小6理科「人の体のつくりとはたらき」指導アイデア
執筆/福岡県福岡市立東吉塚小学校教諭・岩田謙人
監修/文部科学省教科調査官・有本淳
福岡県福岡市立東吉塚小学校校長・杉原賢太郎
福岡県福岡市立南片江小学校校長・酒井美佐緒
目次
単元目標
体のつくりと呼吸、消化、排出および循環のはたらきに着目して、生命を維持するはたらきを多面的に調べる活動を通して、人や他の動物の体のつくりとはたらきについての理解を図り、観察、実験などに関する技能を身に付けるとともに、主により妥当な考えをつくりだす力や生命を尊重する態度、主体的に問題解決しようとする態度を育成することがねらいである。
評価規準
知識・技能
①体内に酸素が取り入れられ、体外に二酸化炭素などが出されていることを理解している。
②食べ物は、口、胃、腸などを通る間に消化、吸収され、吸収されなかった物は排出されることを理解している。
③血液は、心臓のはたらきで体内を巡り、養分、酸素及び二酸化炭素などを運んでいることを理解している。
④体内には、生命活動を維持するための様々な臓器があることを理解している。
⑤人や動物の体のつくりとはたらきについて観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。
思考・判断・表現
①人や他の動物の体のつくりとはたらきについて、差異点や共通点などを基に問題を見いだし、予想や仮説を基に、解決の方法を発想し、表現するなどして問題解決している。
②人や他の動物の体のつくりとはたらきについて、観察、実験などを行い、体のつくりと吸収、消化、排出および循環のはたらきについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。
主体的に学習に取り組む態度
①人や他の動物の体のつくりとはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く他者と関わりながら問題解決しようとしている。
②人や他の動物の体のつくりとはたらきについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
評価計画
総時数 10時間
第1次 吸った空気のゆくえについて調べる。
1 かけ足をしたときに起こる体の変化から、学習問題をつくる
思考・判断・表現①
吸う空気とはく空気について、差異点や共通点を基に問題を見いだし、表現するなどして問題解決していく。〈発言分析・記録分析〉
2~4 呼吸のはたらきについて調べる
知識・技能①
人の体のつくりと呼吸のはたらきについて、観察、実験などの目的に応じて、器具や機器などを選択して、正しく扱いながら調べ、それらの過程や得られた結果を適切に記録している。〈行動観察・記録分析〉
第2次 血液にとり入れられた酸素のゆくえについて調べる。
5~6 血液の循環に着目し、心臓の動きと血液の流れの関係について調べる
知識・技能③
血液は、心臓のはたらきで体内を巡り、養分、酸素及び二酸化炭素などを運んでいることを理解している。〈発言分析・記述分析〉
第3次 食べた物のゆくえについて調べる。
7~8 唾液によるでんぷんの変化について調べる(授業の詳細)
思考・判断・表現②
人や他の動物の体のつくりとはたらきについて、観察、実験などを行い、体のつくりと吸収、消化、排出および循環のはたらきについて、より妥当な考えをつくりだし、表現するなどして問題解決している。〈発言分析・記述分析〉
9 消化と吸収のはたらきについて調べる
主体的に学習に取り組む態度①
人や動物の体のつくりとはたらきについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く 、他者と関わりながら問題解決しようとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
第4次 臓器の関わりについて調べる。
10 体の中の臓器の関わりについて、これまで学習したことを生かしてまとめる
知識・技能④
体内には、生命活動を維持するための様々な臓器があることを理解している。
主体的に学習に取り組む態度②
人や体のつくりとはたらきについて学んだことを学習や生活に生かそうとしている。〈行動観察・発言分析・記述分析〉
