小5国語「和の文化を受けつぐ」板書の技術

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見やすく理解しやすい「単元別 板書の技術」元京都女子大学教授・同附属小学校校長 吉永幸司監修
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大阪府公立小学校教諭

岡本美穂
連載 見やすく理解しやすい 京女式 単元別 板書の技術  バナー

今回の教材は、「和の文化を受けつぐ」です。本単元では、ゴールに「複数の資料や本から自分が興味をもった和菓子以外の和の文化のものを調べて、それを伝え合う」という言語活動を設定しています。そのため、子供たちが、和の文化について考え、「序論・本論・結論」を意識でき、筆者の考えに迫ることができるような板書の工夫を紹介します。

監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/大阪府公立小学校教諭・岡本美穂

 

教材名 「和の文化を受けつぐ」(東京書籍)

単元の計画(全10時間)

1 学習の見通しを立てる。
・ 題名や写真を基に、和の文化について考える。
2 教材文を通読して、初発の感想を交流し、学習の計画を立てる。
3~6 筆者の考えを読み取る。
・文章全体を序論・本論・結論に分け、さらに本論部分を3つに分け、それぞれのまとまりごとに書かれていることを、資料と関連付けながら読み取り、整理する。
7 要旨をまとめて交流する。
・文章を読んだ自分の考えや感想、調べてみたいことを整理する。
8・9 和菓子以外の和の文化について調べて、リーフレットにまとめ、友達と交流する。
10 学習後の自分の考えや感想、もっと調べてみたいことなどを交流する。

板書の基本

本教材は、和菓子という伝統的な文化に関するものの中でも子供たちがイメージしやすい題材であり、序論・本論・結論の構成が明確な文章となっています。また、和菓子を「歴史」「ほかの文化との関わり」「支える人々」という3つの観点に分けて説明するという構成は、子供たちにも分かりやすく、8、9時間目のほかの文化について調べたことを報告する活動にもつなげやすくなっています。

学習指導要領の指導事項【C読むこと(1)ウ】「目的に応じて、文章や図表などを結び付けるなどして必要な情報を見付けたり、論の進め方について考えたりすること。」に重点を置いて指導しました。そこで単元のゴールに、複数の資料や本から自分が興味をもった他の和の文化のものを調べて、それを伝え合う言語活動を設定しました。

文章構成としては、

①段落………〈はじめ〉
②~⑮段落…〈なか〉
⑯段落………〈おわり〉

と分けて考えました。そこで、板書では短冊にしたものを、毎回子供たちと確認して、貼っていきました。あらすじの理解にもなるうえ、子供たちが「序論・本論・結論」を意識できるようにしています。

小5国語「和の文化を受けつぐ」 板書

板書のコツ(1/10時間目)

小5国語「和の文化を受けつぐ」 板書
1/10時間目の板書

板書のコツ①

この時間は、題名や写真を基に、和の文化について考えることをめざしています。まず、本文を見せずに「和の文化を受けつぐ」と板書しました。そこから、「和」とは何かについて考え、交流し合いました。

板書のコツ②

その後、一人一人「和」という言葉から思い浮かんだことを聞いていきます。それは○で囲んだ部分に書いています。自由に話し合いながら、「文化を受けつぐ」ことについて追求していきました。「受けつぐ」という言葉を辞書で調べたり考えたりしながら、「伝えていく」「つなげていく」「遺伝」と言い換えて表現する姿も見られました。このように「題名」から考えを広げふくらませながら、本単元への興味・関心を引き出します。

板書のコツ(3/10時間目)

小5国語「和の文化を受けつぐ」 板書
3/10時間目の板書

板書のコツ①

「文書を五つに分けよう。」というめあてです。今までに学習した「序論・本論・結論」の文章構成についてまとめていきます。文章全体を序論・本論・結論に分け、さらに本論部分を3つに分け、それぞれのまとまりごとに書かれていることを資料と関連付けながら読み取り、整理することを求めていきます。そのために、まずは本論1、2、3にそれぞれ題名を付けることで、「あらすじ」把握と文章構成がどの子供も理解できることをめざしています。

板書のコツ②

「なぜ5つに分けると思いますか」と発問すると、「サンドイッチ作文」で考えられるという意見が出てきたので、「はじめ・なか1・なか2・なか3・おわり」ということを視覚的にも理解しやすいように掲示物も貼りました。5年生であっても「さかのぼり学習」としてこのような基本的な内容を押さえることも大事にしています。

小5国語「和の文化を受けつぐ」 板書
3/10時間目で掲示物を貼った板書

板書のコツ(4/10時間目)

小5国語「和の文化を受けつぐ」 板書
4/10時間目の板書

板書のコツ①

4・5・6時間目はそれぞれの書かれている内容について深く考えられるように

・「和菓子の歴史」について書く必要はあるのか。
・「和菓子とほかの文化の関わり」について書く必要はあるのか。
・「和菓子を支える人たち」について書く必要はあるのか。

と発問していきました。

このように聞くことで「筆者の考え」に迫ることができました。

板書のコツ②

今回は「必要だ」と答えた子供は17人、「必要ではない」と答えた子供は3人でした。あくまでも子供の意見なので、最終は「筆者」はどう考えてこのように説明しているのかという話し合いになります。

板書のコツ(6/10時間目)

小5国語「和の文化を受けつぐ」 板書
6/10時間目の板書

板書のコツ①

ここまでの学習をつなげて「和菓子の歴史」「和菓子とほかの文化の関わり」「和菓子を支える人たち」、筆者はどれを一番伝えたかったのかを考えました。そう発問することで、結論について読み深めていく子供たちの姿も見られました。

水色は筆者について迫っている発言内容を板書しました。そうすることで、「筆者意識」を子供たちが自然と区別して見られることをめざしています。

 

構成/浅原孝子

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