読書指導のアイデア ⑮詩を読む・聞く・つくる
15回目のテーマは「詩を読む・聞く・つくる」です。一つ一つの言葉が洗練されている詩は、言葉の響きがよく、リズム感もよいので、様々な機会を通して子供たちに触れてほしいものです。今回は、実際に詩の本の読み聞かせや言葉集め、詩をつくる活動など、詩のおもしろさを知るきっかけをつくる提案です。ここでは本好きの子供たちを育てるためのアイデアを紹介します。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
詩の読み聞かせをしよう
「詩をつくりましょう!」と先生に言われても、子供にとっては分からない部分も多く、身近な存在ではないかもしれません。まずは、詩への抵抗感が少なくなるように、詩の本の読み聞かせをしてはいかがでしょう。一口に詩の本と言っても、詩集絵本や詩について分かりやすく書かれた本、子供たちがつくった詩をまとめた本など、様々な本があります。それらの本のなかから、目の前の子供たちに合った本を選んでみてください。また、子供たち自身が読んでもよいと思います。子供たちが詩に興味をもつきっかけにつなげてみてください。
松岡司書おすすめの詩の本
『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』
斉藤 倫/著 高野文子/画
福音館書店/刊
20篇の詩を通して、詩や言葉のことを物語形式で楽しみ、考えます。詩は言葉を自由にし、言葉は私たちを自由にします。詩ってよく分からない、でも気になる、という人におすすめです。
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詩集絵本●みつけたよ! じぶんのきもち
『友だちになれるあめ』
『がっこう、さらばじゃ』
『なみだがぽとり』
日本作文の会/編 吉田尚令、北原明日香、佐藤真紀子、武田美穂、田中六大/絵
ほるぷ出版/刊
子供の心のなかには、様々な気持ちがあります。それをうまく伝わるように表現するのは難しいことです。これらの詩集絵本を通して、自分と同じ気持ちに安心したり、友達の気持ちを想像したり、だれかにきちんと伝える表現を見付けることができます。巻末には詩をつくる活動例も掲載。授業のヒントにもなります。
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こどものつぶやきセレクション
『一年一組 せんせいあのね』
鹿島和夫/著 ヨシタケシンスケ/絵
理論社/刊
鹿島和夫さんと鹿島さんが担任した小学一年生の子供たちの日記ノート「あのね帳」から、54篇のつぶやきをセレクト。子供たちから生まれた生の言葉がヨシタケシンスケさんの絵とタッグを組み、新たに心を揺さぶります。
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『ピカピカ名詩』
齋藤 孝/著
PIE International/刊
NHKの人気番組「にほんごであそぼ」総合指導の齋藤孝先生が、31篇の詩を厳選して紹介。子供たちに分かりやすい解説や想像力を広げるイラストが入っていて、絵本としても楽しめます。
詩をつくることにチャレンジしよう
詩をつくる前に、響きのよい言葉集めをすると、言葉への感覚が鋭くなり、詩をつくる準備もできるでしょう。心に響いた言葉を子供たちに言ってもらい、黒板に書き出してみてください。言葉同士をつなげることで、言葉の響きが美しい詩になることでしょう。最初は、学級やグループごとに詩をつくると、子供たちに詩づくりのイメージがわきやすいでしょう。
慣れてきたところで、1人1篇の詩づくりに挑戦してみてください。国語の教科書などに載っている詩の一部をまねて、詩をつくることも楽しいでしょう。
また、動物や植物などテーマを決める、書き出しの言葉を決める、キラキラやワンワンなどオノマトペ(擬音語と擬態語の総称)を使うなど、様々な方法で詩をつくることが可能です。いろいろな方法でハードルを低くして、詩をつくる活動をしてはいかがでしょう。
松岡みどり司書からのメッセージ
詩の世界は、一般的にややとっつきにくい印象があるかもしれません。しかし、心に響く言葉を集めたり、気になる音を言葉にしたりしてまとめていくと、詩になることがあります。
詩に正解不正解はありません。自由な発想でつくればよいのではないでしょうか。そして、先生ご自身には新しい発見の場、子供たちには詩を好きになるきっかけをつくっていただきたいと思います。
子供たちの感性には驚かされるものがあります。子供たちのそのときの感性を大切にして、そのときにしかできない詩をつくるようにしてください。きっと思いもよらない発見が待っているでしょう。
詩の本は物語の本や調べものの本とは違った楽しみ方ができます。すてきな言葉に触れたり、自分の気持ちに寄り添ってくれる詩に出合ったりすることで、読む楽しみが広がるといいですね。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。