小5国語科「日本語の表記」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「日本語の表記」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立東汲沢小学校・上月邦裕
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では日本語表記の特性として、平仮名・片仮名・漢字・ローマ字といった複数の表記が使われていることを理解した上で、文や文章の中で漢字や仮名といった表記を目的に応じて適切に使い分ける力を養うことを目的としています。
また、表記の特徴を理解した結果、この言語体系をもつ日本語の豊かさに気付けるようにしていきたいものです。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、上記の「知識及び技能」を主体的に身に付けることができるように、身の周りの日本語の表記を集めたり、仮名だけで表記された文を読んだり、同一の俳句を複数の表記で表したものを比較したりして、日本語の表記の特徴や、そのよさについて感じたことを交流する言語活動を設定しました。漢字は一字一字が意味を表す表意文字であり、表音文字である仮名だけで表記されたものよりも、意味や語のまとまりが捉えやすいといった特徴があります。
また、漢字を使うことで英語と比べたときの情報圧縮効果もあります。
一方で、漢字には複数の音訓をもつものがあるため、漢字だけでは何と読むか分からないときに、仮名やローマ字で読み方を示すことがあります。
このような表記の特徴について気付いたことを交流することが、文章を書くときに相手が読みにくくないか、読み間違えがないかを考えながら、漢字や仮名を使うことの大切さを意識することにつながります。
また、これまでの単元において、表記の違いによって読み手の印象が変わることを学習しましたので、その学びを振り返ることも大切です。
単元「日常を十七音で」では、俳句をつくるという言語活動を行う際に、漢字、平仮名、片仮名、どの文字で書き表すかによって読み手の印象が変わることを学習しています。
本単元では「夏草や 兵どもが 夢の跡」という松尾芭蕉の俳句を、平仮名や片仮名表記のものと比較し交流することで、表記によって相手に与える語感の違いについて交流します。
このような交流を通して、平仮名から受ける語感の柔らかさなど、自国の言語文化について考える機会とすることも大切です。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 身の周りの日本語の表記を集め、日本語の表記にはどのような特徴があるかを考えるという問いをつくる。
単元の導入にあたって、身の周りの日本語の表記を探して集めるという学習活動を行います。
自分たちで日本語の表記を集めることで、日本語の表記の特徴について関心をもって考えていくことにつなげていきます。
また、日本語の表記には、漢字や仮名といった複数の表記が使われることが特徴ですが、その際、表意文字や表音文字といった知識の理解だけではなく、特徴について理解したことをもとに、これら複数の表記をどのように使い分ければよいのかを考え、この言語体系をもつ日本語の豊かさに気付けるようにしていきたいものです。
〈対話的な学び〉 複数の表記で表された俳句をもとに、表記から受けた印象を交流する場面を設定する。
漢字と仮名を交ぜて表記することにより、語のまとまりが捉えやすくなることを理解することは、相手にとって読みやすい文章を書こうという意識につながります。
一方で、複数の表記で表された俳句をもとに、表記から受けた印象を交流することで、相手の読みやすさだけではなく、自分が伝えたいことに最も合う表記はどれかを考えることも大切にしたいところです。俳句や詩を創作する上で、自分の伝えたいイメージによって、漢字、平仮名、片仮名の語感が与えるイメージを考えながら表記を使い分けることにつながります。
漢字、平仮名、片仮名による表記が与える印象について交流することで、様々な表記があることが日本語の豊かな言語文化につながっていることを理解することができます。
〈深い学び〉 学んだことを日常的な場面で活用する。
日本語の表記の特徴について交流し、表記の適切な使い分けについて考えた子供たちが、学んだことを日常的な場面で活用しようとする意識を高めます。
学習の振り返りで、学んだことを今後どのように生活に生かすかという視点をもつことで、「文を書くときにもっと漢字を混ぜて読みやすさを意識したい。」「市町村でも平仮名表記の地名がたくさんあるな。柔らかいイメージをもたせようとしているのかな。」など、学びを日常生活に広げようとする子供の姿を積極的に価値付けていきます。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
1人1台端末はインターネットを使って表記の例を探索したり、一度に多数へ情報共有したりする場面で活用します。
本単元では、漢字と仮名の使い分けについて教科書にいくつかの例文がありますが、自分でインターネットを通してそのような例文を調べ、自分が見つけた文を友達と交流することで、より主体的に学ぶことができます。
また、同一の俳句について複数の表記で表したものから受ける印象を共有する際にも端末を活用します。それぞれが記入したワークシートを、ロイロノートの提出箱など、全体で共有できる場所に保存することで、クラス全員の意見を一覧することができます。
自分にとってどの表記が最もよいと思うか、その表記によってシートの色を変えれば、クラス全体の意見の分布をすぐに把握することができ、その後の交流に生かすこともできるでしょう。
また、児童一人一人の考えや学習の振り返りを端末を通して教師に提出することで、学習評価に活用することもでき、学習ポートフォリオとして学びの履歴を蓄積することができます。
6. 単元の展開(1時間扱い)
単元名: 日本語の表記の特徴について考えよう
【本時の主な学習活動】
(1時)
①「日本語の表記の特徴について考える」という問いをつくる。〈主体的な学び〉
② 漢字を使うことで語のまとまりが捉えやすくなることを学ぶ。〈対話的な学び〉
③ 複数の読み方がある漢字の場合は、仮名で示すとよいことを学ぶ。〈対話的な学び〉
④ 俳句を複数の表記で表したものを比較し、印象を交流する。〈対話的な学び〉( 端末活用 )
全時間の板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美