードしていきましょう。
やり取りの中で児童が「何らかの意味がある」ことに気付けば、あとは、その意味を友達同士で見つけていくだけです。このつなぎがうまくいけば、古典について多くのことを考えることができると思います。

4. 指導のアイデア

この単元を通して、押さえたいこととして二つ挙げます。
一つ目は、音読や暗唱を通して、言葉の響きやリズムに親しむこと。
二つ目は、古典について解説した文章を読んだり作品の内容の大体を知ったりすることを通して、昔の人のものの見方や感じ方について知識を得ることです。
響きやリズムに親しむというのは、何をすれば目的を果たしたことになるのでしょう。親しむとはどういうことか、児童に問い、対話しながら授業を進めていきましょう。
「親しむ」とは、いつも接してなじむ、ということです。「いつも接して」、ここが大切です。
児童はこれまで、古典というものにほとんど触れてきていないので、反復の練習であったり、読もうとしたりする心が大切になってきます。回数をこなすことの意味をそこに見いださないといけません。
みなさんも多くの場面で練習をしますよね。練習は何のためにするのか。それは、上手になった自分の姿を誰かに見てもらい、評価をしてもらいたいからではないでしょうか。
例えば、文章を読んでいて、一番自分で上手になったなと感じるのは、つっかえながら読んでいた文章を全くつっかえないで読むことができたときだと思います。そんなとき、なんだかとても嬉しい気持ちになりませんか。自分で変容を知ることができる、成長を感じられるというのは、素晴らしいことです。
また、なかなか上手くできなくても、心地よさを感じて口ずさんでしまう、鼻歌のようなこともあると思います。これは、たとえ上手くなくても常に歌を身近に感じているということです。「親しむ」とはこの段階にたどり着くことを言います。上手に読めるようになってくると、もっと読みたい、相手にもっと伝わるようにするにはどうすればよいかと考えながら工夫をします。言葉の響きやリズムについては、児童は低学年の学習で、昔話などに触れ、遠い昔から現代まで引き継がれている物語があることを学んできています。
また、言葉遊びなどに触れて、言葉にリズムを感じることなども経験してきています。中学年では、俳句や短歌などの学習で、音読を通して「五七五」や「五七五七七」の音数に触れ、音の数がもたらすリズムの心地よさや、古典的な言葉遣いの響きを感じる経験をしてきています。
こうしたこれまでの学習経験を生かして、声に出して読むことで感じるリズムや響きがあることを意識して音読に取り組んでいきます。
これまでの学習の経験を生かすことにより、たくさん声に出して読むことで言葉の響きやリズムに親しむことができるというのは、児童自身が理解できるのではないでしょうか。

二つ目の、「古典について解説した文章を読んだり作品の内容の大体を知ったりすることを通して、昔の人のものの見方や感じ方について知識を得ること」についてのポイントは、「内容の把握は大体でよい」ということです。すべてを把握したほうが面白いということではなく、大まかでも当時の人の考え方を知ることができるということです。
そして、「昔の人のものの見方について、現代の自分はどう思うか。」という視点で考えることが大切です。昔の人の感覚を理解することができるのか、それとも面白さがよく分からないのか。
自分で結論付けていくことはとても有効な手段です。
そして、大事にしたいことは、理由の深追いはしなくてよいということです。
通常であれば、「なぜ、その決断をしたのか、理由をはっきりさせて答えてみてください。」と問うことが多いと思うのですが、ここでは、「なんとなくだけど面白い」という答えが出ただけで素晴らしいことです。それは、「面白い」と考えること自体が、昔の人の気持ちに寄り添わないとできない判断だと思うからです。児童が感じた素朴な思いであっても、それをきっかけとして、「どこが面白いのだろう?」「何を面白いと考えたのだろう?」と考えることで、たとえ拙いものであっても児童自身が感じた古文に対する面白さを言語化して友達と共有していくことができます。そして、改めて、昔の人の考え方は今と違うのか、比較することができるでしょう。
ただ、教科書で示されている作品の感覚が当時は最高に面白いものであったということも大切にしたいところです。そうすることで、自然と楽しみながら学習に取り組んでいけると思います。

この2時間の授業で、児童に味わわせたいことは、「古典は楽しい」ということです。
内容を面白いと思ってくれてもいいし、当時の人の考え方が面白いと思ってくれても構いません。
「自分の中での面白さ」、これを見つけられるように、授業を計画してみてください。

5. 単元の展開(2時間扱い)

 単元名: 声に出して楽しもう 古典の世界(一)

【主な学習活動】
1時、2時
第1時
・これまでに学習してきた古典作品について話し合い、学習課題を確認する。
・「竹取物語」の冒頭の文章を音読して、言葉の響きやリズムを楽しむ。
・他の三つの古典作品の冒頭の文章を音読して、言葉の響きやリズムを楽しむ。
・四つの作品の中から一つを選び、暗唱する。

第2時
・前時の学習を想起し、学習課題を確認する。
・四つの古典を読んで、感じたことや考えたこと、印象に残った表現について話し合う。
・前時に選んだ作品を再度暗唱したり、他の作品を選んで音読したり暗唱したりする。

6. 全時間の板書例・ワークシート例・端末活用例

【1時間目の板書例 】

イラスト/横井智美

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