授業の詳細
第3次 食べた物のゆくえについて調べる。
本単元では、共通性・多様性の見方をはたらかせながら、人の体のつくりとはたらきについて追究していくことが大切です。したがって、単元を通して、人と植物の共通点や差異点を見いだしながら話し合う場面を設定したり、学んだことを他の動物にも当てはめて考える場面を設定したりするとよいでしょう。
人や他の動物の体のつくりとはたらきについて、観察、実験を行い、体のつくりと吸収、消化、排出および循環のはたらきについて、より妥当な考えをつくり出し、表現するなどして問題解決している。
①問題を見いだす
人は酸素の他にも食べ物から栄養や水をとり入れているね。
食べ物は体の中でどのように取り入れられているのかな。
でんぷんが多く含まれているご飯で考えてみましょう。ご飯を口の中に入れ
る前と口の中で噛んだ後にはどのような変化がありますか。
ご飯を噛んでいるとだ液が出て、口の中で甘く感じることがあるよ。
だ液のはたらきが関係していそうだと思う。
でんぷんは、だ液と混ざることで別の物に変化するのだろうか。
②予想する
何かを食べた時に、だ液がたくさん出るから、だ液のはたらきは食べ物と関係していると思うよ。
甘くなったということは、だ液がご飯を別のものに変えているのかな。
③解決方法を考える
ご飯の中に入っているでんぷんが別のものに変わるかヨウ素液を使って調べてみよう。
変える条件と変えない条件を整理して実験の計画を立てましょう。
ご飯にだ液を混ぜたものと、ご飯に水を混ぜたものを比べるといいね。
口の中に近い温度で実験しないといけないんじゃないかな。
④観察・実験をする
変える条件と変えない条件を意識しながら実験の計画を立てることができるように声かけを行うことによって、A(だ液)とB(水)の量を同じにしたり、ご飯つぶの数をそろえたりする必要性に気がつくことができるようにしましょう。また、口の中でご飯をかむ様子を再現するために、口の中の温度(36℃)と同じになるように40℃の湯につけたり、手でご飯をもむ作業を入れたりする必要性にも気がつくことができるようにしましょう。
①ジッパー付きのビニル袋を2枚用意し、それぞれの袋に米粒を1粒ずつ入れ、形がなくなるよう袋の上から指でつぶす。
②ストローを使って、AとB、それぞれの袋の中にだ液と水を同量入れ、米粒と混ざるようによくもむ。
③約40℃の湯を入れたビーカーに、それぞれの袋を入れて3分間待つ。
④3分後、湯から取り出しそれぞれにヨウ素液を1、2滴入れて反応を見る。
ヨウ素液(0.05 mol/L)は、 20 倍程度に希釈するようにしましょう 。目安は、ビールの色よりやや
濃い程度の色です。ヨウ素液の希釈は、使用する直前に行い、前日に希釈する場合は、必ず遮光ビンに保存するようにしましょう。(安全指導)
⑤結果の処理
だ液と水、それぞれの色の変化を学級全体で確認します。その際、結果を記録したICT端末を使って説明するように促すことで、実感を伴った理解となるようにします。
結果を記録する際、ICT端末を用いて静止画を撮影しておくようにすることで、ヨウ素液がでんぷんに反応したかどうかを正確に捉えることができます。また、実験を行う前に、ご飯にヨウ素液をかける事象を観察し、ICT端末で撮影しておくことも事象を正確に捉えるためには有効な手立ての一つです。
⑥結果を基に考察する
だ液のはたらきを調べる実験からどのようなことが明らかになりましたか。
だ液を加えたAのほうは、ヨウ素液に反応しなかったから別のものになったね。
だ液には、でんぷんを別のものに変えるはたらきがあるんだ。
⑦結論を出す
でんぷんは、だ液と混ざることによって、別のものに変わった。
⑧振り返る
でんぷんが、だ液と混ざることで別のものに変わることはわかったけど、なぜ変わったのかな。
体の中に取り入れられるしくみと関係がありそうだと思う。
でんぷんが別のものに変わったあとは、体の中でどのように取り入れられるかも調べたいね。
安全指導
実験にあたっては、次のことを確実に指導するようにしましょう。
●湯や薬品が目に入らないように保護めがねをかけましょう。
●薬品が手などについたら、すぐに流水で洗いましょう。
イラスト/難波孝