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小六算数 「つまり」や「だったら」が生まれる授業とは

2019/12/12

凄腕実践者・前田正秀先生が、「子供自身のリフレクション」により深い学びが生まれる条件について考察。さらに、算数の授業実践例の中で、実際に機能させるための様々な工夫や仕掛けを具体的に提案します。

執筆/富山県公立小学校・前田正秀

富山大学附属小学校で10年間勤務後、現職。「あれ?」「おや!」と心が揺さぶられる授業を目指しています。

算数授業風景イメージ
撮影/金川秀人

「だったら」が生まれる授業を!

アクティブな問題解決型授業。その終末に、子供のどんな姿を期待すればよいでしょうか。私は、子供から「だったら・・・」という言葉が生まれてきてほしいと願っています。学習した内容をまとめ、そこで学びを閉じてしまうのではなく、新たな問いが生まれてほしいと思うのです。

2年生で「三角形と四角形」の学習をした時のことです。三角形と四角形の定義をまとめていると、ある子供がふと「三角形と四角形があるんだったら、五角形や六角形もあるんじゃないの」とつぶやきました。そこで、「まだ習わないけど、実は五角形や六角形もあるんだよ」と伝え、黒板に五角形や六角形を描いてみせました。

すると、他の子も「だったら、七角形や八角形もあるんじゃないの」と続き、さらには「百角形も!」「千角形も!」と言う子も出てきました。

そんな中、ある子が「でも、一角形や二角形はないよね」と、つぶやきました。なるほど、大人からすれば当たり前のことなのですが、そんなことに気付くとは面白い発想です。

そう思って感心していると、別の子が「先生、一角形もあるよ」という声を上げたので、驚きました。その子は、「しずくの形だよ」と言いながら黒板に次のような形を描いたのです。

しずくの形をした一角形
一角形

確かに角が一つの形です。一角形の発見に、クラスがざわめきました。

私は「だったら、二角形は猫の形だね」「三角形は、チューリップの形だね」と言い、次のような形を黒板に描きました。

猫の形をした二角形と、チューリップの形をした三角形
二角形と三角形

すると、子供たちは「あれ?」という表情になりました。「そんなの三角形って言わないよ」と言うのです。そこで、どうしてチューリップの形は三角形と言えないのか、その理由を話し合いました。子供たちは「角があるだけじゃ駄目。3本の直線が要るよ!」「曲がった線じゃ駄目。直線で囲まれないと!」などと説明していきました。

三角形の定義は、「3本の直線で囲まれた形」です。子供たちは、「だったら・・・」と考えていく中で、分かったつもりになっていた三角形の定義を、もう一度見つめ直し、理解を深めたのです。

強い「なるほど」が、「だったら」を生む!

東京書籍の六年の教科書には、「不思議な輪の変身」という教材が紹介されています。二つの輪っかを垂直に貼り合わせて、輪っかの真ん中を切って開くというものです。

二つの輪を垂直に張り合わせて輪っかの中心を切ると正方形になる

開くと、なんと正方形になるのです。こうした教材を「へえ、そうなんだ」で終わらせたくありません。「だったら、斜めに貼り合わせたら、ひし形になるはず」「だったら、違う長さの輪っかを貼り合わせたら、長方形になるはず」「だったら、輪っかを3個貼り合わせたら、どうなるんだろう」と、問いを発展させてほしいのです。

では、「だったら」を生み出すには、どうすればよいのでしょうか。

単に、教師が切って開いて見せただけでは、子供から「だったら」が生まれてはこないでしょう。「だったら」を生み出すには、強い「なるほど」が必要です。切って開いた形を予想し、その理由を話し合い、仕組みを理解し、「なるほど」と心が動かされるからこそ、「だったら」が生まれてくるのです。

最初のうち、開いた形は予想もつきません。しかし、一つ目の輪っかを切って開いた段階で、だんだん予想がついてきます。

「不思議な輪の変身」の途中段階

子供からは「きっと四角形になるよ」といった声が上がることでしょう。さらに、「四角形は四角形でも、長方形になるよ。だって、垂直に貼り合わせたんだから、四つの角は直角になるはず」「長方形じゃなくて、正方形じゃないかな。二つの同じ輪っかを貼り合わせたんだから、四つの辺の長さが同じになるはず」といった考えも出てくるでしょう。

こうした話合いを経た上で、切って開けば、「なるほど」という思いが強くなります。そして、「なるほど、垂直に貼り合わせたから、四つの角が直角になったんだ。だったら、垂直じゃなかったら・・・」「なるほど、同じ輪っかを貼り合わせたから、四辺の長さが等しくなったんだ。だったら、違う大きさの輪っかだったら・・・」と、「だったら」が生まれてくるのです。

高い意欲が「なるほど」を生む!

