小5 国語科「伝わる表現を選ぼう」全時間の板書&指導アイデア
文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「伝わる表現を選ぼう」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。
監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立三保小学校・横田和之
目次
1. 単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、言葉の働きについて考え、日常生活における自身の言葉の使い方について振り返るとともに、相手とのつながりをつくるという言葉の働きに気付き、相手や目的、意図を踏まえて言葉を使おうとする力を育てていきます。
この時期の子供たちは、言葉の選び方や使い方によって他者との関係に悩む経験をすることが増える時期です。
また、子供たちにとってSNSが身近なものとなるにつれて、自分が使っている言葉に自覚的になり、見えない相手に思いを馳せて言葉を使う力がより不可欠なものとなってきました。
本単元での学びを通して、実生活で生きて働く言葉の力を子供たちが獲得できるよう、子供たちの生活に根差した単元づくりが大切になります。
また、「小学校学習指導要領解説・国語編」では、「(1)オの『語感や言葉の使い方に対する感覚を意識して、語や語句を使うこと』との関連を図り、指導の効果を高めることが考えられる」とあります。二つの指導事項を関連させて指導を行うことも有効です。
2. 単元の評価規準
3. 言語活動とその特徴
本単元では、「特定の相手を決め、自分の目的や意図に応じて手紙を書く」という言語活動を位置付けました。
本単元では、文面の良し悪しだけでなく、自分が普段使っている言葉に自覚的になり、相手や意図に応じた言葉を選びながら手紙を書くことが重要です。
子供たちの言葉への意識がより高まるのは、手紙を書く必然性(具体的な相手意識、手紙を書くことの目的意識)です。学校行事などと関連付けて手紙を書く活動に取り組むことも有効だと考えます。
4. 指導のアイデア
〈主体的な学び〉 子供の経験を掘り起こしながら学習課題を設定する
子供たちが主体的に動き出すためには、「子供にとって解決すべき、切実な学習課題」を設定することが欠かせません。「教科書にあるから学習する」のではなく、子供との対話を通じて子供の実態を踏まえたり、子供の思いや考え、これまでの経験を丁寧に掘り起こしたりしながら、学習課題を設定しましょう。
学習課題を設定する際には、「子供の発言を整理すること」と「課題を焦点化すること」の2点が大切だと考えます。
板書を通して子供の意見を整理したり、意見を比較して共通点や相違点を明らかにしたりして「この単元で考えることは何か」「毎時間何を考えればよいのか」といった学習の見通しをしっかりと子供がもてるようにしましょう。
また、本単元では第3次に「手紙を書く」という活動を位置付けていますが、第3次に唐突に手紙を書くのではなく、単元全体を通して「相手により思いが伝わる手紙を書くにはどうすればよいか」という課題意識を子供がもっていることが大切です。
1時間目の冒頭に手紙を書き、言葉の使い方や伝わり方について振り返るという導入から単元を始めるとよいでしょう。
本単元で扱う教材では、書き言葉の場面(1時間目の校外学習について伝達する事例)と話し言葉の場面(2時間目の作品の感想を伝える事例)とが取り上げられています。「伝わる表現を選ぶことは、話し言葉でも書き言葉でも同様であること」を押さえることも大切です。
〈対話的な学び〉 対話を通して、自分の言語感覚を磨く
本単元では、「学習したことを生かして、手紙を書く」という活動を設定しています。
手紙を書く際に、その子なりに目的や意図に応じて手紙を書いたつもりでも、他者から見ると改善の余地がある場合があります。しかしながら、自分自身で書いたものを読み返しても、書き上げた満足感から十分に振り返ることができないことも考えられます。
そこで、対話を取り入れて他者の意見をもらう場面を設定します。
そうすることで、一人では気付くことができなかった表現の効果に気付くことができます。
対話の際に「必ずしも、相手の意見をとりいれなくてもよい。」ということを子供に伝えておくことで、自分の意図と友達の捉え方とを比較しながら、言語感覚を磨くことができるでしょう。
対話の効果を高めるためには、「手紙を書く」という活動が本物の活動であることが大切です。
具体的な相手が想起されるからこそ、他者へのアドバイスの精度が高まります。表現する活動を取り入れる際には、子供にとって必然性のある活動にするとよいでしょう。
〈深い学び〉 子供のもつ言語感覚と言葉本来の働きをつなぐ
授業では、子供が表出する「言語感覚」を認めながら展開すること、国語辞典や類語辞典などを用いて、言葉がもつ意味や働きを正確に扱うことの両方のバランスが大切です。
また、「手紙を書く」という、子供にとって必要感のある活動が位置付いていることで、子供が本気で自らの言語感覚を見つめ直したり、手紙を書くために必要な表現について考えたりすることになります。
5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント
1人1台端末を用いて、子供同士が相互に学びの様子を見合えるようにします。
端末やアプリケーションの「画面共有機能」を使って、全ての子供の考えを表現したワークシート等を共有できるようにすることで、「あの子と同じ考えだから、もっと理由をはっきりさせるために話し合ってみたい」「この子は自分と違う意見をもっているから、自分の理由と比べるために話し合ってみたい」などのように、目的を明らかにしながら友達と対話をすることができます。
また、「人によって言葉への感覚が異なる」という、本単元で身に付けさせたい言葉の力を育成する上でも、互いの考えを簡単に共有できることが有効に働くと考えられます。
さらに、課題解決になかなか向かえない子供や解決方法に迷っている子供には、解決方法(学習方法)を考える有効な手段になります。並び替えがしやすくなります。
6. 単元の展開(3時間扱い)
単元名: 伝わる表現を選び、相手に正しく思いが伝わる手紙を書こう
【主な学習活動】
・第一次(1時)・第二次(1時・2時)
① 言葉にまつわる自分の経験を振り返りながら学習計画(課題設定、単元全体の見通し)を立てる。
相手に応じた言葉を選ぶことの大切さを考える。
〈主体的な学び〉〈 端末活用(1)〉
② 意図に応じた言葉を選ぶことの大切さについて考える。〈深い学び〉
・第三次(3時)
③ 学習したことを活用し、目的と意図に応じて表現を考えながら手紙を書く。〈対話的な学び〉
板書例と指導アイデア
イラスト/横井智美