小6 国語科「カンジー博士の漢字学習の秘伝」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小6国語科「カンジー博士の漢字学習の秘伝」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/佐賀大学教育学部附属小学校・松尾達也
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、カンジー博士から出される課題に楽しく取り組むことができます。
小学校6年間の集大成として、漢字学習のこつを「秘伝」として知り、自分の漢字学習をメタ認知できる活動となります。字形、音訓、送り仮名など自分の得手不得手を自覚したり、友達の得手不得手を知り問題づくりに生かしたりしながら、文や文章の中で漢字と仮名を適切に使い分けて書く知識や技能の習得を図ります。
指導事項の育成のために必要な時期に適切な単元を構想して学習を行うことが基本です。
小学校の漢字の学習まとめを見通したときに11月ごろに行うことが適切ではありますが、学級の児童の実態や、指導のタイミング等を考慮して単元を設定していただくと、指導効果がより高まると思います。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
選択できる言語活動を児童に提示します。
一つ目は「わたしの漢字秘伝書」、二つ目は「わたしの漢字苦手クリアブック」、三つ目は「漢字秘伝ゲット問題」です。
いずれも、字形や音訓や送り仮名の観点を用いて取り組むことができるように学習内容を押さえていきます。しかし児童によっては他の観点(「特別な読み方の漢字」や「同音や同訓漢字」等)を課題としてもつかもしれませんので、三つの観点を大切にしつつも柔軟に扱うとよいでしょう。
「わたしの漢字秘伝書」は、漢字学習が得意だと感じている児童に向いており、カンジー博士の秘伝をまねして、独自の漢字学習のこつをまとめるものです。秘伝書にまとめることで、得意をもっと得意にする目的意識で取り組むことができるようにしたいものです。
「わたしの漢字苦手クリアブック」は、自分が課題としていることを解決するために、もらったアドバイス等をまとめていくものです。苦手としていることを少しでも得意にする目的意識をもって取り組むことができるようにしたいです。
「漢字秘伝ゲット問題」は、教科書の問題を参考にして、観点ごとにつくった問題をまとめたものです。他の児童に解いてもらうことで自然と交流が生まれるでしょう。
今回は三つの活動を分けて提示し、一つの活動を選ぶようにしますが、児童の実態に応じて、いくつも取り組むことができるようにしたり、秘伝書やクリアブックを混合できるようにしたりと、児童の自由な発想を生かしてもよいでしょう。
6年生ですので、三つの言語活動の成果物をどのような大きさや形式にするかは、これまでの学習経験をもとに児童に委ねるのが理想です。主体的に漢字学習の課題解決に向かうことができるようにしたいものですが、もちろんワークシートや成果物の見本を準備してもよいと思います。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉
主体的な学びを実現するためには、学ぶことに興味や関心を抱き、見通しをもって学習を進められるようにすること、児童が自ら選択できる活動を設定することが大事だと考えました。
本単元では、児童がこれまでの漢字学習の取り組みを振り返ったり、漢字を使用する意識を自覚したりすることで、自らの漢字学習に対して課題意識をもち、その課題を克服するためにどのような活動をすればよいか、見通しをもつことができるようにしていきます。
普段の日記など生活場面で記入したものを残したり、漢字の使用に対する教師の印象(使用できる漢字の〇割程度しか使っていない、新出漢字を積極的に使おうとしている児童が多い、など)を伝えたりすると、漢字を使用する意識をどれほどもっているか一人一人が考えるきっかけとなるでしょう。
言語活動を選択できるようにすることで、児童の主体的な学びが生み出されることを期待しています。
〈対話的な学び〉
対話的な学びを実現するには、課題に対して児童が自分なりの考えをもち、他の児童と交流をしたいという思いをもつことが大切になります。
本単元では、1時目に自らの得手不得手を実感した後に、他の児童と交流する時間を設定します。
交流を通して自身の得手不得手を語り、他の児童の得手不得手に耳を傾けることで、漢字学習への課題意識が明確になり、課題を解決したいという意識が高まっていくことを願っています。
2時目には、言語活動「①わたしの漢字秘伝書づくり」「②わたしの漢字苦手クリアブックづくり」「③漢字秘伝ゲット問題づくり」のいずれかに取り組みます。
作成の途中や完成した際には、「わたしの漢字秘伝書」や「わたしの漢字苦手クリアブック」についてアドバイスをし合ったり、出来栄えをほめ合ったり、他の児童に「漢字秘伝ゲット問題」に取り組んでもらい一喜一憂したりと、活発な対話が生み出されるはずです。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
本単元では、1人1台端末をインターネットの情報をブラウジングするために使用します。
「わたしの漢字秘伝書づくり」「わたしの漢字苦手クリアブックづくり」「漢字秘伝ゲット問題づくり」、どの活動においても、字形や音訓、送り仮名などの間違えやすい漢字を検索し、秘伝書や問題の中で用いることができるようにします。
児童の状況に応じて漢字辞典やその他の書物の活用も選択できるようにしておくと、児童の意欲や実態に応じた活動の工夫に広がりが生まれます。
6. 単元の展開(2時間扱い)
イラスト/横井智美