「音読」でクラスをつくる【先生のための学校】
今回は、14回も2年生を担任し1年生で難儀になったクラスの立て直しを何度も実現された、「先生のための学校」に所属される、ある講師の先生のお話を紹介しましょう。「学力づくりでクラスをつくる」「授業づくりでクラスを変える」がモットーの先生で、「音読」でクラスをつくるそうです 。
執筆/「先生のための学校」校長・久保齋
くぼ・いつき●1949年、京都府京都市生まれ。京都教育大学教育学部哲学専攻卒業。教育アドバイザー。40年以上にわたり「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(学力研)」において《読み書き計算》の発達的意義について研究するほか、どの子にも均質で広範な学力をつける一斉授業のあり方を研究・実践し、現在も講演活動を中心に精力的な活動を続けている。
目次
子供と触れ合い 学力づくりで子供を鍛える
まず、どの子とも会話し、やさしく受け止めるためには、そうなるためのシステムが大切。その先生は子供たちに「お友達にいいことをしたとき、みんなのためにいいことをしたときは、必ず先生に報告しなさいね」と言っておくそうです。いいことの報告なので、先生は必ず「いいことをしたわね」と褒めてくれる。だから、 子供たちはどんどん報告にやってくるそうです。どんなに忙しくても顔を上げ、目を見て「いいことをしたわね」と褒める。これで教室は温かい雰囲気に包まれるそうです。
「音読でクラスをつくる」ということ
班で音読の練習をする前に、隣同士で音読を聞き合います。本を交換して、間違っているところに印をつけてあげるといいでしょう。
4月から国語教材を使って、徹底的に音読を鍛えます。目標は「一人で、みんなの前で、国語教材を初見で音読できる」です。4月の終わりには、1年から6年のクラスに、給食時間に班で訪問させていただいて、一人ひとりの音読をしっかりと聞いていただく取り組みをします。
もちろん最初は、先生の指導で丁寧に音読を始めます。そして、次に班の取り組みと先生の個別指導で一人ひとりを鍛え、最後にはお兄さんやお姉さんに、そして、1年生にも聞いてもらいます。国語の授業で子供を鍛え、班を鍛えていくのです。
声の小さな子供にはこう言うそうです。
「恥ずかしいと言って声の小さいのは、乱暴でみんなを困らせているのと同じようにわがままなのです。乱暴な人は努力して乱暴を直さないといけないし、恥ずかしくて声の小さい人は努力して大きな声が出るようにしなければなりません。頑張りましょう」
こう言って、毎朝、 教室の壁に発声練習の紙を貼って、みんなで発声練習して、おなかから声が出るように指導し、授業を始めます。
二年生の音読は読点の前で息を吸い、次の読点まではひと息で読むことを指導します。これが一年生の「分かち読み」との違いです。「大人の読み方」と一緒だと言って、二年生の自覚を高めさせます。
教師の力で子供たちの音読を高める
一斉読み、一斉指導で会話などの表現読みができるようになったら、班で班長が司会をして、班での音読学習を始めます。それと同時に、一人ひとりの音読を聞きながら励まし、評価していきます。
よく行われている「音読カード」は格差を助長し、恵まれない子供たちを悲しませるものです。そうではなく、先生が一人ひとり音読を聞き、教師の力で子供たちの音読を高めていきましょう。
音読を教材ごとに適当にやっていても、子供たちの音読の力は伸びません。1か月の音読実践で一気に高いレベルまで伸ばし切ってしまうと、子供たちはそのレベルを1年間維持し、心地よい授業実践が始まるのです。
親に信頼を得るノート指導
どんなに音読を頑張っていても、親にはわかりません。親の信頼を得るためには授業の足跡が必要です。そのいちばんの方法は、ノートをしっかりと取らせることです。ノート指導は教師にも子供にも忍耐のいることですが、これが子供を変え、親の信頼を得ていく最高の方法です。4月は教科書を写し、少し板書を書く程度でいいので、必ず教師のひと言を書き添えて返しましょう。
子供がノートをうまく書けるように、子供と同じノートに字数を考えて板書計画をつくると、いい教材研究にもなります。
久保校長からひと言
さすがは14回も2年生のクラスをもたれたベテランの先生ですね。2年生の特性をよく生かした取り組みだと思います。子どもとのふれあいを心地よくできるシステムですね。音読は学力作りの基礎ですから、4月に徹底して指導するのが得策です。それに授業の中で班活動を学ばせるのもよいと思います。
若手の先生は、ベテランのようにはいかなくても、その視点を大切にして実践を進めてください。
「先生のための学校」
学力研(学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会)の仲間たちと大阪で10年以上続けてきた活動が、<教師力を磨くために教師が集まって学ぶための学校>です。
どんな初歩的なことでも質問できて、それをなぜそうするのかがしっかり学べて、自分の実践をみんなに聞いてもらえて、みんなでワイワイしゃべれて『教育とは何か』『授業とは何か』という本質的なところまで深められる・・・。
そんな「教師の学ぶ場」をつくろうよ!という呼びかけのもとに始まりました。本記事は、そこで培われた知見を紹介する連載企画です。
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編集協力・デザイン/カラビナ イラスト/イエロー・イワイ 写真/町田安恵
『小二教育技術』2018年4月号より