読書指導のアイデア ⑰私のベスト3発表会

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東京学芸大学附属小金井小学校司書 松岡みどり監修 本好きの子供を育てる読書指導のアイデア
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東京学芸大学附属小金井小学校司書

松岡みどり
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17回目のテーマは「私のベスト3発表会」です。この1年間に子供自身が読んだ本のベスト3を発表するという活動です。学年末の時期に、自分の読んだ本を振り返り、そのときの思いをよみがえらせる活動は、子供の豊かな心を育むことでしょう。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。

監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり

図書館

私が読んだ本のベスト3を選ぶ

学年末の時期におすすめしたい活動が、「私のベスト3発表会」です。この1年間で子供たち自身が読んできた本のなかで、「これはおもしろかった!」と思う本を3冊選んで、発表するという活動です。

まずは、どのような本を読んできたかを思い出し、本の題名や作者名を書き出すところから始めます。この1年間に子供自身が読んできた本を自分で書き出します。次に、そのなかから、おもしろかった、印象に残ったという本を3冊選びます。3冊に絞り切れないときには、5~6冊に絞ってから3冊に絞るという2段階にすると選びやすいでしょう。

「私のベスト3発表会」をすることを予告しておき、本を書き出したり、選んだりするのは、日程に幅をもたせて、「〇日までにしてきましょう」と宿題などにしてもよいでしょう。

本のおすすめポイントをまとめる

「私のベスト3」を選んだら、用紙(A4判、B5判など)に3冊の本の題名、著者名、出版社名と併せて、おすすめポイントや思ったこと、お気に入りの言葉などを書きます。

ベスト3として、1位(金)、2位(銀)、3位(銅)としてもよいし、順位が決められないときには、同列でもよいでしょう。そして、学級で「私のベスト3」の発表会を開きます。

その後、掲示板に掲示して、学級のみんなで共有してはいかがでしょう。友達の好きな本などを知ることができて、会話が広がるでしょう。

読書ノートのすすめ

この機会に、子供たちに読書ノートづくりをすすめてはいかがでしょう。4月の年度初めから、読んだ本の記録を付け始めるようにすると、年度末にまとめがしやすいです。B6判程度の自由帳ノートやスケッチブックなどを1冊用意して、そこに読んだ本の題名や著者名、出版社名、あらすじ、感想などを簡単に書き込んでいきます。スクラップブックを作るような要領で、イラストを入れたり本の中で印象に残った言葉を抜き書きしたりしてもよいでしょう。1年間書き溜めていくと、後で読み返したときに子供たちの積み重ねとして残り、おもしろかった記憶や思いもよみがえります。本を読むだけでなく、どのような本を読んだかということを記録しておくことも大切です。

 

松岡司書が選ぶ「私のベスト3」

『海にしずんだクジラ』

メリッサ・スチュワート/文 ロブ・ダンラヴィ/絵 千葉茂樹/訳 藤原義弘(国立研究開発法人海洋研究開発機構)/日本語版監修 
BL出版/刊

70年の命をとじたクジラは、海底に沈んでいき、何十年もかけて朽ち果ててゆく中で、深海生物たちに食べられていく。終わりを迎えた命が豊かな生態系を支える様子を描いた科学絵本。最近分かってきた「鯨骨生物群集」という科学の世界を絵本で分かりやすく紹介されているのが驚きです。

海にしずんだクジラ

 

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『さよなら、田中さん』 

鈴木るりか/著 
小学館/刊 2024年4月5日文庫発売

田中花実は小学6年生。子供では解決しきれない大人の事情など、日常の中で起きそうな事件や出来事を、ときに可笑しく、ときにはホロッと泣かせる筆致で描いています。行動力のある主人公と、底抜けに明るく、大食らいで働き者のお母さんが魅力的。著者の鈴木るりかさんが14歳の中学生の時のデビュー作。田中母娘の物語はシリーズ化されていて、最新のシリーズ4作目『星に願いを』では、花実が中学3年生に。花実の成長とともに分かってくるお母さんの過去など、新展開のエピソードにも目が離せません。

さよなら、田中さん

 

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『ぼくがぼくであること』

 山中 恒/著 庭/絵
KADOKAWA/角川つばさ文庫

小6の秀一は勉強なんて大嫌い。優秀な兄妹のなかで肩身も狭く、超口うるさい母親とチクリ魔の妹にうんざり。「こんな家、出ていってやる!」とトラックの荷台に飛び乗った秀一だったが、そのトラックがひき逃げを起こして!? 正義感が強く行動力のある主人公のたくましさに力が湧いてくる物語。
この作品は私自身が小学生の時、担任の先生が何日もかけて読み聞かせをしてくれた思い出の作品でもあります。時を経て自分で読み直し、当時の先生が子供たちへこの作品を届けたいと思ったことが改めて伝わってきました。

ぼくがぼくであること

 

 

松岡みどり

松岡みどり司書からのメッセージ
読書をしていくなかで、次の本、次の本と読んでいくだけでなく、「これはよかった」と自分の読んだ本を振り返って、思いをよみがえらせることも大切です。心に残ったことを他者に伝えるのはさらに難易度が高く、自分のフィードバックにもなるので大事なことだと思います。振り返ることで、「自分はこういうのが好きだったのか」と自分の再発見ができるのも魅力です。自分が読んだ本を人に報告する機会はあまりないので、言語化して伝える機会にしてみてください。ここでは1年間に読んだ本のなかからと提案していますが、「この1年間に読んだ本でないとだめ!」と言うのではなく、期間はゆるく設定してもよいと思います。例えば、6年生ならこの6年間にしてもよいでしょう。本を通して、楽しい会話ができる時間になるとよいですね。

 

読書や本の情報が満載

ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

 

授業で使える312冊の絵本を紹介

豊かな心と思考力を育む
絵本で広がる小学校の授業づくり

著/齊藤和貴(京都女子大学教授)

司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。

B5判/112頁
ISBN9784098402212

〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)

京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。

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