「量の単位の仕組み」の学習では、それまで「長さ」「かさ」「広さ」「重さ」とばらばらに学習してきた単位をまとめて見直すことで、メートル法とその単位の仕組みについての理解を深めます。

量の単位は「m(メートル)」「g(グラム)」「L(リットル)」といった基になる単位と「mm(ミリ)」「k(キロ)」といった接頭語を組み合わせて、つくられていることを知るのです。

ここで、学習を「へえ、そうなんだ」で終わらせたくありません。例えば、「センチメートルがあるんだったら、センチリットルもあるのかな」と調べてみるのも面白いでしょう。外国製のワインやウイスキーのラベル等の中に、センチリットルが見つかります。案外、センチリットルは、身の回りで多く使われているのです。

ワインのラベルに「75cL」と書いてある

ここでも、単に、教師が知識を教え込むだけでは、「だったら」が生まれてはこないでしょう。子供が「なるほど」と感じることができないからです。「単位の仕組みについて調べてみたい」という意欲を抱いて学習するからこそ、「なるほど」と感じることができるのです。

例えば、学習の導入で次のような漢字クイズを出題します。

【問題】メートルを漢字で「米」と書きます。「粁」は、何を表しているでしょう。

【答え】キロメートル

【問題】グラムを漢字で「瓦」と書きます。「瓩」は、何を表しているでしょう。

【答え】キログラム

【問題】「粍」「瓱」「竓」は、何を表しているでしょう。

【答え】ミリメートル、ミリグラム、ミリリットル

【問題】「粨」「籵」「粉」「糎」は、どんな大きさを表しているでしょう。

【答え】1メートルの百倍、10倍、10分の1、100分の1

このようなクイズをしていくと、「アルファベットの単位の書き方も同じ仕組みになっているよ」ということに気付く子が出てきます。「本当? それじゃあ、単位の仕組みについて詳しく調べていきましょう」と投げかければ、子供の意欲が高まります。

意欲を持って学習した上で、単位の仕組みを知ることで、「なるほど」と感じることができます。その「なるほど」が「だったら」を生み出すのです。

「つまり」が生まれる授業を!

「だったら」に加えて、授業の終末に生まれてほしい言葉があります。それは、「つまり」という言葉です。「つまり」とは、学習した内容を、まとめて見つめ直した際に生まれる言葉です。

例えば、「速さ」の学習では、距離も時間もばらばらな二人の速さを比べます。子供からは、距離を揃えて比べる方法、秒数を揃えて比べる方法、そのそれぞれについて公倍数に揃える方法、一あたりに揃える方法が出てきます。

AさんとBさんの距離も時間もバラバラな二人の速さを比べる

この学習を振り返る際に、四つの考えをまとめて見つめ直し、「つまり、距離か秒数か、どちらかを揃えれば、比べることができる」と考えることができれば素敵です。

距離を公倍数に揃える、秒数を公倍数に揃える、距離を1mに揃える、距離を1秒に揃える

さらに、5年生で学んだ単位量あたりの学習でも、人数か面積のどちらかを揃えて比べたことにも気付かせたいものです。もっと言えば、1年生で長さを比べた際には、端を揃えました。単位にする長さを揃え、そのいくつ分で表すことも経験しています。

このように、その日に学習した内容と、これまでの学習とをまとめて、大きな視点から見つめ直すと、「つまり、量を比べるためには、揃えることが必要」という真理が見えてきます。そうした見方を大切にしたいと思うのです。

振り返りの引き出しを増やす!

ここまで「つまり」や「だったら」が生まれる振り返りを提案してきました。しかし、全ての授業において、そうした振り返りが必要なわけではありません。

授業の終わりにやったほうがよいことは山ほどあります。まとめを子供自身の手でするのもよいでしょう。学習の感想を書かせるのもよいでしょう。練習問題だってたくさんさせたいものです。

やったらよいことはたくさんありますが、全てを盛り込もうとすると、到底時間内に収まり切りません。そこで、内容を精選しないといけないわけです。

内容を精選する際の決め手になるのが、授業のねらいです。例えば、知識・技能をねらう授業の終わりには、練習問題をたっぷりすればよいでしょう。数学的な考え方をねらう授業の終わりには、学習の感想をたっぷり書かせればよいでしょう。

要は、いろいろな引き出しを持っておき、授業のねらいに応じて対応できればいいなと思うのです。そして、その引き出しの一つに「つまり」「だったら」が生まれる振り返りを提案したいのです。

振り返りの引き出しを増やす

まとめるだけで終わらせない!

振り返りは、ついつい学習した内容をなぞってまとめるだけに終わってしまいがちです。まとめることは、もちろん大切です。しかし、まとめるだけに終わってしまうのでは、何だか寂しい気がします。最後の5分間に、もう一歩学習が深まる、そんな授業を目指したいと思うのです。

本稿では、「つまり」や「だったら」と考え、もう一歩学びが深まる振り返りを提案しました。これは、何も私個人の考えではありません。

学習指導要領の算数科の目標の中には、「統合的・発展的に考察する力」という文言があります。「統合的」とは、「つまり・・・」と考えることです。「発展的」とは、「だったら・・・」と考えることです。これらは、学習指導要領において、求められている姿なのです

統合的・・・「つまり」
発展的・・・「だったら」

イラスト/大橋明子

『小六教育技術』2018年12月号より

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