小3国語「モチモチの木」板書の技術
今回の教材は、「モチモチの木」です。本単元の中の登場人物の気持ちや性格を読み取る学習で、豆太の気持ちや性格を考える手がかりとなる板書、登場人物の考え方の違いを比べやすくする板書を紹介します。黒板全体を使って描いた、峠からふもとの村までの坂道は、子供たちの読み取りをさらにわかりやすくする工夫の1つです。
監修/京都女子大学附属小学校特命副校長・吉永幸司
執筆/埼玉県公立小学校教諭・須藤由恵(せせらぎの会)
単元名 登場人物について、話し合おう
教材名 「モチモチの木」~豆太のポップを作ってしょうかいしよう~(光村図書 3年)
目次
単元の計画(全12時間)
第一次 単元のめあてを確かめ、学習の見通しをもつ。(2時間)
1 単元のめあてを確かめ、「モチモチの木」の初発の感想を書く。
2 あらすじを捉え、学習計画を立てる。
第二次 登場人物の気持ちや性格を読み取る。(7時間)
3 「おくびょう豆太」(場面1の豆太とじさま)。
4 「やい、木ぃ」(場面2の豆太)。
5 「霜月二十日のばん」(場面3の豆太)。
6・7 「豆太は見た」(場面4の豆太)。
8 「弱虫でも、やさしけりゃ」(場面5の豆太とじさま)。
9 「豆太」がモチモチの木の灯を見ることができたわけを考える。
第三次 豆太について話し合い、単元の学習を振り返る。(3時間)
10 豆太を紹介するポップを作る。
11 ポップを読み合い、豆太は変わったかについて話し合う。
12 同じ作者の物語を読み、同じ物語を読んだ子供同士で交流する。学習を振り返る。
板書の基本
〇場面の状況を把握し、豆太の気持ちや性格を考える手がかりとなる板書
豆太の言動や気持ちを読み取る際には、支援となるよう、場面ごとに挿絵を貼ります。
6・7/12時間目では、豆太とじさまを取り巻く状況や峠からふもとの村までの様子をわかりやすくするために、㋐峠にある小屋とモチモチの木、㋑体を丸めてうなっているじさまと心配する豆太、㋒灯がついているモチモチの木、㋓小屋にいるじさまの4枚の挿絵を活用します。
黒板の右上方に峠と小屋を、左下方にふもとを位置付け、豆太が走った半道(約2㎞)もある坂道を矢印で示します。豆太1人だけの下り坂と、医者様と2人の上り坂を区別できるようにするためです。
「ふもとの医者様のところまで必死に走っている豆太」と「年寄りじさまの医者様におぶってもらう豆太」は、ペープサートにして黒板で動かすことで、行動や様子を印象付け、豆太の気持ちや性格を想像しやすくします。
〇登場人物の考え方の違いを比べやすくする板書
登場人物の考え方の違いを捉えることによって、物語のおもしろさをさらに深く味わうことができます。そこで、医者様とじさまの言葉を上下2段の表にして板書し、モチモチの木の灯についての考えを比べやすくします。着目させたい言葉には、黄色チョークで波線やサイドラインを引き、違いを明確にします。
板書を活用した授業の進め方(6/12時間目前半)
※本時は、2時間続きの前半の学習です。
1 本時の学習のめあてを確かめる
本時のめあて「医者様をよびに行った豆太の気持ちやせいかくを読み取ろう。」と板書します。登場人物の気持ちは、言動から読み取ることができることを伝え、「行動や様子、会話」のカードを貼ります。
2 場面の状況を確かめる
「㋐峠にある小屋とモチモチの木」の挿絵を黒板に貼り、「とうげ」と「小屋」の位置を確かめます。続いて、「㋑体を丸めてうなっているじさまと心配する豆太」の挿絵を貼り、「真夜中」にくまのようなうなり声が聞こえたことを確かめます。
怖がって、じさまにすがる豆太の言葉(「じさまぁっ。」)と、うなっていたのはじさまであるということがわかったときの豆太の言葉(「じさまっ。」)を板書します。2つの言葉を比べながら、豆太の気持ちを発表させ、「こわい。助けて。」「どうしたの。しっかりして。」を吹き出しにします。
真夜中に大変な状況になっていることをつかませ、「医者様をよばなくっちゃ。」を板書します。
3 豆太の言動やその時の気持ちを読み取る(1人学び)
本文を印刷したワークシートを配付し、「豆太は見た」の場面(本時は、前半は教科書P129 7行目まで)について、1人学びをさせます。
豆太の行動や様子、会話に着目させ、気持ちが読み取れる箇所にサイドラインを引かせます。そして、その右横(行間)に、読み取った豆太の気持ちを想像して書き込ませます。
4 豆太の気持ちを全体で共有する
「半道もあるふもとの村まで…」の叙述から、豆太が走った半道を白チョーク(太線)で示し、「半道(やく二キロメートル)」「ふもとの村」「医者様」と板書します(黒板の左下)。峠からふもとの村まで青矢印を引き、長い距離と霜の冷たさを印象付けます。
1人学びで読み取ったことを発表させる際には、言動は坂道の下段に板書し、豆太の気持ちや様子が特に強く表れている語句には、黄色でサイドラインを引きます(「ふっとばして」「はだしで」など)。そして、そこからわかる気持ちは、坂道の上段に吹き出しの形で書き、見やすく整理します。
