ウェルビーイングを学校でつくる! ~SDGsの授業プラン #23 「Goal 11 住み続けられるまちづくりを」その2|松本さおり 先生
全国各地の気鋭の実践者たちが、SDGsの目標に沿った授業実践例を公開し、子どもたちの未来のウェルビーイングをつくるための提案を行うリレー連載。今回は「住み続けられるまちづくりを」を学ぶ授業実践提案の第2回です。ご執筆は、北海道の松本さおり先生です。
執筆/北海道公立小学校教諭・松本さおり
編集委員/北海道公立小学校教諭・藤原友和
目次
1.はじめに
こんにちは!松本さおりと申します。北海道の公立小学校に勤務しています。よろしくお願いします。私の勤務校では、6年生の総合的な学習の時間のカリキュラムに、SDGsについて学びを深める内容が位置付けられています。
また、社会科で政治と私たちの暮らしの関係について学習することを通し、みんなが暮らしやすいまちづくりについて学びました。さらに、修学旅行では、金比羅火口災害遺構散策路や、火山科学館を訪問する中で、有珠山の噴火による被害や避難の様子、避難所の開設や運営、災害後の復興について学びました。
今回の授業では、今までの学びのまとめとして、図画工作科「ドリーム・プロジェクト」の単元で、未来のまちに必要な施設や機能を考え、それを再現したジオラマを作りました。
「だれもがずっと安全に暮らせて、災害にも強いまち」の実現について、実際の体験や授業で学んだことと、ジオラマ作りの計画や作業を関連付け、さらに理解を深められるようにしました。
2.SDGs のNo.11についての解説
SDGsのGoal 11は、「包括的で安全かつ強靭で持続可能な都市及び人間居住を実現する。」で、テーマとして「住み続けられるまちづくりを」が掲げられています。
「11-1 2030年までに、すべての人が、住むのに十分で安全な家に、安い値段で住むことができ、基本的なサービスが使えるようにし、都市の貧しい人びとが住む地域(スラム)の状況をよくする。」などの7つのターゲットが定められています。
現在、世界の人口の半分以上が都市に暮らしており、2050年までには、都市の人口は世界中の人口の3分の2にのぼるとも言われています。人口が密集すると、治安の悪化、衛生状態の悪化に伴う感染症の蔓延、などの問題が起きます。
また、地方の過疎化や災害復興など、誰にでも住みやすいまちづくりには様々な課題があります。
持続可能な社会にしていくためにも、都市の開発について考えることは大切です。
3.SDGsのNo.11を扱った授業の実際
・学年 小学校第6学年
・教科 総合的な学習の時間、図画工作科
・ねらい だれもがずっと安全に暮らせて、災害にも強いまち」づくりを計画し、表現したり発表したりすることを通して、持続可能な社会の担い手の一員であることを自覚し、社会をよりよくしていこうという意欲を育てる。
・教材 ドリーム・プロジェクト『見つめて 広げて 図画工作 5・6年下』日本文教出版
・単元目標
<図工>
<総合的な学習の時間>
・授業展開
⑴ 単元の導入
単元の導入として、『SDGsのきほん 未来のための17の目標 まちづくり』(ポプラ社)を読み聞かせしました。本の内容から、
●世界の人口が都市に集中し、安全面、衛生面、環境面のさまざまな問題が起きていること。
●災害に強く、環境にもやさしい、安心してずっと住み続けられるまちづくりが、持続可能な社会に不可欠なこと
●社会科の政治の学習、修学旅行で学習した噴火に備えたまちづくりが、今回の学習に関連すること
に気付かせ、学習の見通しを持たせました。
⑵ 単元の展開
①私たちのクラスが考える「住み続けられるまち」とは
導入を踏まえ、図工の『ドリーム・プロジェクト』の単元で、各クラスが提案する「住み続けられるまち」を表現したジオラマ作りを行うことを確認しました。
②意見を出し合い、まちづくりで大切にしたいことを共有する
まちづくりを進める前に、災害に強く、環境にもやさしいまちにするには、どんなことを意識すればよいのかを考え、自分が作る建物に反映させたいアイデアをまとめました(以下、子どもたちによる共有画面より)。
③建物やまちを作る
建物は、住宅を一人1軒、公共施設などを数人で協力して作ることにしました。まちの設計は、クラスの担当者が中心となって進め、『空港を中心にした、一人一人が快適に暮らせるまちづくり』というテーマが設定されました。
④ジオラマ完成 学習発表会で各学級のまちのコンセプトをプレゼンする
2023年10月28日(土)の学習発表会では、総合の学習で学んできたSDGsについて発表しました。その中で、『住み続けられるまちづくり』について、各学級で意識したことを発表しました。
『環境によく、空港を中心としたまち』をテーマに制作を進めました。交通の便がよくなるよう、空港と直結した鉄道を配置しました。
現在住んでいる地域のよいところを生かしつつ、バリアフリー、災害への対策、アクセスのよさを重視したアイデアを形にしました。
4.授業の成果と課題 他教科・他領域とのつながり
【児童による振り返り(共有画面より)1】
【児童の振り返り1より】
普段当たり前のように生活しているまちにも、様々な工夫が施されていることに気付いています。自分もまちに住む市民の一員として何ができるかを考えることは、社会科や家庭科と深くつながっているのではないでしょうか。
【児童による振り返り(共有画面より)2】
【児童の振り返り2より】
「まちは、住む人がよりよく暮らせるようにする」という視点から、道徳の「親切・思いやり」の項目につながるものだと感じました。
また、「もし僕が建築家になったら…」と、自分の将来と結び付けてとらえている児童もいたことから、キャリア教育としての側面もあったと考えられます。
【児童による振り返り(共有画面より)3】
このように、授業の中で実際に手を動かしながらアイデアを表現する中で、SDGsが自分たちの生活に深く根ざしていることを実感できたと思います。
【参考文献等】
『SDGsってなんだろう? SDGsクラブ』公益財団法人 日本ユニセフ協会
『SDGsのきほん 未来のための17の目標 まちづくり』ポプラ社 著:稲葉 茂勝 監修:渡邉 優(2020年12月)
この連載は、毎週木曜日のAM6:00に公開します。どうぞお楽しみに!