小1生活「もうすぐ2年生」指導アイデア
![小1生活「もうすぐ2年生」指導アイデア バナー](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/12/seikatu_banar-25t3_s1-1.jpg)
文部科学省教科調査官の監修による、小1生活科の授業案です。1人1台端末を活用した活動のアイデアも紹介します。今回は「もうすぐ2年生」の単元を扱います。
執筆/高知大学教育学部附属小学校教諭・廣瀬 愛
編集委員/文部科学省教科調査官・齋藤博伸
高知県公立小学校校長・尾中映里
目次
年間指導計画
4月 | どきどき わくわく 1ねんせい(スタートカリキュラム) |
5月 | がっこう だいすき |
6月 | きれいに さいてね |
7月 | なつが やって きた |
8月 | いきものと なかよし |
9月 | あきを さがそう |
10月 | あきの おもちゃを つくろう |
11月 | あきまつりを しよう |
12月 | じぶんで できるよ |
1月 | ふゆを たのしもう |
2月 | しん1ねんせいに がっこうのことを つたえよう |
3月 | もうすぐ2ねんせい |
単元目標
自分自身の生活や成長を調べたり伝え合ったりする活動を通して、自分のことや支えてくれた人々について考えることができ、自分が大きくなったこと、自分でできるようになったことなどが分かるとともに、これまでの生活や成長を支えてくれた人々の存在に気付き、これからの生活や成長への願いをもって、意欲的に生活しようとする。
本単元と関わりの深い幼児期の経験
- 集会や誕生会など全学年が集まる場面では、聞く姿勢や待つ態度などを年少・年中組の手本となれるよう、意欲的に取り組んだ経験。
- 園生活の中で、年少・年中組に喜んでもらうことを通して、大きくなった喜びや自信を感じる経験。
- 運動会や芋掘りなどの季節の行事を行う際、「去年はこんなことしたよね」「今年はこんなこともできたね」などと、教師との対話を通して成長を振り返る経験。
- 卒園に向けての行事や生活などを通して、大きくなったという喜びや自信をもち、最後までやり遂げようとする経験。
学習の流れ(全7時間)
(入学式の写真を提示して)みんなの入学式の写真だよ。
自分が小さく見える!
そんなみんなも、もうすぐ2年生になるね。今日からの学習は、生活科の1年生最後の学習なんだよ。
どんな学習かな?
【小単元1】じぶんの せいちょうを ふりかえろう(3時間)
①自分の成長を集めよう
(紙テープ①を提示して)これは何の長さでしょう?
何だろう?
この長さに関係あるのはAさんとBさんと……。
他の紙テープもあるの?
(紙テープ②を提示して)実はこれもあります。これに関係あるのは、CさんとDさんと……。
もしかしてどれだけ背が伸びたかじゃないかな?
そうです。違いはあるけど、どれも自分の大事な成長だね。他にも成長したことはないかな?
教師が提示した成長を参考に、自分の成長を振り返り始めます。友達の成長を知り、自分にも当てはまるか考えたり似た経験を思い出したりすることで、「体の成長以外にも、いろいろな成長がありそう」「成長をたくさん集めたい」などの思いをもちます。
【物的支援】
子供が表現した成長をカテゴリごとに板書し、「体の成長」「できるようになったこと」など、成長を見付ける視点にします。
上記のような振り返りをした後、自分を表した絵の周りに成長したと思うことを書き加えていきます。
上記ワークシート(ノート)からは、「怖いことが少なくなった」という表現から、入学当初の不安を乗り越え、学校生活を安心して過ごせるようになったと見取れます。また、「縄跳びが一分できるようになった」「長い文が書けるようになった」という表現からは、時間や量の変化に注目してより具体的な自分の成長に気付いていると見取れます。
上記ワークシートからは、「早起きができる」「自分で起きている」という表現から、家族に起こしてもらうのではなく、一人でもできるようになった成長を実感し自信をもっていると見取れます。
【物的支援】
全身の絵を描くと、「上履きを大きいサイズに買い替えたから足が成長したと思うよ」「身体は……給食を全部食べられるようになった!」などと、体の部位をヒントに成長を見付けやすくなります。
【空間的支援】
班机にするなど、友達と自由に話しながら活動できるように場を設定することで友達の発言から思い起こすことができたり、楽しく成長を見付けたりすることができるようになります。
![班机にして話合いをする子供たち](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/12/801b4501a174e6fbf55caa3e6d2f2ce0-1.jpg)
②お気に入りの成長はどれかな?
