小6算数「資料の調べ方(2)-散らばりの様子-」指導アイデア
執筆/埼玉県公立小学校教諭・石原裕太
編集委員/国立教育政策研究所教育課程調査官・笠井健一、浦和大学教授・矢部一夫
目次
本時のねらいと評価規準
(本時3/ 10)
ねらい
資料の散らばりの様子を考察することができる。
評価規準
散らばりの様子を調べる必要性について考え、資料を統計的に考察することができる。(数学的な考え方)
問題
東小屋と西小屋の卵の重さは、それぞれどんなはんいに、どのように散らばっているか調べましょう。
西小屋の卵は平均では重かったけれど、最大74g、最小45g と重さの幅がありましたね。
東小屋は19g の差だったけれど、西小屋は29g も差がありました。
卵の重さの記録表では分かりづらいなあ。
東小屋のニワトリが産んだ卵の重さ(g)

西小屋のニワトリが産んだ卵の重さ(g)

では、それぞれの小屋の卵はどんな範囲に、どのように散らばっているか調べてみましょう。
本時の学習のねらい
散らばりの様子を調べよう。
見通し
どのようにしたら、卵の重さの散らばっている様子が分かるでしょうか。
平均の値や記録表からだけでは、卵の重さの散らばりの様子が分からないので、順番に並べたらどうだろう。
ただ数字を並べただけでは分かりづらいので、重さの数直線にグラフのように描いたらどうかな。
学び合いのポイント
平均は、集団の様子を表す1つの代表値ですが、この数値だけでは、集団の様子を十分に把握しきれるわけではありません。ここでは、集団の様子を最小値や最大値、中央値などの他の代表値で見たり、散らばりの様子を図に表したりしながら、多様な方法で考察する態度を養います。
散らばりの様子は、数直線に要素(データ)を表すことで視覚的に捉えることができます。また、視覚化する際、棒グラフ状に表す子供も想定されます。
ここでは、棒グラフ状表記も認めつつ、数直線に表す活動を行います。その後、この数直線などを基に、散らばりについてどのようなことが分かるか、話合いを通して検討していきます。どのような範囲に、どのように集まっているのか、平均値の近くに集まるデータの数、同値の頻度などに注目させ、集団の様子に気付けるような声かけを行っていきます。
こうした活動を通し、子供が平均の近くにデータが集まる分布と、そうでない分布があることや、資料を調べる際には平均だけでなく、散らばりにも目を向ける必要があることに気付くことが重要です。


ノート例
全体での学び合い(数直線に表記した後)
卵の重さにばらつきがあるのは、どちらの小屋でしたか。
西小屋だと思います。
どうしてそのように思いましたか。
東小屋は48 ~ 67g の中に散らばっているけど、西小屋は45 ~ 74g と範囲が広いからです。
それぞれの卵の重さの散らばり方は、どうでしたか。
東小屋は、55 ~ 60g にぎゅっと集まっているけれど、西小屋は、全体的に広く散らばっています。
では、前回求めた平均の値を数直線に入れてみましょう。平均の値と散らばり方を見て、どのようなことが分かりますか。
東小屋は、平均の近くに数が集まっている。
西小屋はばらばらで、平均から離れたところにもある。
平均の値だけでは、散らばり方が分からない。
学習のまとめに向けて
今日は、数直線を使って卵の重さの散らばりの様子を調べました。数直線を使って散らばりの様子を比べると、どのようなよいところがありますか。
卵の重さが、どのような範囲に散らばっているかが分かりやすかったです。
卵の重さが多く集まっているところが分かりやすいです。
数直線に表したら、平均の近くに集まっているか、ばらばらかが一目で分かりました。
子供の感想例
平均を使うと、計算でそれぞれの小屋の卵の重さをならして比べられたけれど、数直線を使うと、重さの散らばっている様子が一目で分かった。
平均の値が同じくらいでも、散らばりの様子が違うことが分かった。
平均の値の近くに、卵の重さが集まらないことがあることに驚いた。
ワンポイントアドバイス
浦和大学教授 矢部一夫
本単元は、資料の代表値としての平均、度数分布表や柱状グラフなどを学習し、統計的に考察したり、表現したりする能力を伸ばすことをねらいとしています。一般に、数の処理の仕方やグラフの扱いなどの知識を得る時間や作業が多くなってしまう傾向がありますが、代表値のよさや表・グラフで表現する必要性を実感させる問いや活動を充実させていくことが大切です。
本事例では、上述したように平均や数直線の扱い方等だけでなく、それぞれのよさについて話し合う時間に重きを置いた授業展開になっています。また、扱う題材も卵という身の回りのものを用いて、その有用性が実感できるように工夫しています。
このような統計的な見方・考え方は、中学一年生の学習につながる領域でもあり、例えば「平均では西小屋の方が、重い卵が産まれると言える」、「東小屋の卵の方が、重さの散らばりが少なく、粒ぞろいであると言える」など、多様な観点から考察する態度を育てておくことが大切です。
イラスト/やひろきよみ
『小六教育技術』2018年11月号より