1人1台端末で「世界の音楽や楽器に親しむ」音楽授業アイデア

「世界の音楽」をテーマに、1人1台端末や図鑑を活用した音楽の授業を埼玉県公立小学校教諭・松長誠先生が実践しました。その様子を紹介します。子供たちは、楽しそうに世界の音楽や音色、楽器に興味をもち、音楽に親しみました。

授業者/埼玉県所沢市公立小学校教諭・松長 誠

世界の音楽扉写真。子供2人

授業計画(全2時間)

第1時 様々な楽器の音色を聴取して、世界の音楽の広さを知る。  
第2時 友達の選んだ音色を聴取したり、意見交換し合ったりする。

世界の音楽(1/2時間目)

めあて:世界の音楽を知りつくす。

学習活動

活動1 教師が音を出すいくつかの楽器について、演奏の仕方や音色を予想したり、味わったりする

松長先生のコレクションの中から子供たちに楽器を紹介します。ハピドラム、グンデル、シンギングボールなど、めずらしい楽器を紹介しながら、楽器の音色を予想したり、聴かせたりします。

松長先生が楽器を鳴らしている写真
松長先生が自分のコレクションの中からめずらしい楽器を紹介。

導入は、生の音から入ります。生の音を紹介するときには、誰もがよい音と思う音色と、少し価値判断が揺らぐような音色とを聴かせるとよいでしょう。学校にめずらしい楽器があれば、それを紹介してもよいでしょう。

活動2 児童用タブレットで『小学館の図鑑NEO音楽』のリンク先の楽器の音色を比較聴取し、自分の考えをもつ

すてきな世界の楽器の旅に行きましょう。

子供が、自分が聴きたいと思う楽器のジャンルを1つ選び、その音色を聴き比べます。
<1>吹奏(息を吹きこむ)楽器
<2>打楽器
<3>弦のある楽器

子供がタブレットで楽器の音色を聴いている写真
子供が端末を使って、自分の好きな楽器の音色を聴く。

時間が限られているので、ジャンルを広げすぎると、子供たちが何を聴いてよいかを迷ってしまいがちになります。そのため、ジャンルを絞って、子供たちが選べるようにしました。図鑑には、二次元コードが付いていて、楽器の音色が聴けるようになっています。しかし、子供が二次元コードから入るようにすると、時間がかかったり、うまくいかなかったりするため、あらかじめ、リンク先を提供するようにしました。図鑑の中から厳選してリンク先を選んでいます。

子供が楽器の音色を聴いている写真
子供たちには打楽器が人気。

活動3 選んだジャンルの楽器を聴き比べ、次の部門で楽器を選んでいく

・部門1 特に、美しい音色の楽器
・部門2 特に、気に入った楽器
・部門3 特に、めずらしい音やめずらしい見た目の楽器
・部門4 特に、◯◯な楽器(自分で◯◯を決めてよい)
  (例)楽しい音、不気味な、リラックスできるようななど

松長先生と子供がタブレットを見ている写真
松長先生は、机間巡視を通して、子供の興味や活動を踏まえながら、対話によって思考を広げられるように支援する。

世界の音楽がテーマのため、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカなど、地域が偏らないようにして楽器を選択しています。部門1~4は授業のポイントになります。子供たちが聴き比べをしている間、教師は教室巡視をします。子供が何を見ているかを知り、子供の興味を引き出したり、迷っている子にはアドバイスをしたりして、学びがより充実するようにします。

活動4 部門1〜4まで楽器が決まったら、Google formでアンケートに答える

アンケート内容は次のとおり
 ■選んだジャンルの楽器を聴き比べ、次の部門で楽器を選びましょう。
・部門1 特に、美しい音色の楽器
・部門2 特に、気に入った楽器
・部門3 特に、珍しい音や珍しい見た目の楽器
・部門4 特に、◯◯な楽器(自分で◯◯を決めてよい)

子供がタブレットに書き入れている写真
子供たちは、それぞれ自分の気付いたことや思ったことを書き入れる。

活動5 アンケートが終わったら、自分が選んだジャンル以外の楽器も聴き、世界の音楽を知りつくす

個別の学びを深めていかないと、次の時間の協働的な学びが深まらなかったり、話し合いの話題が少なくなったりします。そのため、子供が自分で選んだ楽器の聴き比べの時間を十分に確保します。

世界の音楽(2/2時間目)

めあて:音楽を通して、友達と共感したり、意見を交換し合ったりして、音楽の価値を考えられる人になる。

学習活動

活動1 教科書(教育芸術社)P50・51を見ながら教師が提示する音楽を予想したり、味わったりする。

楽器の音色を聴いて、どこの国の音楽か、楽器かを予想しましょう。

教室の子供たちに楽器の音色クイズを出す松長先生の写真
教科書からの楽器の音色クイズを出す。

第1問 ♪ガムランの音楽

インドネシア。

この音楽が自分のなかですごくよいと思う人は5。あまりよいと思わない人は1。

5。

第2問 ♪バグパイプの音楽 も同様に行う。

同じ音楽を聴いたとき、自分にとってよい音楽だと思っても、別の人にとってはあまりよいとは思わない人もいます。教師は、いろいろな意見があっておもしろいことを伝えるようにしていきます。多様性を認めるようにします。

活動2 前時の授業で行った楽器アンケートの回答を元に、グループで自分の選んだ音楽を紹介し合ったり、図鑑を活用して、さらに深め合ったりする。

活動内容

班の隊形になり、友達のすすめる楽器を探して聴きましょう。

図鑑を見たり、友達と意見を交換し合ったりしながら、楽器にくわしくなりましょう。

グループ活動の様子の写真
グループ活動。友達の気に入った音楽を聴いたり、話し合ったりする。

グループワークのときには、教師は各グループを回って、支援したり、広げたり、深めたりします。Aに興味のありそうな子供の様子を見て、「Aについて調べてみようか」と広げたり、「〇〇さんもAについて話していたよ」と言って、子供同士をつなげたりします。

図鑑を使って調べる子供の写真
子供たちは図鑑を活用して世界の音楽を調べる。

活動3 前時と本時の学習を振り返り、世界の音楽について、意見を交換し合う。

子供たちが手を挙げている写真
世界の音楽について、クラスのみんなで交流を深める。

子供たちへの質問事項

① 世界の音楽・楽器の音色について、知識や関心が広まったかどうか。
② 友達と意見を共感し合ったり、音楽の感じ方のちがいに気付いたりできたか。
③ 世界は、あなたの知らない音楽だらけです。
「不思議だな、変だなぁ」という音や音楽だとあなたが感じたとしても、その音楽が好きな人、その音楽を大切にしている人がいます。知らない音楽、そのような音楽をやっている人と出会ったときに、どのようなことに気を付けるべきでしょうか。

子供たちは世界の音楽について活発に発言し、交流を深めました。

 松長 誠先生
音楽は世界共通語と言われています。そして、太古の昔から人々に寄り添って歴史を重ねてきました。音楽は楽しかったり、すばらしかったりするものだという子供たちの興味につながればよいと思います。世界には知らない音楽が数知れずあります。音楽を通して世界には様々な人が存在し、自分が不思議だと思う音楽が、別の人から見るととてもよい音楽だと思うなど、様々な感じ方があることに子供たちが気付けばよいと思います。それが、多様性の理解や音楽の価値を考えることにつながるのではないでしょうか。

取材・文・構成・撮影/浅原孝子

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