たくさん集めた成長の中から、自分のお気に入りの成長を選びます。
【物的支援】
自分が書いた複数のワークシートから、お気に入りの成長を選ぶようにします。これは自分の成長を時間軸で振り返ったり、多面的・多角的に捉えたりする機会になります。また、小単元2の成長をまとめる活動において、一番表現したい(記録に残したい)ものを見付ける手掛かりにもなります。
【教師の支援・援助】
お気に入りの理由を子供に聞く中で、成長に関わった周りの人々の存在が出てきます。家族、友達、先生などの存在に気付くことができるようにすることで、今後の生活においても自分と関わる身近な人々とのつながりを大切にしながら過ごそうという思いをもてるようにします。
●協同性
友達と一緒に成長を集めたり成長を支えてくれた人を考えたりする活動を通して、自分の成長を実感したり、友達の成長を喜び合ったりしながら充実感をもって活動を行うようになります。
1人1台端末活用のポイント
子供の作品や様子を写真や動画で保存しておくと、子供が成長を振り返るときにそれらを手掛かりにして思い起こせるようになります。図画工作科の作品や、生活科で野菜や花を育てた記録などを振り返ることを通して、その時の自分の頑張りに気付き、成長を見付けることにつながります。
評価規準
知識・技能:自分が大きくなったこと、自分でできるようになったことなどの自分の成長に気付いている。
思考・判断・表現:自分の成長を支えてくれた様々な人と自分との関わりを振り返り、表現している。
【小単元2】じぶんの せいちょうを まとめよう(4時間)
①どんな方法でまとめようかな
成長をすごろく、巻物、本(物語)、動画などの方法から選んでまとめます。
![小1生活「もうすぐ2年生」指導アイデア 板書例](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/12/IMG_1831.jpg)
【教師の支援・援助】
子供が表現したいものをまとめるために適切な方法を選べるように、選択肢を提示したり、まとめ方のモデルを示したりします。提示したモデルを参考に、「だったらこんなこともできそう!」と子供なりに考え表現する姿を「すてきだね!」と認め、一人一人の子供が自分なりの方法で自分の成長をまとめようとする姿を価値付けます。
②選んだ方法でまとめよう
お気に入りの成長を中心にして、一人一人が自分の成長をまとめていきます。
◆すごろく◆
集めた成長をすごろくのマス目にして、すごろくを作ります。お気に入りの成長をすごろくの「3マス進む」マスにしたり、ちょっと残念だったことを「1マス戻る」マスにしたりしながら、楽しくすごろくのマスを作っていきます。
マスの数には制限がないので、お気に入りの成長を必ず入れることを条件に、成長したことが時系列に並ぶように作ったり、お気に入りの成長の順番に並べて作ったりと、子供の思いを基にすごろくを作ります。
上のA児がまとめた成長すごろくからは、友達が増えたことをお気に入りの成長に選び、ジャンプマスにしていることから、友達の存在が身近になっていることや、友達を大切に思っていると見取れます。また、「~が好きになった」という表現が複数回使われていることから、自分の中のよい変化を成長として捉えていることが分かります。さらに、スタートの次のマスに「ドキドキした」と書いていることを踏まえると、好きなことが増え、自信をもって学校生活を送れるようになったことは大きな成長として実感していると見取れます。
B児の成長すごろくからは、「友達ができた」「みんなと仲良しになった」といった表現から、B児も友達の存在を大切に思っていると見取れます。また、「背が伸びた」といった体の成長だけでなく、「縄跳びができるようになった」「嫌いなものが食べられた」といった努力したことを成長として実感していると見取れます。こうした子供の姿から、友達の存在や、自分の努力について価値付けていく視点となります。
◆巻物◆
白紙の紙をつなげて、自分なりの巻物を作ります。そこにお気に入りの成長を書いていきます。ランキング形式にし、1位のことについて詳しく書くなど、子供によって表現の仕方は異なりますが、自分なりの思いをもってまとめていきます。
【物的支援】
白紙の紙をサイズ違いで何種類か用意したり、テープや紐を用意したりすることで、子供が自分で考え、活動することができます。
![子供が成長をまとめた巻物(巻いた状態)](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/12/5.jpg)
![巻物1ページ目](https://kyoiku.sho.jp/wp-content/uploads/2024/12/6-1.jpg)