物語の展開に合わせて、豆太のペープサートをふもとに向けて移動させ、さらにわかりやすくします。
5 豆太の性格を考える
本時のまとめとして、医者様を呼びに行った豆太の性格を考えさせます。「豆太」と板書しワークシートに書かせます。
子供たちの発言を受け、に入る言葉を板書します。(「じさま思いのやさしい」、「こわがりなところがあるけれど、勇気のある」豆太など)。
※本学級では、豆太の性格を考える際、以下の掲示物を活用しました。
ア.性格カード
イ.豆太の性格ウェビングマップ
板書を活用した授業の進め方(7/12時間目後半)
※本時は、2時間続きの後半の学習です。
※前時の板書を大型モニターに映しておきます。
1 本時の学習のめあてや大まかな状況を確かめる
本時は、4場面の後半であり、前時と同じめあて「医者様をよびに行った豆太の気持ちやせいかくを読み取ろう。」であることを確かめます。そして、豆太がふもとの医者様に会って、峠の小屋までもどる状況を押さえ、「㋑体を丸めてうなっているじさまと心配する豆太」の挿絵を「㋓小屋にいるじさま」の挿絵に貼り替えます。右上向きの矢印を青チョークで板書し、半道もある坂道を上っていくということを印象付けます。
2 豆太の言動やその時の気持ちを読み取る(1人学び)
前時(6時間目)と同じように、「豆太は見た」の後半の場面について1人学びをさせ、豆太の気持ちを考えさせます。前時と同様の方法で、読み取った気持ちを書き込ませます。
3 豆太の気持ちを読み取り、全体で共有する
1人学びで書き込んだ豆太の気持ちを発表させ、板書します。この場面は戻り道となり、ふもとから峠に上っていくので、板書は左から右へ書いていきます。豆太の気持ちが強く表れている「ドンドンけとばした。」に黄色チョークでサイドラインを引き、豆太の思いを吹き出しにして書きます。
「モチモチの木に灯がついている。」という豆太の言葉を板書するタイミングに合わせて、「㋐峠にある小屋とモチモチの木」から「㋒灯がついているモチモチの木」の挿絵に貼り替えます。
4 前の場面の豆太と比較する
6・7/12時間目の板書を見て、今日の豆太と今までの豆太とを比較させ、わかったことをワークシートに書かせます。その際、「豆太だ(った)けれど、ので、だと思いました。」と板書し、変容がわかるような書き方を示します。その後、子供の考えを発表させます(何人かの考えをシートに書かせておき、発表とともに黒板に貼ります)。
5 振り返りを行う
今日の学習で学んだこと、豆太について思ったことや友達の考えを聞いて、考えが深まったことなどを振り返らせます。
〈例〉
・5つの豆太が、真夜中に1人でふもとの医者様のところへ行くなんて、すごいです。豆太は、じさまを助けたいという思いだったのだと思います。友達の考えを聞いて、豆太の強い思いが勇気を出させたのかな、と思いました。
※子供の考えの深まりを「勇気」「やさしさ」「必死さ」などの言葉から、見取るようにします。
板書を活用した授業の進め方(9/12時間目)
1 本時の学習のめあてを確かめる
本時のめあて「豆太がモチモチの木の灯を見ることができたわけを考えよう。」と板書します。
2 モチモチの木の灯についての2人(医者様とじさま)の捉え方の違いを考える
豆太の言葉「モチモチの木に灯がついている。」を板書し、「㋒灯がついているモチモチの木」の挿絵を黒板の左側に貼ります。2人の考え方の違いが比べやすいように、医者様とじさまの言葉を上下2段に分けて書き、それぞれの言葉を確かめて板書します。
それぞれのキーワードに波線とサイドラインを引きます。
・医者様の言葉…「まるで灯がついたようだ。」「明かりがついたように見える」(波線)
・じさまの言葉…「山の神様の祭り」「灯がついたんだ。」(サイドライン)
医者様とじさまのモチモチの木の灯についての捉え方の違いを発表させ、「モチモチの木に灯がついたように見える。」(上段)「じさまも、おとうも、豆太もモチモチの木に灯がついたのを見た。」(下段)と板書します。
3 じさまの言葉から豆太への思いをつかむ
元気になったじさまが豆太に言った言葉を全員で音読させ、教師は読み声に合わせて板書します。キーワードである「勇気」「やさしさ」「やらなきゃならねえこと」に赤チョークで線を引きます。じさまの気持ちや思いを考えさせ、子供の発言を吹き出しにして板書します。
4 豆太がモチモチの木の灯を見たわけを考える
学習を振り返り、書き出しの文「豆太がモチモチの木の灯を見ることができたのは、からだと思います。」と板書し、豆太がモチモチの木の灯を見ることができたわけをノートに記述させ、発表させます。子供たちが発表したことを板書し、まとめとします。
※6・7時間目の板書を大型モニターに映しておき、板書を基に話し合いができるようにします。
※板書の挿絵とペープサートは、教科書や絵本を基に、執筆者が模写したものです。
構成/浅原孝子