C児がまとめた巻物の成長NO.2(3枚目の画像)からは、1年生の1年間にとどまらず、幼稚園のときの自分の様子についても振り返り、その時の自分と今の自分を比較して成長を捉えていると見取れます。野菜の好き嫌いの例を挙げると、食べられる時があったり食べられなくなる時があったりと、子供なりに葛藤があったことと、それを乗り越えてどんどん食べられるようになっていることは大きな成長を実感していると見取れます。また、この子供の成長には、「パパやママを手伝えるようになりました」などの記述があるように、家族の関わりが大きく影響していることに気付いていることが分かります。
◆本(物語)◆
国語科「お話を作ろう」の学習を生かして、成長の過程を物語として書き表します。
【教師の支援・援助】【物的支援】
どのような用紙に書きたいと思っているかなど、子供のイメージを把握し、そのイメージに近い物を用意します。見通しがもてていない場合は、既習の国語科の学習で使用した用紙を使うことを提案することで、お話を書くという学習自体が想起され、既習を生かしながら取り組むことができるようになります。
上のD児の作品からは、たくさんの成長の中でもチャレンジしたことや努力したことが、心に残る成長であると実感していることが見取れます。また、成長の背景(せいちょうのひみつ)として、「お父さんとお兄ちゃんが縄跳びの仕方を教えてくれた」と記述があるように、家族の関わりがあったからこそ自分の成長があったことに気付いていると見取れます。
◆動画◆
けん玉の技を習得したことを表現したい場合は、実際にけん玉の技を披露しているところを友達に動画撮影してもらいます。コマ回しができるようになった子供は、回し方やコツを解説しながら実演する様子を友達に撮影してもらいます。
【教師の支援・援助】
けん玉や縄跳びなど、子供が努力してできるようになったことを実際にやって表現したい場合は、動画撮影が適していることを子供と確認しておきます。努力の過程を文章で表現したい子供もいるので、子供が自分の思いに合った方法を選べるようにします。
1人1台端末活用のポイント
ICT端末の動画撮影は、できるようになった技を撮影するだけでなく、成長の過程を劇で表現しようとする子供にも有効です。劇にすることで、ストーリーを考える必要性が生まれ、成長を再度振り返ることにもつながります。
また、字を書くことに困難さがある子供や考えたことをそのまま話すことが得意な子供には、録音機能などを活用してラジオニュース風にしたり朗読風にしたりして表現するなどの工夫ができるでしょう。
③成長を紹介し合おう
成長をまとめる方法が子供によって違うので、完成に要する時間に差が出てきますが、自分なりに完成したと判断した子供から見せ合ったり、一緒に遊んだりします。見せ合ったり一緒に遊んだりする中で、「すごいね!」「私も一緒だよ!」などと成長に対する友達からの反応が返ってくるので、楽しく遊ぶ中で成長に対する自信も得られます。また、友達のまとめたものと比較して、修正したくなったら適宜、修正を行いながら、自分が納得するものを作っていきます。
【教師の支援・援助】
友達の成長に対して肯定的な反応を返している子供の姿を「友達の成長を喜ぶあなたもすてきだね」「嬉しくなる反応だね」などと価値付け、どの成長にも価値があることや友達を認めることが自然にできている姿も成長したことの1つだということを伝えます。
●豊かな感性と表現
自分にとって価値ある成長を、思いや願いに合った適切な方法で表現したり、友達の表現を見たりする活動を通して、感じたことや考えたことを表現することやそれが伝わることの喜びを味わい、表現することに意欲をもつようになります。
④学習を振り返ろう
単元の振り返りをします。成長を集めたりまとめたりして感じたことや気付いたことを伝え合うことを通して、できるようになったことや役割が増えたことを再度実感します。また、自分と関わってくれた友達・家族や先生などの存在を自覚し、2年生も頑張ろうという前向きな思いを共有します。そして、2年生になる自分へメッセージを書き、学習を終えます。
【教師の支援・援助】
単元の最後に学習の振り返りの時間をとることで、自分の成長や周りの人の関わりを自覚できるようにします。子供の成長を教師も一緒に喜ぶことで、今後の生活に対して子供が意欲的に生活できるようになります。
評価規準
知識・技能:自分自身のよさや可能性に気付くと共に友達の成長にも気付いている。
思考・判断・表現:自分の成長を表現する適切な方法を選び、成長をまとめている。
主体的に学習に取り組む態度:自分の成長を大切なものとして表現しようとしたり、自分や友達の成長に喜びを感じて意欲的に生活しようとしたりしている。
参考資料/
・『あたらしいせいかつ上 教師用指導書 朱書編』(東京書籍)
・『小学校学習指導要領解説 生活編』(文部科学省)
・『「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 小学校生活』(文部科学省国立教育政策研究所)
・『幼稚園教育要領解説』(文部科学省)
・『保育所保育指針解説 厚生労働省 編』
イラスト/イラストAC